- 日韓のSTO事情、両国の弁護士が解説
- 先月27日、丸の内vacansでのCoinBene Japan主催イベントで、日韓でのSTOの比較検討、両国の弁護士も登壇し各国の規制の現状や今後の見通しについての解説が行われた。
STO規制、日韓の現状は
先月27日、丸の内vacansでのCoinBene Japan株式会社主催のイベントで、日韓でのSTOの比較検討、両国の弁護士も登壇し各国の規制の現状や今後の見通しについての解説が行われた。
STOは今、フィンテック業界で最も注目を集めるトレンドの1つであり、今後の展開が期待されている。今回のイベントでは、仮想通貨市場においても存在感をもつ日本と韓国のSTO事情を、各国の法律のプロフェッショナルからうかがうことができた。
STOとは
STOとは、セキュリティトークン・オファリング(Security Token Offering)の略語であり、証券型トークンの新規公開を指す言葉である。
株をはじめ、債権、社債、オプションなど法的に証券というカテゴリーに分類されるものは、すべて証券型トークンにすることができるとされる。
そのようなトークン化により流動性の向上や低コスト化などが可能となるため、STOは、ICOやIPOに代わる潜在性を秘めた新たな資金調達方法として注目されている。
ただ、それらは証券としての性質をもつため、法的には各国の証券法の下で適切に規制されるものとされており、現在世界各国の規制当局が規制整備に急いでいる。
以下が、日本と韓国それぞれの弁護士が語った、STOにおける各国の法整備の状況である。
韓国:弁護士Jaekwang Bae先生(ブロックチェーン・ガバナンス・コンセンサス委員、InstaPay創設者兼CEO)
Bae氏によると韓国の場合、証券関連の法律は、アメリカで1932年に制定された法に基づいているとし、日本を含め多くの国が証券法についてはその形をとっているという。
韓国ではSTOや暗号資産の言葉は正確な法律上の定義がないが、STOについては資本市場法律の第3条と4条、5条で規定されることが想定されるとする。
STOに関連した韓国の特徴として挙げられるのは、1999年の「私募ファンド」の発行である。同氏は、それは世界最初のクラウドファンディングであり、STOと同じ概念であったと説明した。
また、STOの長所として以下の4点を挙げている。
- 流動性の高さ
- 第三者がいないことによる低コスト化
- 一般的な資金調達よりもスピーディー
- 資金調達者がすぐわかる透明性
デジタル資産の分類については以下の3つのタイプに分類できるとした。ただし、これは機能的な分類であって法的な分類ではない。
- ペイメントタイプ
- ユーティリティタイプ
- インベストメントタイプ
この分類はEUで用いられており、同氏はこれが最も正しい判断ではないかと主張。また、EUは各国に自律性を与え、各国がルール策定をできる方向に動いているという。
EUでのSTOに関連した法律としては、マルタの法律が支持されているとして、EU国内17か国がその法律に賛成しているという。なお、そのマルタの法律は、STOを規定する法としては世界初のものである。
同氏は、この分類の「インベストメントタイプ」のものについては全てがセキュリティ(証券)に該当するとし、一方で「ペイメントタイプ」については基本的にはセキュリティには該当しないと説明。「ユーティリティタイプ」についてはどちらの可能性もあるという。
また、セキュリティかどうかの判断には「Howey Test(ハウェイテスト)」が有効であるとする。ハウェイテストは、ブロックチェーントークンが「証券」であるかどうかをスコアに基づいて判定するテストである。そのテストの詳細についてはCoinPostの記事を参照。
そして、セキュリティは、証券型のトークンなので証券法に従って発行される必要があると説明。STOの種類については以下の2つに分けれるとした。
- ファンドレイジングタイプ(資金調達)
- アセットユーティリティタイプ(不動産や美術品などの証券化)
同氏は、主にその2つのタイプでSTOが普及していくとし、今後は90%のトークンとコインがSTOによって発行されていくようになると主張した。
日本:斎藤 創(さいとう そう)先生 (創・佐藤法律事務所、第一東京弁護士会所属、ニューヨーク州弁護士)
斎藤氏によると、日本では仮想通貨法と金商法によってSTOが規制されているという。また、日本でのICOとSTOの実施は非常に難しく、実質不可能であるとする。
同氏は、その主な理由として、ICOの場合は仮想通貨法による規制、STOの場合は仮想通貨法と金商法による規制を挙げている。
まずICOの場合、トークンを販売するには2つの手段があるとする。
1つは仮想通貨交換業の認可を得ること、2つはすでにそれを得ている者を通して販売することである。しかし、仮想通貨交換業の認可の取得は非常に難しい。また、コインを販売するにあたってもコインのホワイトリスト登録(コインの届け出)が必要となりそれの認可も非常に困難なのが現状だ。
すでに仮想通貨交換業の認可を得ている業者を通すとなっても、「各取引業者が業務改善命令を受けている中で新しいことをするのが難しい」、「新しいことをするときには金融庁の許可が必要だが、ICOやSTOに関しての許可の基準がまだ金融庁もはっきりと決まっていない」という点からそれも困難なものとなっている。
なお、元々それらの規制基準は2017年12月の法制定直後はさほど厳しいものではなかったが、コインチェック事件以降に今のような厳格な基準になったとされる。
その結果、スキームを複雑化したものを除いて、2017年12月以降日本では合法的なICOやSTOは行われていない。
そして、STOについては、ファンド、集団投資スキームでの規制対象になる可能性があると同氏は説明する。
ファンドの定義は他人から金銭を集め事業に投資をし、投資家に対して配当等を行うというものであり、その性質を有するものはファンド規制に服するとする。その結果、他人から金銭を集めて何かに投資をしてユーザーや投資家に配当を行うというSTOをした場合はICO規制とSTO規制、つまり仮想通貨規制と金商法規制の両方がかかることとなる。
ただ、その規制の条件として「他人から金銭を集める」となっているが、日本の法律上金銭と仮想通貨は区別して解釈されている。それなので、ビットコインやイーサで出資を受けるというものについては、法律の文言上はファンド規制に服さない、よって有価証券規制の対象とならないとも同氏は付け加えた。
STOの日本の現状としては、仮想通貨規制と金商法規制の重畳適用、ただし金商法規制は金銭の場合にはかかるが、仮想通貨でする場合にはかからないとまとめた。
また、同氏は今後のSTO規制の方向性についても言及した。
対象としてはおそらくエクイティ型STOとデット型STOの両方が規制されると説明。エクイティ型STOとは配当や元本上の分配において事業収益を分配するもの、デット型STOとは社債のような形で、社債や国債のように100%元本償還に加えて利息を払うものであるとする。
そして、トークンの発行者には「継続的な情報開示の必要性、株式や社債と同じで当初の情報開示、発行後も継続的に情報開示をすること」が求められることを想定。
販売を第三者が行う場合は、それには一種金商業者(証券会社)と同様のレベルの規制が入るとした。広告勧誘規制や説明義務、一定の不公正取引防止のための規制などが要求される可能性もあるとする。
また、そのような規制の内容は今までの既存の制度を念頭においてつくられるとし、そうなった場合「エグゼンプション」が入るのではないかと同氏は予測した。
「エグゼンプション」とは、金商法でいうプロ(適格投資家)や富裕層、少人数相手の販売の場合規制が緩くなることをいうが、現在日本の仮想通貨法はそのような例外規定がなく、その結果、ICOやSTOを販売するときにエグゼンプションの対象となるような条件でも規制がかかってしまう。
それに似た制度がSTOにも組み込まれるのではないかという予想だ。
そして、最後に同氏は、個人的な関心として、「証券型トークンを既存の証券会社が取り扱うのか、仮想通貨交換業者が一種免許をとって取り扱うのか」、また「自主規制は日商協がやるのか仮想通貨交換業協会がやるのか、その他のとこがやるのか」といった点を挙げた。
日本の法改正の時期はいつ頃か
斎藤氏によると、現在金融庁が仮想通貨法規制の改正を検討しているという。
昨年の4月頃から金融庁が「仮想通貨交換業に関する研究会」というミーティングを12回開催、そこでは今の仮想通貨法規制の改正やウォレットなどのカストディ業者への規制、仮想通貨デリバティブの規制といったテーマが挙がっているとし、その中で、ICOやSTOも含めて議論がされているという。
そして、その研究会の報告書が昨年12月に出ており、現在その報告書に従って法律の改正や仕組みを作っている状況であるという。同氏は、おそらく3月頃に閣議決定、5月頃に通常国会、1年後に施行なのではないかと予想している。
さらに、施工の猶予期間が半年ほどと想定。この法改正で、STOは金商法で規制されて、資金決済法、仮想通貨法の規制は外れるとするが、その実施は1年数か月後になるだろうとしている。
主催企業
CoinBeneJapan株式会社 / bittop
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