- 仮想通貨取引所Bithumbに対する取引量水増し疑惑が浮上
- 韓国の大手仮想通貨取引所Bithumbが2018年の8月下旬頃から取引量を「ウォッシュ・トレード」という手法を用いて最大94%まで水増ししていたと取引所レーティングサイトのCREが調査し、結論づけた。Forbesが報じたことで明らかになった。 また一部の専門家は、6月のBithumbハッキング事件が自作自演でないかとの疑いやビットコイン価格への影響があった可能性も指摘している。
- ウォッシュ・トレードとは
- 売買が繁盛に行われていると他の投資家に誤解させ、取引を誘引することを目的として、同一人物が同じ時期に同じ価格で売買両方の注文を発注するといった、権利の移転を目的としない取引のこと。株式などの投資取引においては日本の金商法に違反する違法行為である。
仮想通貨取引所Bithumbの不正取引疑惑が発覚
仮想通貨取引所における取引量で2位の出来高を誇る韓国の仮想通貨取引所Bithumbが取引量を2018年の夏期ごろから違法で水増ししていると大手メディアForbesが報じた。
同報道は、仮想通貨取引所レーティングサイトのCrypto Exchange Ranks(以下、CER)にて、仮想通貨データサイトに挙げられているBithumbの取引量データは、ウォッシュトレードなどの違法行為によって94%近く水増しされていることを調査し結果を発表したことを取り上げたものとなる。
CERによると、Bithumbは18年9月時点では、CoinMarketCapの仮想通貨取引所TOP10ランキングの中では最も低い取引量の3.5億ドル(約393億円)を記録していたが、同年11月11日のピーク時には44億ドル(約4946億円)と、12倍増まで取引高が跳ね上がっているデータが計測されたという。
CERのマーケティング責任者であるGleb Myrko氏は以下の様に言及している。
我々がBithumbのチャートを多面的な角度から捜査した結果、取引量の人為的な操作、具体的にはウォッシュトレードの形跡がみられた。
そして価格と取引量の相関を調べた結果、Bithumbの出来高の増加は価格の変動と関連性がなかったと結論づけている。
CREが指摘する取引量操作の事例
CERの実態調査では、9月には明確なファンダメンタルズ要因もない状況下で、同社のビットコイン日間取引高が10倍に増加したことを確認。午前11時の数分間の間で、日間取引量95%の取引が行われるなど極めて怪しい出来高の上昇データが計測されている。また、価格と取引量が一致しない「イレギュラー」な取引量も多く散見されているようだ。
平均取引高(1取引での取引量)のデータでは、初夏の0.21BTC水準から、10月15日から約1月のデータにて平均5.88BTC(当時レート換算約420万円)相当と異常な額まで増加している。
5分間で7500のビットコイン取引が行われたことが確認されている9月9日のデータでは、全世界のビットコイン日間総取引数の39%、日間総取引高の94%を占める割合を示すデータが計測されている。
取引量操作のターゲットになった通貨は?
CERのデータ分析では、同取引所内で取引量の操作が行われたとされている通貨は以下のアルトコインとなる。
- ライトコイン
- イーサリアムクラシック
- モネロ
- ジーキャッシュ
- オミセゴー
- ビットコインゴールド
また、ForbesのJohn Koetsier氏に共有されたレポート内では、主に時価総額76位(本稿執筆時点)のウォルトンチェーン(WTC)における取引量の操作が顕著だったと事例として挙げている。
WTCは8月末日に上場し、10月28日から11月11日にかけて期間が一番短かった相場操縦(パンプ)が見られている。
その為、パンプ後の上昇は一番激しかった。ウォルトンチェーンの取引量は相場操縦前の平均取引量から不正行為が行われていた期間では1450倍の違いが生じている。
CREが指摘したデータを以下の通りにまとめた。
相場操縦前のWTC平均取引量
348,000WTC
相場操縦中のWTC平均取引量
122,500,000WTC
相場操縦後(11月12日)のWTC平均取引量
141,800WTC
6月のBithumbハッキングは自作自演の可能性を専門家が懸念
このようなBithumbの水増し行為を受けて、今年6月にBithumbのハッキング事件も自作自演かもしれないと疑う声も浮上している。仮想通貨の投資ファンド企業iTrustCapitalのCEO、Morgan Steckler氏は以下の通り、自身の懸念している内容を語っている。
本来、6月19日に発覚したBithumbの仮想通貨不正流出は仮想通貨を匿名ハッカーが匿名ウォレットに送金したと考えられていた。
しかしこのような不正行為が本当に起きたのであって、複数回に渡って行われたセキュリティや取引プロトコルの監査をBithumbが摘発されずに免れているのが事実ならば、ハッカーのアドレスと思われていた39の匿名アドレスが実際は取引所が所有するものだったことも十分可能だ。
ビットコインの価格下落が継続した要因との指摘を行う専門家も
Dash Marketing社のCTOであるTravis Barker氏は、Bithumbの動きが仮想通貨下落の要因になったとの指摘を、以下の様に語った。
CCNのデータを見ると、Bithumbのプロモーションが終了した時期と業界を揺るがす価格の下落の強い相関性があると捉えられる。
しかしその反面、現状では悪意があるとは言えきれない為、Bithumbが意図的に取引量を水増ししていたかは断言できないが、単に想像以上に成功したプロモーションを決行した結果かもしれない。
Bithumb側の発言
なお、これらの疑いに対するBithumb側の担当者の返信は以下の様に、全ての疑いを一貫して否定している。
Bithumbは取引量の増加と何も関与していない。Bithumbはマイニングされた通貨を販売していない。
我々は世界中の企業が行なっているのと同様、様々なプロモーションを通して顧客ベースの拡大を試みている。一般的な事業と何ら変わりはない。
今回のBithumbの件に関して、調査を公開したCERのMyrko氏は以下の通りに言及している。
信頼と透明性の環境であるべきブロックチェーン業界全体のイメージを損ないかねない。このような無責任な行動はブロックチェーンや仮想通貨業界に可能性を見出しているかもしれない投資家や企業を押し返す要因にもなり得る。
Myrko氏は業界のイメージ低下や新規参入を図る事業などの可能性を踏みにじるかもしれないとして、Bithumbの取引量水増しに対して厳しい見解を示した。
Bithumbは引き続きこれらの疑惑を否認しているが、今後CREはこのデータを全て公開する予定だとForbesに語っている。
実際に報告書が公開された場合、Bithumbは説明を発表せざるを得ない状況となるかもしれない。
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