米著名投資家レイ・ダリオ氏が語るポートフォリオ論
世界最大級の米ヘッジファンドBridgewater Associatesの創業者であるレイ・ダリオ氏は、グローバルな視点を持ちつつ、金融市場に参入することを恐れず、バランスの取れた分散投資を行う重要性を説いた。
「現金はゴミ」
スイスのダボスで開催中の世界経済フォーラムで、米CNBCのインタビューに応じた同氏は、各国の中央銀行が通貨の発行権限を握る現在の法定通貨システムでは、政府が不換紙幣を発行し続けることが可能なため「金余り」状態を生み出し、通貨価値の下落につながるとして「現金はゴミ」と斬って捨てる発言をした。
そのため、「十分に多様化されたポートフォリオ」に現金を投じることを恐れず、また、一定の量の金(ゴールド)=「確かなもの」をポートフォリオに含めることの重要性を強調した。
金を買うならビットコインは?
金投資を勧めるのならビットコインを買うのはどうかと尋ねられると、ダリオ氏は首を横に振り、ビットコインはお金の機能を果たしていないと次のように述べた。
「お金の目的は二つある。交換の手段と富の保存手段だ。現在、ビットコインはどちらにも効果的ではない。」
「デジタルゴールド」としての認識が広まりつつあるビットコインについて、「富の保存手段としてはどうか」と再度尋ねられると、ダリオ氏は、ビットコイン価格のボラティリティを欠点としてあげ、「その変動性ゆえ、近寄れない」と述べた。
しかし、フェイスブックが提唱している複数の法定通貨を担保にしたステーブルコイン「リブラ」など、より安定性を保てるものなら、まだ可能性が高いと付け加えた。
さらに中央銀行は、ビットコインではなく、これまで千年もの間、準備通貨としての地位を確立した金を購入するだろうと、金に投資することの重要性を再度、強調。しかし、分散投資こそがリスク回避の王道だと主張しているダリオ氏は、「投資の一部を金に回すということだ」と念を押した。
「パラダイムシフト」が近づいている?
ダリオ氏は独自のマクロ経済分析に基づき、2008年の経済危機の引き金となったベアスターンズ社やリーマン・ブラザーズ社への投資から直前に撤退し、リーマンショックを乗り切った投資手腕の持ち主として名声を馳せた。同氏が創業したBridgewater Associates社は、1600億ドル(約17兆6000億円)を運用する世界最大級のヘッジファンドへと成長した。
そのダリオ氏だが、このインタビューの「現金はゴミ」発言のように、過剰な「フリーマネー」がシステムの崩壊を促進していると、警告を発している。 各国政府による金融政策の効力の低下に加え、広がる貧富の格差やアメリカと中国の対立など、世界が二極化してきており、1930年代後半の状況と似てきていると主張する。
もちろん、過去の歴史がそのまま繰り返されることはないとしながらも、現在起こっていることのメカニズムを学び、理解することで、投資の面では「多様化、分散化」を図り、自分自身を守ることの重要性を説いている。
インタビューでダリオ氏は、今年の景気後退はないだろうと予測しながらも、米大統領選後、景気後退に陥った場合、金利引き下げなどの刺激による効果は薄れてきており、政府が効果的な金融政策を打ち出せないことを憂慮していると述べた。 また、さらなる財政赤字に対し、紙幣の濫発で対処することが考えられるとも付け加えている。
「マイナス金利の国債等が出てくる時点というのは、パラダイムシフトの限界が近づいているということだ」