- 中国大手マイニングプール「f2pool」共同創設者Mao Shixing氏のインタビュー
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●中国大手マイニングプール「f2pool」共同創設者にインタビュー
●相場下落時のマイニング業者撤退の状況
●最近のハッシュレート上昇要因
●ハッシュレート分布に現れた「Unknown」の正体
●最新のマイニング収益分岐価格
●匿名通貨への見解
中国大手マイニングプール「f2pool」共同創設者Mao Shixing氏のインタビュー
本インタビューは2月21日、longhash.comとCoinPostによるコラボレーションである。
LongHashの英語版インタビューはこちら、「F2Pool Exclusive: Chinese Electricity for Mining Costs Between .04 to .06 USD per Kilowatt 」
CoinPostは、longhash.comと共同で、中国に拠点を置く大手マイニングプールF2プールの創設者Mao Shixing氏にインタビューを行なった。
Shixing氏は、現在のマイニング業者の動向や、ハッシュレートの分散化、また下落時に注目されるマイニングの収益分岐率など、最新状況を多く語った。
昨年11月、ビットコイン価格・ハッシュレートの下落を受けた60万〜80万のマイニング機器が業務を停止したと言及しましたが、他のマイニング業者たちはどのようにその状況に対応していましたか?マイニング業界全体に相場下落がどのように影響を及ぼしましたか教えてください。
実際に、昨年の下落が要因で、マイナーの一部が撤退に追いやられています。これは、多くのマイニング業者が抱えるマイニング出費の負担が重くなったためであり、採算が取れなくなったのです。よって、その多くがやむを得なく、業務を停止しましたことになります。
その他のマイナーたちは、既に電気代の高い地域から安い地域へ拠点の移動を行なっています。
また、電気コストの高い地域において現在稼働停止の状態となっている一部のマイニング機器は、気温が上がる4月末〜5月頭から業務再開すると思われます。
結果、業界全体ではこれまで、ビットコインの採掘コストを大幅に下げてきました。
要するに、低コストの電力が提供される地域への移転が現在の業界トレンドであるため、マイナーの多くは業界の今後の動向を警戒しているとのことを意味しています。
大手マイニングプールのf2poolはどのようなビジネス戦略を持っていますか?他のマイニングプールに比べて、優れている点も教えてください。
一番目にあげられるアドバンテージとして、我々f2poolはこの業界に生まれ、発展してきたスタートアップであるところです。つまり、仮想通貨・ブロックチェーン技術の今後の発展には非常に関心を持っています。
すでに歴史は、我々が仮想通貨業界に良い結果を残していることを証明してくれました。このような関心と情熱こそが、我々が常に最新技術を取り入れることを可能にしているのです。
二番目のアドバンテージは、堅実なマイニング事業のサプライチェーンを持っていることです。この相乗効果はよく見られています。
最近では、ハッシュレートが再び上昇傾向になってきていますが、去ったマイナーたちの帰来と見ていますか?
ハッシュレートの上昇には二つの理由があると見ています。
一つ目:ビットコインの価格上昇がマイニングの利益を引き上げているので、マイニング業者たちは機械の計算能力(マシン台数の増加、または計算能力の高いマシンへの変更)を増やしている点。
二つ目:多くのマイニング業者がマイニング業務を行う所在地の変更を終え(電力の安い地域への引越し)、機械の稼働を再開している点。
「Unknown」(未知)のビットコインマイニングプールの市場占有率が増えていることが確認されましたが、個人、中小マイナーが増加しているのですか?
ここでみる「Unknown」は、おそらく個人でなく、大手マイナーの集合体だと見ています。(大手プールを通していない)
2013年当時、ASICマシンを使用していたたった一つのマイニング業者は、BTCネットワークの30%のハッシュレートを占めましたが、今後このようなことは起こりえないでしょう。
最近よる見られる傾向として、平均的なハッシュレートの占有率で、非中央集権のレベルが上昇しています。
現在のf2poolの電気コスト、利益率はどれほどですか?
中国での電力コストは、0.26RMB〜0.38RMB(約4.3円〜6.26円)の範囲です。これには、電気代だけで、人件費は含まれていません。
昨年の弱気市場では、マイニングマシンが安くなったことを考慮しても、ほとんどのマイニング業者が赤字を算出していました。
ビットコインマイニングの現在の損益分岐点について、教えてください。
このチャートに、ビットコインおよびアルトコインの最新のマイニング難易度と損益分岐点が掲載されています。
*2月21日の時点のデータ。(現時点で公開されているものでは最新)
マイニングマシン・通貨名・電力の割合・現在の難易度の損益分岐点・次の難易度調整後の損益分岐点予測
上位4のASICマシンの現在の難易度の損益分岐点・次の難易度調整後の損益分岐点予測は以下通り(日本円表記)になります。
- S7 103万8450円
- A741 60万2323円
- M3+ 57万8651円
- T9 48万2069円
- S9 39万6715円
- A841 37万9,622円
- T2 34万9145円
- T2T 30万2952円
- A9 28万6048円
- M10S 24万9012円
(CoinPost補足:注目すべきマシンは、2018年夏ごろから世界的に多く利用されていたT9やS9、イノシリコンのT2モデルだ。その収益率で、S9の収益分岐点が現在の価格と同水準であるほか、多く流通するとみられるT2モデルの収益分岐率にも注目したい。)
また以下、LongHashがf2poolのデータを集計し作成した「現在の難易度の損益分岐点」チャートです。
現在、どの地域でf2poolのマイニング業務を行なっていますか?
現在のところ、我々はマイニングビジネスの主な拠点を中国においています。
ユニークな人的資源に富んでいるほか、低コストの電気代がマイニングに適している点がその理由です。
ただ、中国以外にもマイニングに適している国や地域は多くあります。
中国は今なおビットコインマイニングにおいて最重要の国ですか?また、中国でのマイニングは将来どのようになっていくとの考えでしょうか。
中国は今もビットコインマイニングにおいて重要なポジションにあります。
第一に、この産業における強い地理的な利点があります。
例えば、チップの生産からマイニング機械の組み立てまでを低コストの労働力をもって迅速にこなすことが可能であり、中国には多くの低コストのエネルギー貯蔵があります。
将来の中国のマイニングについて言うと、2018年の弱気相場を経て行われた、マイニング産業の構造の改善や、産業コストの削減がより加速していくと考えています(効率化への道)。
なお、この産業のリーダーたちが自己供給のできる発電所を何らかの形で立ち上げられるではないかと考えています。
今年の1月より、匿名通貨GrinとBeamは注目を集めています。f2poolはそれらの通貨のマイニングを始めた最初のマイニングプールの一つでしたが、他にも多くの比較的マイナーな通貨のマイニングを行っていることがホームページから伺えます。GrinやBeamに加え、Monero(モネロ)やDash(ダッシュ)といった主要なものを含めた匿名通貨については、どのように見ていますか?
確かに、我々は早い段階でGrinとBeamの取り扱いを開始しました。マイニングプールの視点からその質問に答えると、我々はその匿名通貨の将来性についてはとても楽観的です。なぜなら、それにはマーケットからの多くの需要があるからです。
しかし、それらの通貨の技術はまだ黎明期にあり、その存在はまだ通常のユーザーには扱いづらい「geek(オタク)」のようなものであります。
MoneroやDashといった主流な匿名通貨は、現在、実際に利用されていることから、マーケットにおいても存在感を持っていますが、それらの地位を維持するためには、技術の継続的なアップデートが必要です。業界全体を見ても、技術発展の速度はとても早いためです。
仮想通貨の価格が下落している際、マイナーの一部はリスクヘッジを講じると思います。そのような場合、f2poolは通貨を持ち続けるか、売るか、どちらの選択をするのでしょうか?
マイニングのビジネスモデルはマイナーがコントロールできない価格変動に大きく影響されます。
よって、リスクヘッジの手段を見出す必要は十分にあります。
ただ、f2poolに関して言うと、業界における大手であること、そして仮想通貨産業には楽観的であることから、売らずに持ち続ける選択を優先しています。
「ProgPoW」はイーサリアムにどのような影響を与えますか。また、マイニングプールはどのような温度感でサポートをしますか?
イーサリアムの発行数がどんどんと減少する中で、メモリに頼らずにGPUでマイニングを可能とする現在のアルゴリズムは、グラフィックカード(GPU)に大きな影響を与えました。
ProgPoWの新たなアルゴリズムを導入すると、(グラフィックカードを使った)旧来のマシンでもマイニングすることを可能にします。
一方、一部のASICはイーサリアムのマイニングに対応しており、それがイーサリアムのエコシステムを中央集権化しかねないので、中央集権化を解決するために、ASICに対する耐性は向上します。
これは、マイナーにとって意見が分かれる所と見られていますが、我々が多くのマイナーを見てきた中では、そのほとんどは、このアルゴリズムに協力的な姿勢を見せています。また我々も、最近行われたイーサリアムコミュニティの投票において、支持する意思の表示を行いました。
マイニング事業のビジネスが持続可能であると考えた理由を教えてください。
2011年始以来、仮想通貨産業はソフトウェアとハードウェアが一体化した、完全な産業に成長してきました。中には、ASICチップの生産、マイニングシステムの開発、マイニングのホスティング、マイニングサービスなどが含まれています。
つまり、時間の洗礼を浴び、生き残ってきた産業です。
将来、仮想通貨のマイニングの範疇に限定された、ソフトウェアとハードウェアの統合によるハッシュレート・計算能力が必要な状況ではなく、ビッグデータや人工知能といった分野にも計算能力を必要とされる時代が来ると考えています。
よって、我々はマイニングベースの事業は持続可能と思っています。
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なお、共同設立者であるEmily Parker氏は、以前記者としてWSJやNYタイムズで務めたほか、米政府の技術政策専門アドバイザーを歴任しています。
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本記事は、LongHashとCoinPostで行った共同インタビューとなります。 記事内容を引用する場合は、両メディアのクレジット表記を行い、利用してください。
LongHash :https://longhash.co.jp/
CoinPost :https://coinpost.jp/