CoinPostで今最も読まれています

「来年の大統領選に導入」全米初のブロックチェーン投票の舞台裏|米ウェストバージニア州務局に独占取材

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

米ウェストバージニア州、ブロックチェーン投票の舞台裏
米国のウェストバージニアで行われた全米初の連邦選挙でのブロックチェーン投票。そこには海外在住の有権者における課題といった背景や、新たな技術に対し懐疑的な層からの批判などがあった。選挙管理人を務めた人物がその舞台裏を語った。

全米初のブロックチェーン投票の舞台裏

本インタビューはLongHashとCoinPostによるコラボレーションである。

なお、「英語版インタビュー 」の著者はLongHashの共同設立者Emily Parker氏。

CoinPostは、LongHashと共同で、米国ウェストバージニア州務局の選挙管理人兼副法律顧問を務めるDonald Kersey氏にインタビューを行なった。

Kersey氏は、2018年に行われた中間選挙で同州が米国初のブロックチェーン投票を行なった背景や結果、2020年に控える「大統領選」におけるブロックチェーン投票の採用計画、さらにはブロックチェーンのリミットについて、様々な意見を語った。

アメリカ東部に位置するウェストバージニア州は昨年11月、中期選挙にモバイルブロックチェーン投票システムを採用した初の米国州として歴史に名を残した。このプロセスは順調に進んでいるかのように見えたが、投票のように神聖なものに新しい技術を適用したことで同州は多くの批判を受けた。

昨年採用された投票システムの仕組みは以下の通りだ。

・ウェストバージニア州で選挙権を有する海外に駐留する軍人(またはUOCAVA不在者投票法有権者)には、AndroidまたはAppleのスマートフォンによる投票が許可された。

・投票結果はブロックチェーンサーバーのネットワークに保管された。

さらなる詳細は、このリンクから確認ができる。

現在ウェストバージニア州は2020年の大統領選挙に向け、モバイルブロックチェーン投票の準備を行っている。

ウェストバージニア州国務長官の選挙管理官兼副弁護士のDonald Kersey氏は、11月に行われたブロックチェーン投票の試験での成功点や、失敗点について語ってくれた。

ブロックチェーン導入に踏み切った理由

何故、ウェストバージニア州はブロックチェーンを採用する必要があったのだろうか。これは常々、挙げられる疑問である。

仮想通貨市場に強気相場が到来した2017年、ブロックチェーンへの熱狂は加熱した。スタートアップは単に「ブロックチェーン」という単語を口にするだけで、資金を調達することができた。ウェストバージニア州が解決しようとしていた問題は何だったのか。そしてなぜブロックチェーンが最善の解決策だったのか。

この点に関してKersey氏は非常に明確だ。 彼は我々のインタビューにて以下のように説明した。

アメリカでは、民主的に政府が決定されるということだ。政治家や立法者は、大衆によって選出される。そして、その重要な一部を軍人が占めている。

つまり、その抱える問題は、軍隊に所属する人々が国外、特に遠隔地に駐在している場合、安全な投票用紙を受けとり、それを郵送または電子的手段で期限内に返送することが困難または不可能であるという点なのだ。

その結果、多数の在外有権者が投票を行わない。連邦投票支援プログラムの報告によると、2016年の大統領選挙の国内における投票率が5割以上だったのに対し、国外からの投票率はわずか7%だった。Kersey氏はこうした状況を容認できないのだという。

海外に駐留し、生命をかけて自国に奉仕している一部の軍人は、大統領が戦争を宣言したためにそこにいるのだ。彼らには自国の大統領が誰であるべきか発言する権利がある。

これでモバイル投票を導入した経緯は理解できるが、なぜブロックチェーンである必要があるのだろうか。

Kersey氏はあえてブロックチェーン技術を採用する理由について、「すべての希望を単一のサーバに置くよりも安全」であることを挙げている。

ブロックチェーンには単一障害点(SPOF)がなく、データを格納している多数のノードがある。また高度に暗号化されている。

投票結果について、郡書記がアプリの使用方法について事前に訓練されていれば、プロセスがよりスムーズに進行したかも知れない、などといった問題点は散見されたものの、同氏は11月のモバイルブロックチェーン投票で得られた結果に満足しているそうだ。

また有権者の反応にも驚かされたという。1000人弱の在外投票のうち、アプリを使用して投票したのは144人だったが、ほかにも200人以上がアプリをダウンロードし、身分証明を済ませ、投票用紙の入手を試みたという。だが実際には彼らの在住地からはシステムにアクセスできなかったため、投票は行われなかった。

有権者に(新たなシステムやブロックチェーン技術に関する)特別な教育が施されていなかった事実を考慮すると、これほど関心を示したことはKersey氏にとって予想外だった。同氏は「まったく新しいテクノロジーの利用率としては素晴らしい」と話している。

非難の声も

ウェストバージニア州は「非常に悪いアイデア」という見出しがつけられた記事などで批判を受け、技術を提供したスタートアップVoatz社に対しては、Twitterで胡散臭さを感じたユーザーから「投票のセラノス」との非難も浴びせかけた。

セラノスは、シリコンバレーで誕生した医療ベンチャーで「一滴の血液であらゆる検査ができる」と謳い、全世界から注目を浴びたが、後にそれは虚偽であったことが発覚している。

Kersey氏はこうした批判は「選挙コミュニティと有権者のために必要なもの」とし、歓迎の意を示している。

一つの重要な批判は「モバイル機器の安全性の確保は不可能」というものだった。例えブロックチェーンが実際に安全であったとしても、自分のスマートフォンがハッキングされていないという保証はどこにもない。

これに対するウェストバージニア州の回答は、マルウェアをダウンロードしたかどうかを確認するために、携帯電話のセキュリティをチェックするテクノロジーを使用することだった。不審なものがデバイスから検出された場合、投票用紙を開くことができないという配慮がなされている。

これが完璧な解決策といえるかというと、恐らくそうではない。この点については「データが漏洩の危険にさらされるかどうかは分からないし、さらされていないと断言するのは愚かなことだ」とKersey氏も認めている。

またVoatz社が頻繁にセキュリティパッチやアップデートを行っていることについても触れ、「我が州は物事が成し遂げられると技術を盲目的に信頼しているわけではなく、Voatzに対する監視を続ける」と話している。

ビットコインのモデルにおいては誰でもブロックチェーンを検証するノードになれるが、ウェストバージニア州が採用したテクノロジーはビットコインのモデルのように分散化されていなかった。モバイル投票のホワイトペーパーによると、同州は32のノードを使用し、2社の大手クラウドインフラ・ストラクチャープロバイダー間で、米国全土の複数の地理的な位置を均等に分割したという。

「Voatz社はあまりにも多大な権限を持っている」という批難の声も聞こえるが、Kersey氏は「Voatz社がサーバー自体に直接アクセスすることはできなかった」と反論している。

また同氏は「ブロックチェーン上での投票は個人情報と紐づけされていない。ブロックチェーン上では匿名化される」とし、身元が判明することに関する懸念を抱く必要はないと主張している。

「ペーパートレイル(書面による証拠)がない」という議論についてはどうなのか。Kersey氏は、ペーパートレイルは存在すると語る。

有権者はPDF版の投票用紙をEメールで受けとる。有権者のアドレスはブラインドコピー(宛て名秘密複写)されているため、身元は明らかにならない。

ブロックチェーン技術に限った問題ではないが、Eメールをハッキングされ、誰に投票したのかという情報が漏洩するリスクがある。

Kersey氏はブロックチェーン技術の限界について驚くほど正直だ。「投票用紙を電子的に保存するのではなく、すべて紙の上に保存するという手法が理想的だ」と話す。ただ、海外に駐留する軍人の投票率が7%と極めて低い場合、理想的な解決策を待つ有余はないのだと強調した。

こうした背景から、今のところ、ウェストバージニア州はブロックチェーン投票の継続を予定しているとのことだ。Kersey氏は、この点に関して、下記のように述べた。

最終的には大統領選挙での再採用を計画している。このシステムがウェストバージニア州の投票システムの一部として根付くことを願っている。

ブロックチェーン投票への想い

連邦政府は同州のブロックチェーン投票をどのように見ているのか。 「これについてトランプ大統領に話したことはない」と、Kersey氏は笑いながら語った。

しかし「皆、我々の(この投票システム導入の)取り組むに理解を示しており、投票率や軍事、海外の有権者についての課題があることにも認識されている」と付け加えた。また国家レベルでは、「政治家は連邦主義問題が原因で、可能な限りこの件には触れないでおこうとするはずだ」と言及した。

このようにウェストバージニア州が大統領選挙で再びブロックチェーン投票を使用することを計画している。しかし特に前回の選挙をめぐるロシアのハッキングスキャンダルの後、批判が高まる可能性が高い。

ブロックチェーンがセキュリティ強化を目的としているとしても、多くの有権者が同様の見方をしているとは限らない。最大の問題は必ずしもセキュリティではなく、有権者の信頼といった点にもある。

Kersey氏は以下のように見解を示した。

控えめな言い方をすると、アメリカの有権者は思慮深い。アメリカ国民は概してテクノロジーを信頼していない。

言い換えると、今すぐにブロックチェーンが紙の投票に代用される可能性は低いということだろう。

Kersey氏はその点について異論を唱えておらず、モバイル投票と物理的な投票は別物だと捉えているようだ。

我々は家族と共に投票所に出向いて投票することで、民主主義に参加したことを実感する。

‘一人、一票という投票制度’ この投票がアメリカがアメリカとなった礎を築いたのだろうと思う。

投票という行いは、心に影響を与えるのだろう。

私は自分の手で一票を投じる際に、この国への愛着心や連帯感を覚える。

Kersey氏は、こう続ける。

モバイル投票がこの問題に対する最良の解決策だといっているわけではない。また、ブロックチェーン技術が安全にデータを保存するための最良の解決策だといっているわけでもない。

ただ我々が伝えているのは、ただ既存の解決策よりも優れているということなのだ。

LongHash
日本語公式HP:jp.longhash.com
英語公式HP:longhash.com
日本語Twitter:@longhash_jp
英語Twitter:@longhashdata

LongHashは独自のデータ分析を基に、仮想通貨のトレンドやニュース、価格に関する情報を日中英の3ヶ国語で提供するジャーナリズム・プラットフォームです。

ブロックチェーンデータの解析や解説を行うLongHash所属のデータサイエンティストやライターを世界中に抱え、分かりやすい記事で配信しています。

またLongHashはブロックチェーンハッカソンやミートアップの企画、実施運営のサービスも提供しております。

本インタビューはLongHashとCoinPostによるコラボレーションによるものです。

なお、英語版インタビューの著者はLongHashの共同設立者であるEmily Parker氏は、以前記者としてWSJやNYタイムズで務めたほか、米政府の技術政策専門アドバイザーを歴任しています。

より多くの記事を読みたい方は、こちらからLongHashの公式ページへアクセスできます。

▶️本日の速報をチェック
コメントしてBTCを貰おう
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
01/31 火曜日
15:59
英プレミアリーグ、Sorareと複数年パートナーシップ締結
大手ブロックチェーンゲーム会社Sorareは、英サッカー団体「プレミアリーグ」と複数年のライセンス契約を締結したことを発表した。Sorareはプレミアリーグとの正式な契約金を非公開としている。」
14:32
TOEICやトヨタ、DX化で加速するブロックチェーン導入事例
日本でTOEICテストを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会は、TOEIC® Program公開テストのスコアに、ブロックチェーン技術を活用したデジタル公式認定証を導入することを発表した。
13:09
米サークル社、USDC準備金の監査済「担保資産」の保有を強調
米ドル連動型ステーブルコインUSDCを発行する米サークル社は、2022年12月の準備金レポートを公開。流通しているUSDCを約1.4億ドル上回る準備金を保有していることがわかった。
12:00
Sudoswap、ガバナンストークンを配布
NFTの自動マーケットメーカープロトコル「Sudoswap」は、ガバナンストークンSUDOのエアドロップを実施。プロジェクトの分散化のために、トークンベースのガバナンス機構をスタートした。
11:56
FOMC前に株や仮想通貨反落、ナイジェリアでBTCプレミアム急騰の背景は
FOMCを控え米株指数や仮想通貨相場は全面安に、高騰していたアルト下落が顕著にみられた。一方、アフリカ大陸のナイジェリアではビットコイン・プレミアムが一時60%発生した。
11:50
アラメダ、Voyagerに500億円超の返還求める
破産した仮想通貨投資企業アラメダリサーチは、米国の破産裁判所に訴状を提出。Voyager Digitalに対して、ローン返済分として支払った約580億円の返還を求めている。
10:50
国内初上場、bitbankがOasys(OAS)の取り扱いを発表
国内発のゲーム特化型ブロックチェーンのOasysは、ネイティブOasys(OAS)について、暗号資産(仮想通貨)取引所bitbankへの新規上場が決定したことを発表した。
10:30
LayerZero、脆弱性に関する指摘に反論
LayerZero LabsのCEOは、同社プロトコルのスマートコントラクトに脆弱性があるとの指摘に反論。仮想通貨の盗難につながる可能性もあるが、これは仕様であると説明している。
10:05
東欧モンテネグロ、リップル社とデジタル通貨の実証実験へ
モンテネグロのアバゾビッチ首相は、リップル社と協力してデジタル通貨またはステーブルコインを構築する実証実験プロジェクトを開始したと発表した。
08:30
マスターカード、ブラジルでバイナンスのプリペイドカード発行へ
仮想通貨取引所大手バイナンスは金融大手マスターカードと提携し、ブラジルでプリペイドカードを発行開始。
07:45
ツイッター、仮想通貨の決済機能導入か
ツイッターは、決済機能の導入に向けてソフトウェアを開発をしていることがわかった。Elon Musk氏は、仮想通貨機能を追加できるようにしたいと考えているという。
07:20
米株市場・仮想通貨全面安|31日金融短観
本日のニューヨークダウは7日ぶりに反落し、ナスダックや金先物なども全面安。ドル相場はFOMC政策金利や米雇用統計などの重要発表を前に買い戻された。
01/30 月曜日
17:15
YGG Japan、プライベートラウンドで4億円相当を資金調達
株式会社ForNは、YGG Japanがプライベートラウンドでスクウェア・エニックスやセガなど18社から4億円相当の資金調達を完了したことを発表。環境整備し「職業ゲーマー」の輩出を目指すとした。
15:47
岸田総理、メタバースなどデジタル技術用いた地方活性化に意欲 予算委員会の答弁で
自民党の神田潤一議員が衆院予算委員会で政府の「Web3政策」について質問し、地方創生に関するデジタル化推進提案を行った。これに対し岸田総理は、メタバースなど最先端デジタル技術を取り込んだ地方活性化に前向きな姿勢を示した。
12:43
米バイデン政権、仮想通貨のリスク軽減に関するロードマップを発表
米ホワイトハウスは仮想通貨のリスクを軽減するためのロードマップを発表。米議会に対し規制整備のための努力を強化するよう要請する一方で、仮想通貨と既存の金融システムの融合については「重大な誤り」と警告した。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア