5億円の会食も老練なる投資家には功を奏さず
伝説の投資家と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、24日、米CNBCのインタビューで、仮想通貨トロン(TRON)創設者ジャスティン・サン氏との会食後も、自身の仮想通貨に対する考え方が変わることはなく、仮想通貨に価値はないとの主張を繰り返した。
先月行われたバフェット氏との会食の権利は、仮想通貨に痛烈な批判を展開してきたバフェット氏の考えを少しでも和らげようと、サン氏が457万ドル(5億円相当)で落札したもので、ライトコイン開発者のチャーリー・リー氏、SNSトレードプラットフォーム「eToro」のYoni Assia氏、BINANCEチャリティー財団のHelen Hai氏、仮想通貨取引所大手フォビのクリス・リーCFOが同席した。
「友好的な意見交換 」でもお互いの考えは変わらず
「ジャスティン・サンは仮想通貨に対するあなたの考えを変えたか」との質問に、バフェット氏は、3時間半に及ぶ会食では、とても友好的な意見の交換ができたとする一方で、仮想通貨に対する考え方は全く変わっていないと、次のように述べた。
仮想通貨は基本的に価値がない上、何も生み出さない。。。増えることもなければ、何かを実現することもないし、小切手を送ってくれることもない。何もできない。 仮想通貨に望める事といえば、後日、他の誰かがやって来て、より多くの金額を支払ってくれることくらいだ。でもその当人が問題を抱えることになる。
…価値の観点から言うと、ゼロだ。
サン氏と仮想通貨業界の有力者4人との会食では、バフェット氏の考えを変えることはできなかったようだが、バフェット氏にしても、サン氏の考えを変えることはなかったようだ。 なお、食事会の権利の落札による寄付によって、サンフランシスコの慈善団体が「膨大な量の夕食と寝床を購入できる」ため、サン氏には「感謝している」とバフェット氏は付け加えた。
「仮想通貨は所有していないし、一切そのつもりもない」
この会食の場で、サン氏がバフェット氏にビットコインを贈呈したことが報道されていたため、「ビットコイン保有者になった気持ちは」と尋ねられると、「ビットコインは全く持っていない」とバフェット氏は返答。インタビュアーは、保有の事実がないかどうか再度、確認する場面もあったが、同氏はきっぱりと、「どのような仮想通貨も所有していないし、今後、一切そのつもりもない」と答えた。
バフェット氏は、誕生以来10年が経過したビットコインが、その有用性について様々な話はありながらも、未だ同氏がCEOを務めるバークシャーハサウェイ関連会社の業務には、全く使用されていないことを指摘。また、「ビットコインは、かなりの金額を違法に移動させるのに使われてきたと思う。」と述べ、「ビットコインの経済的貢献」は、スーツケースに現金をつめて他国へと移動する必要がなくなることで、スーツケースの需要を減らしたことだと冗談を言い、笑った。
矛盾する両者の主張
サン氏は、バフェット氏との会食で1ビットコインとバフェット氏の誕生日にちなんだ額のトロン(1930830TRX)が搭載されたサムソンのスマートフォンを贈呈したことを、ツイッターで明らかにしていた。
(3/12) Brought Mr. Buffett 2 Galaxy Fold w/ #TRON built in. @WarrenBuffett is officially a $TRX owner! I gifted him 1,930,830 $TRX equivalent to his bday! Mr. Buffett joked he wished he was born later so that he could have more! Mr.Buffett address: https://t.co/n7gg5TfdIm
— Justin Sun (@justinsuntron) February 6, 2020
バフェット氏はいかなる仮想通貨の保有の事実はないと、このインタビューで明言しているため、両者の主張には食い違いがある。
サン氏の主張が事実だとすると、バフェット氏がその後、贈呈された仮想通貨入りのスマートフォンにどのように対処したのかは知る由もないが、ブロックチェーン技術のおかげでビットコイン取引の記録は、誰でも閲覧が可能だ。
ちなみに、サン氏が公開した「バフェット氏用の」ビットコインアドレスには、その後も少量のビットコインが幾度かにわたって送金されており、執筆時点では総額1.01519228 BTCとなっている。
スーツケースよりは、はるかに簡便で透明性の高い資金の移動が可能なのがビットコインなのだが、バフェット氏にそのメッセージが届く日は来ないようだ。