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高騰するビットコイン、半減期後の「損益分岐点」を新旧マイニングマシン別に分析

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

最新マシンでは十分な利幅、旧型マシンの収益環境は厳しい

暗号資産(仮想通貨)ビットコインは5月12日、ブロック承認の報酬が12.5BTCから6.25BTCに半減する「半減期」を迎え、マイナーの収益環境も大きく変化した。

マシン製造最大手Bitmainは、新型マシンAntminer S19シリーズの出荷を開始しており、マイニングマシン間での収益格差も広がる可能性がある。

そこで今回、半減期後の収益環境をマイニングマシン別に分析した。

マイナー利益の決定要因

マイナーの収入は、マイニングの報酬として付与されるBTC、マイナーの費用はマイニングマシンの購入費用や電気代が該当する。

そしてマイナーの収入に大きな影響を与えるのは、BTC報酬数、BTC価格、ネットワークのハッシュレートである。

BTC報酬

マイナーは、ネットワークのブロック承認時に必要な計算を行うことでBTC報酬を受け取る。BTCではプログラム上で4年に一度この報酬が半減する設定がなされている。単純計算すれば、マイナーの収入は4年ごとに半減することになるため、マイナーの収入(収益)や行動にも重大な影響を与える。

BTC価格

BTC価格が高騰すれば、半減期に伴うBTC報酬の減少を補うことができる。歴史的にはBTC価格の大幅な上昇がマイナー収益の増加に寄与してきた。

ハッシュレート

ネットワーク全体のハッシュレート(計算能力)が上昇すれば、それだけブロック承認のための計算競争が激しくなるため、BTCの価格が変わらなければマイナーの収入が減少傾向となる。

一方、マイナーの費用に大きな影響を与えるのは、マシン費用と電力コストだ。

マシン費用

マイニングマシンの購入時に一括で発生する(固定費)。しかし、現在のマイニング環境では、マイナーはマシンを短期(約2年)で交換する必要があるため、マシン購入費を耐用年数で分割して変動費として計算することもできる。

電力コスト

マイニング時にマシンが消費する電気代であり、変動費としての性質を持つ。電力コストはマシンの電力消費効率、地域や季節ごとの電気料金によって変化する。7〜8割の運営コストが電気代に当たるとされている。

マシン別マイナー利益

まずはじめに、マシン別の収入と費用構造を分析する。

中国マイニングマシン大手BitmainのAntminerシリーズ、マイクロBTのWhatsminerシリーズから6台を抽出し、マシン性能と5月末時点の販売価格をもとにマシン1台当たりの年間利益を計算した。

BTC価格を1万ドル、ネットワークのハッシュレートを100EH/s(=100,000,000TH/s)、電力コストを0.05ドル/kWh、マシン購入費を2年間で償却するという設定で計算を行うと、新型モデルと旧型モデルで収益環境が大幅に異なることが分かる。

Bitmainが2020年3月に発表した最新モデルAntminer S19シリーズでは1台当たりの年間利益が800ドルを超える。これらのマシンは高い計算能力(90~100TH/s、現行モデルでは60~80TH/s)を持ち、効率的にマイニング報酬を稼ぐことができる。これが利益のドライバーになっている。

2019年に販売されたAntminer S17+やWhatsminer M20Sも半減期後に利益を確保できている模様だ。ただし、これらのマシンは電力コストやBTC価格などの条件が悪化すれば利益を出すのが困難になる可能性が生じる。

一方、2017年から2018年にかけて普及したAntminer S9では半減期後の収益環境がかなり厳しくなっている。一般に、マシン販売業者は競争優位性が低下した旧型モデルの価格を引き下げるが、S9モデルでは販売価格がすでに100ドルを下回っている。マシン償却費を除いたとしても、電力コストがBTC報酬を上回り、操業を停止させるべき水準に達している。

BTC価格変動とマイナー利益

上記の利益は現在のBTC価格などから算出したものに過ぎず、将来BTC価格が変動すればマイナーの収益環境が大きく変化する可能性がある。そこで、市況の変動に対してマイナー利益がどう変化するかを分析する。

その他の条件を固定して、BTC価格を8000ドルから12000ドルまで変化させたときのマシン別年間利益は以下のようになった。

注目すべきは、BTC価格が1.2万ドルの水準まで上昇してもAntminer S9の利益が出ない点だ。

また、Antminer S17+やWhatsminer M20Sなどのモデルでも、BTC価格が8000ドルまで低下すると利益を出すのが困難になることが分かる。

電力コスト変動とマイナー利益

BTC価格だけでなく、電力コストの変動もマイナー収益への影響が大きい。今から中国四川省の雨季による水力発電供給の増加、米テキサス州など電力料金が安い地域へのマイニングファームの進出によって電力コストが低下する可能性もある。

そこで、次に電力コストの変動に対してマイナー利益がどう変化するかを分析する。

その他の条件を固定して、電力コストを0.03ドル/kWhから0.07ドル/kWhまで変化させたときのマシン別年間利益は以下のようになった。

現行モデルでは、電力コストが40%減少すれば、利益が約2倍になる。ただし、電力コストが大幅に改善してもS9で利益を上げるのは難しい状況だ。

マシン別損益分岐点

マシンが利益を上げることが難しくなれば、合理的なマイナーはマシンの稼働をとめることになる。一部のマシンの稼働が止まれば、ネットワーク全体のハッシュレートが減少することになる。したがって、ネットワークのハッシュレートの動向を分析する際には、各マシンの損益分岐価格(利益が0になるときのBTC価格)を把握することが重要になる。

その他の条件を固定したとき、各マシンの損益分岐価格は電力コストの変動に対して次のように変化する。

最新のAntminer S19シリーズでは、BTC価格が下落した局面でもマイナーが利益を確保できる。したがって、旧型モデルから新型モデルへの移行が進めば、相場急落時にもハッシュレートが安定する可能性が高い。

マシン別投資回収期間

マシン費用を固定費として考える

これまではマシン費用を変動費とみなし、マシンを一定期間(2年間)で減価償却してきたが、マシン費用は固定費とみなすこともできる。

マシン費用を固定費とみなした場合、時間経過とともにマイニングの総収入と総費用は以下のように変化する。

マイニング報酬が電力コスト(変動費)を上回れば、マイナーはいずれマシン費用を回収することができる。以下では、この回収期間を算出し、各マシンの収益性を分析する。

BTC価格変動と投資回収期間

その他の条件を固定して、BTC価格を8000ドルから12000ドルまで変化させたときのマシン別投資回収期間は以下のようになった。

BTC価格が1万ドルの水準では、投資回収期間はAntminer S19・S17で約1年、Whatsminerで約1.5年となる。

一方、マイニング報酬が電力コストを下回るAntminer S9では、マイニングを続けるほど収益が悪化し、マシン費用を回収することがほぼできないことが分かる。

電力コスト変動と投資回収期間

その他の条件を固定して、電力コストを0.03ドル/kWhから0.07ドル/kWhまで変化させたときのマシン別投資回収期間は以下のようになった。

Whatsminerの各モデルでは、投資回収期間が電力コストの変動に対して比較的大きく変動する。一方、Antminerの最新モデルでは電力コストが上昇しても回収期間を2年以内に抑えられる。

まとめ

マイニングの競争環境の激化と半減期によるBTC報酬の半減の結果、Antminer S9などの旧型モデルではマイナーが利益を上げるのが困難になっている。

一方、新型モデルでは十分な利幅が確保できている。新型モデルはBTC価格や電力コストなどの変動にも強く、優位性がある。新型モデルは現在中国国内で出荷が開始されており、今後普及が拡大する可能性が高い。

また、中国の雨季やマイニングファームの米国進出などにより、電力コストのさらなる低下が期待されている。その場合、1年を下回る短期でマシン費用を回収できる可能性もある。

今回はマイニング費用をマシン費用と電力コストの2つに絞って分析を行った。しかし実際には、人件費、マイニングファームの管理費、マイニングプール手数料などを加味することによってマイニング費用がさらに増加することに留意する必要がある。

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