- 各国法定通貨の危機
- 世界には深刻な通貨危機で大幅インフレを記録している国々もある。2018年のビットコインの下落率は46.7%に達するが、アルゼンチンやベネズエラの下落率はこれを大幅に上回る。
- 仮想通貨ニーズの増加
- 各国で通貨の暴落が発生する中、ビットコインをはじめとする仮想通貨への移行ニーズは高まりを見せており、今年に入って下落を続けるビットコインも一部の法定通貨より安定しているとの調査結果も報告されている。
各国法定通貨の危機
通貨危機に見舞われる世界のいくつかの国々では、仮想通貨市場への移行が急がれる事態となってきました。
トルコやイラン、アルゼンチンやベネズエラなどがその例です。
既存の法定通貨が通貨危機に見舞われ、経済が危ぶまれるという事態が世界中で起こる中で、安定した経済圏の構築のため、ビットコインをはじめとした仮想通貨のニーズが高まっています。
法定通貨危機は世界中に広がっていると言われていますが、中でも重大なのはアルゼンチンです。
法定通貨であるペソが下落し、アルゼンチン国内の物価は大幅なインフレを見せているからです。
ペソの下落は直近までおよそ3ヶ月もの間続き、インフレ率はついに8月には30%を超えました。
これは先進国の中では最大のもので、このままのペースで行けばクリスチーナ・フェルナンデス前大統領在任中の2015年のインフレ率40%という記録に並ぶ可能性があると危惧されています。
アルゼンチン中央銀行の金利は60%まで上昇しており、企業間の取引においても資金不足で未払いとなった事例が7割増加、そしてその未払い額の合計は67億7200ペソ(約250億円)にものぼるとされています。
このような事態を受けて、他国からの資本流入が減り、投資家らも国内市場から撤退が相次ぎ、アルゼンチンはついにIMF(国際通貨基金)からの融資の受け入れに合意。約500億ドル(約5.5兆円)を受け入れることが決定しました。
現在ではこのIMFからの融資受け入れが市場で評価され、ペソの対ドル価格は少し持ち直していると言えますが、国民から信頼を得るところまでは至っておらず、ペソをドルに換えて保有するという人が後を絶たないようです。
アルゼンチンでは今こうしていわゆるドル化経済が進みつつあり、国の産業の中核の一つである農業においては、銀行と提携して、農機具の代金をドルで支払えば2年間金利が0%になるというキャンペーンを始めた農機具メーカー企業もあるとのことです。
仮想通貨ニーズの増加
このような状況が、ビットコインや仮想通貨への期待を高めています。
アルゼンチン同様、通貨危機の最中にあるトルコでは、一連の経済状況悪化の後、「Bitcoin」のGoogle検索数が倍増し、仮想通貨の取引も急増しました。
トルコの中央銀行も金融政策の姿勢を来週調整すると発表するなど、アルゼンチンと共に両国が牽引する新興市場は芳しくありません。
また、こうした各国の通貨の状況を受け、年初より下落の続くビットコインが、特定の法定通貨より安定しているとの調査結果も出てきています。
ビットコインは、今年だけで換算すればドル建てで約46.7%のマイナスとなっていますが、これは対米ドルにおけるボリバル(ベネズエラの通貨)、ポンド(スーダン)、ペソ(アルゼンチン)よりも良いパフォーマンスだったことが、ペンション・パートナーズの調査で明らかになっています。
Crypto vs. Fiat Currency returns… pic.twitter.com/3g4q5s8hhs
— Charlie Bilello (@charliebilello) 2018年9月2日
トルコの法定通貨リラも、ビットコインよりは良い結果であるものの、マイナス44%という数字を記録しており、法定通貨が安定しているとは一概には言えない時代になっていると言えるでしょう。
また最近では、アメリカと中国による貿易戦争や日本銀行が金利政策の決定を待っている中、ビットコインの取引量と価格が上昇したというデータもあります。
このようなマクロ的な状況も、人々に仮想通貨への興味や移行を促す要因の一つとなっているようです。