仮想通貨とデジタル通貨を区別
フィンテック企業との連携が進む、クレジットカードなど金融・決済大手VISAのAlfred Kelly CEOは14日、ビットコインなど仮想通貨に対するスタンスを明らかにした。
米金融大手JPモルガンが開催した大口投資家向けのテクノロジー・メディア・通信分野の年次会議で、JPM証券アナリストのインタビューに答えたKellyは、まずは仮想通貨とデジタル通貨を区別して考えることが重要であると切り出した。
ビットコインはコモディティ
Kellyはビットコインのような仮想通貨は、通貨としてよりも、コモディティ(商品)に近い特性を維持するのではないかと考えているようだ。 その理由として、ビットコインを購入する多くの人々が実際に決済などで使うことなく保有している事実をあげた。
一方、法定通貨に裏付けられたデジタル通貨は、大きな可能性をもつ新興の決済技術であり、今後の進展に期待を寄せているとして、デジタル通貨に対する支持を表明した。特に、銀行口座へのアクセスを持たない人口が多い新興市場では、現金依存から脱却し金融包摂を促すことができるため、大きな価値を生み出す可能性があるとみているようだ。
決済システムに付加価値をもたらすデジタル通貨
Kellyは、デジタル通貨は現在の決済のエコシステムを否定するものでも、とって代わるものでもなく、付加的な要素として機能すると考えていると明かした。 デジタル通貨が広く商品やサービスの支払い手段として普及した場合、現在世界160種類の法定通貨で決済を行なうVISAのネットワークに、デジタル通貨を取り入れることは、やぶさかではないと述べた。
直近では、VISAが、中央銀行向けにブロックチェーンを利用した「デジタル法定通貨」の特許を申請したことが明らかになっている。この特許は、法定通貨のデジタル版を中央機関が生成・管理するシステムに関するものだが、これもVISAのデジタル通貨戦略の一環だと見ることができるだろう。
仮想通貨とのつながり
Kellyは、今年2月、仮想通貨専業企業として初めて、VISAカードを発行する権限を付与された仮想通貨取引所大手Coinbaseとの提携に言及した。
イギリスのCoinbaseが昨年4月に発行を開始したVISAカードは、仮想通貨での決済が可能で、ビットコインをはじめイーサリアム、ビットコインキャッシュ、ライトコイン など10種類の仮想通貨に対応している。現在、米国では利用できないが、イギリス、フランス、イタリア、スペインなど欧州29カ国で利用可能で、そのユーザーの半数以上が定期的に利用するなど、成功を納めているようだ。
さらにデジタル通貨利用を促す様々なウォレットとの提携についてもふれているが、特筆すべきは、中国の大手プラットフォーマー「テンセント」とケニア最大の通信事業者でVodafoneと共にモバイル送金サービスM-PESAを展開する「Safaricom」との提携だろう。
Kellyは、20億のウォレットを追加する可能性を持つテンセントとSafaricomとの提携には、「非常に興奮」しており、これまで独自のエコシステムの中で完結し「閉ざされていた」ネットワークを、VISAのグローバルなネットワークに迎え入れることは素晴らしいことだと述べた。
仮想通貨リブラ
フェイスブックの仮想通貨、リブラについて尋ねられると、規制要件に関する懸念からリブラ協会から脱退したが、引き続き興味を持って、リブラプロジェクトとは対話を続けているとKellyは答えた。