プライベート・クレジットが市場をリード
大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスの調査部門が5日に公開した月次市場分析によると、トークン化された現実資産(リアルワールドアセット=RWA)の市場が急速に拡大しており、過去1ヶ月間で時価総額は6.5%増加し、230億ドル(約3兆3,000億円)を超えた。

出典:バイナンス
2025年上半期だけでも、市場規模は年初の86億ドル(1兆2,347億円)から230億ドル超に達し、260%(3.5倍上)を超える驚異的な伸びを記録した。
中でも、トークン化されたプライベート・クレジットが約58%のシェアを占め、市場成長の主な牽引役となっている。プライベート・クレジットは、投資ファンドや機関投資家などの非銀行主体が企業や個人に直接融資を提供するもので、柔軟な条件や高い利回りという特徴を持つ。
プライベート・クレジット市場は、、2008年の世界金融危機後の銀行統廃合や規制強化を背景に、ここ数年で急速に拡大しており、国際通貨基金(IMF)によると、2024年時点で約2.1兆ドル(約300兆円)の規模に達している。
トークン化されたプライベート・クレジット市場の成長を牽引しているのは、イーサリアムのレイヤー2スケーリングソリューションであるZKSync Era上に構築された「Tradable」だ。2025年1月のローンチ以来、Tradableは20億ドル(約2,870億円)以上の資産のオンチェーン化を果たし、TradFi(伝統的金融)とDeFi(分散型金融)の架け橋としてトークン化を推進している。
プライベート・クレジットに次ぐRWAは、トークン化された米国債で市場の34%のシェアを占めている。その他の金や不動産の資産などもトークン化が進んでいる。
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RWAとDeFiプロトコルの統合
トークン化されたRWA市場の成長には、DeFiプロトコルとの統合も大きく寄与している。
例えば、資産運用大手ブラックロックによるトークン化された米国債商品「BUIDL」(資産規模29億ドルで世界最大のトークン化国債ファンド)は、Euler Financeを介して初の直接DeFi統合を開始し、Eulerプラットフォーム上でのレンディングと借入を可能にした。
また、RWAのトークン化プラットフォームCentrifugeは、ソラナ上で米国債ファンド(JTRSY)をトークン化した「deJTRSY」を導入し、SecuritizeはApollo Global Managementと提携して「Apollo Diversified Credit Fund」をトークン化したACREDトークンをソラナ上に導入した。
CentrifugeとSecuritizeの取り組みは、ソラナのDeFi主要レンディングプラットフォームKamino Financeとの連携により実現した。
deJTRSYやACREDのようなトークンは、伝統的金融資産をDeFiエコシステムに統合し、従来の投資家に新たな流動性と利回りの機会を提供する。また、DeFiが自己完結型のエコシステムから、より堅牢で外部と連携した金融システムへ進化することに貢献する。
バイナンスリサーチは、「規制の枠組みが明確になるにつれて、トークン化されたRWA市場の継続的な成長と、主要業界プレーヤーによる参入の増加が見込まれる」と総括した。
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規制の進展と企業の姿勢
バイナンスリサーチは、企業によるビットコイン保有量が引き続き急増している現状にも言及した。
現在、上場企業116社が合計80万9,100BTCを保有しており、これは1年前の31万2,200BTCから大幅に増加している。4月初旬以降だけでも、25社以上が新たな保有量を公表し、10万BTC近くが追加されたという。
2025年の会計規則の変更により、仮想通貨の公正価値での取り扱いが可能になり、減損制限が撤廃されたことから、企業によるBTC保有の魅力が高まっているとバイナンスは指摘した。
さらに、ビットコインが史上最高値(約11万2000米ドル)に達し、企業がバランスシートの改善とインフレヘッジへの対策を行う中で、企業間にFOMO(取り残されることへの不安)が広がったと、バイナンスは見ている。
一方で、米国では規制の明確化が進んでおり、5月29日に米証券取引委員会(SEC)は暗号資産(仮想通貨)のステーキングに関する新たなガイダンスを発行。仮想通貨イノベーション評議会のステーキング政策責任者アリソン・マンジェロ氏は、これが「より合理的な規制への一歩である」と考えている。
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