マクロ経済と金融市場
2日の米NY株式市場では、ダウ平均株価は前日比337ドル(1.1%)安に。
米雇用統計は市場予想の範囲内であったが、金融引き締め長期化が景気を冷やすとの観測が上値を重くしている。一方、米株価指数先物の時間外取引では上げ幅を拡大。6日の東京株式市場では前日比20円(0.08%)高と下落を一服した。
21日には、0.75%の大幅利上げが見込まれるFOMC(米連邦公開市場委員会)発表及びパウエル議長声明を控えることから、今月中旬以降は様子見基調となりやすく、通過すればピークアウトを見越して次第に落ち着く可能性も考えられる。
仮想通貨市況
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインは前日比0.3%安の19,749ドル。
ここ数日間は、19,500〜20,500ドルのレンジ内で揉み合っているが、反発は限定的だ。
アナリストのNicholas Merten氏は、FRB(米連邦準備制度)の金融引き締めを念頭に、これから1年間ほど相場が低迷し、1BTC=12,000ドル前後まで下落するとの見通しを示した。
また、NUPLのオンチェーンデータを根拠に「過去の相場サイクルと比較して、下降トレンドが終わったと判断するには早計」と主張した。
実現利益と損失の差を測定する「純未実現利益/損失(NUPL:Net Unrealized Profit/Loss)」を基にした分析だ。NUPLは、昨年の強気相場で0.7〜0.75の買われ過ぎ水準(オレンジ帯)を記録してから一転、現在では売られ過ぎ水準(ブルー帯)にまで落ち込んだ。
NUPLが0.25を下回った2014年は、約9ヶ月で底打ち反転。同じくNUPLが0.25を下回った2018年には約8ヶ月かけて低迷後、底を打ち反転している。
一方、Daan Crypto Trades(@DaanCrypto)氏は、過去数日間でバイナンス先物の建玉数が、5億ドル相当の計24,000BTC超にまで膨らんでいることを指摘した。
The increase in Open Interest in the past few days on Binance Futures alone totals over 24K BTC. Which equals to almost $500M.
— Daan Crypto Trades (@DaanCrypto) September 4, 2022
Many of this seems to have been aggressive shorts slamming into big walls. pic.twitter.com/eS7wYELmTN
その多くは、地合い悪化を根拠に安値更新を期待したショートポジションとみられ、「現物価格の上昇時にショートスクイーズを引き起こす可能性が高い状況にある」との見立てを示した。
データ分析企業CryptoQuantのデータによれば、暗号資産(仮想通貨)取引所の外貨準備高が増加傾向にあるが、この流入はデリバティブ市場のショートポジション増加を示唆する。
Exchange Reserve Is increasing
— CryptoQuant.com (@cryptoquant_com) September 5, 2022
"Inflow into the exchange is increasing, but this inflow is related to derivative market."
by @GrizzlyBTClover
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アルトコイン相場
個別銘柄では、イーサリアムクラシック(ETC)が前日比24.7%高と高騰した。 ビットコイン(BTC)の前日比1.1%高、イーサリアム(ETH)の5.7%高と比較しても群を抜いている。
十分に成熟していない仮想通貨市場では、「市場価格(時価)にトークン発行枚数を掛け合わせた、時価総額基準」ではなく、表示価格にUnit bias(単位バイアス)が働き、割高・割安判断される傾向を指摘する声もある。
現在の市場価格は、ETCは40.3ドル、ETHは1660ドル。
CoinGeckoのデータによると、ETC取引量は過去24時間で約11億ドルまで5倍近くまで急増した。出来高を牽引しているのは、バイナンスのETC/USDT(テザー建て)と韓国大手取引所であるUpbitのETC/KRW(韓国ウォン建て)だ。
イーサリアムの大型アップグレードであるThe Merge(ザ・マージ)で新旧チェーンの統合が実現し、合意形成アルゴリズムのPoWからPoSへの移行が行われることで、 ETHの発行量が90%減少して希少価値が高まり、ネットワークのエネルギー効率が99.9%向上することが期待される。
順調に進捗すれば、本日いよいよ2部構成の前半フェーズとなる「Bellatrix」アップグレードが実施される見込みだ。
関連:2部構成のイーサリアムマージ|9月6日予定の「Bellatrix」アップグレードとは
ビットコイン建の通貨ペア「ETH/BTC」で見ると、ビットコインに対してイーサリアムが極めて強く、0.0828BTCまで買われた。21年12月の直近高値である0.083BTCを上抜けば、18年2月以来4年半ぶり水準となる0.09BTC台も視野に入る。
ETH/BTCは、今年6月時点の直近安値は0.049BTCであったが、その後一時的なリスクオン回帰もあり、マージ思惑でイーサリアムに資金が集まりおよそ1.68倍まで上昇した。
一方、PoSへの移行は既存ETHマイナーのマイニング機器が使用できなくなり、採掘事業が続行不可能となることを意味する。その点において、同じ機器でPoWマイニングを継続出来るイーサリアムクラシックは、避難先として一部マイナーの受け皿となる可能性が指摘される。
これに先駆けBTC.comは1日、12月1日まで3ヶ月間のETCマイニング「手数料無料」キャンペーンを打ち出した。 ハッシュレート(採掘速度)をBTC.comに振り向けているユーザーに対し、マイニング手数料を免除した状態でマイニング報酬をマイナー(採掘業者)に比例分配する。
ETCのハッシュレートは前月比62%上昇、過去3ヶ月間で200%上昇している。
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