
ウォン建てステーブルコイン解禁唱える
韓国で4日、「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏が新大統領に就任した。選挙キャンペーン中に、ステーブルコインや暗号資産(仮想通貨)の積極政策を公約として掲げていたところだ。
まず、同氏は、韓国の法定通貨ウォン建てのステーブルコインを導入したいと述べていた。
そうすれば、仮想通貨ユーザーが、米ドル建てステーブルコインUSDTやUSDCに頼ることなく、ブロックチェーンネットワーク上で資金移動を行うことが可能になり、国内資本の流出が避けられると論じる格好だ。
ステーブルコインは価格の安定性から、仮想通貨取引所間での資金移動や、一時的に資産価値を保っておくことなどにも使われている。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
しかし現在、韓国の法律では、ウォンに連動したステーブルコインの発行は認められていない状況だ。
コリアヘラルドによると、1月から3月にかけて、韓国の仮想通貨取引所からは56.8兆ウォン(約6兆円)に相当する資産が流出。そのほぼ半分がドル建てのステーブルコインに関連していた。
李氏は、「国家の富が海外に流出するのを防ぐには、ウォン建てステーブルコイン市場を確立する必要がある」と話している。
一方で、ステーブルコイン発行には反対する意見も存在。韓国資本市場研究院のシン・ボソン研究員は、ステーブルコインは「事実上、民間部門に通貨発行の権限を与えることになる」ものだと意見した。
ウォン建てステーブルコインの発行を認めれば、マネーサプライ全体が膨張し、意図せず重大な結果をもたらす可能性があると警告している。
なお、米国ではドル建てステーブルコインが、ドルの優位性をデジタルに拡大するものだと捉えられており、上下両院でステーブルコイン規制法案が進められているところだ。
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李氏は、仮想通貨現物ETF(上場投資信託)の合法化も公約として掲げていた。
仮想通貨特有のボラティリティ(価格変動の大きさ)に対するリスクヘッジは、様々な資産に分散したポートフォリオの一部にそれを組み込むことだとも主張している。
また、李氏の陣営は、国民年金基金などの機関投資家が、資産価値を安定させるという基準を満たした場合に、仮想通貨に直接投資できるようにすることも提案していた。
もし実現すれば、韓国で仮想通貨の普及がさらに進む可能性がある。韓国では、2024年11月時点で、約1,560万人(国民の約30%)が仮想通貨を取引していると報告されている。
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