国連ブロックチェーン専門家、低金利とデジタル通貨普及で銀行口座が不要となる可能性を指摘

デジタル通貨が銀行口座に取って代わる可能性

デジタル通貨の出現により、決済分野で銀行やクレジットカードが長年享受してきた独占的な地位が脅かされ始めている。コロナ対策により導入された中央銀行の超低金利政策は、このプロセスを加速させ、銀行口座を持つ必要性さえ無くしてしまう可能性があると、国連ブロックチェーン専門家のMassimo Buonomoは指摘した。

低金利政策の影響

4日に、コロナ後の世界経済に関するオンライン会議のパネリストとして参加したBuonomoは、国連でフィンテックおよびブロックチェーンの金融分野における専門家としてアドバイスする立場にある。

Buonomoによると、銀行口座を維持する意義の一つが利息だったが、相次ぐ金利引き下げ政策により、受け取り額は大幅に減少し、預金者はより有利なリターンを銀行外に探し始めることになる。

実際、コロナウイルスの影響で経済が悪化する中、米連邦準備制度理事会(FRB)は3月、ゼロ金利政策を復活、さらにトランプ大統領は先月、FRBにマイナス金利導入を求めている。欧州中央銀行(ECB)と日銀が既にマイナス金利を実施していることは周知の通りだが、イギリスでも英中銀総裁はイングランド銀行がマイナス金利の導入に踏み切る可能性を排除していないと述べている。

一方、仮想通貨業界では、取引所への仮想通貨預入やDeFiの貸付で利息を得る口座サービスが次々に登場し、銀行預金に比べ、格段に高い利率をインセンティブとして打ち出している。

また、仮想通貨のステーキングでも報酬が得られるが、ノードの運用にハードルを高く感じるユーザーにも、対象となるトークンを保有するだけでリターンが得られる「サービスとしてのステーキング」を提供を開始する取引所も増えている。

デジタル通貨による決済手段の多様化

現在の金利環境で、銀行口座に残された唯一の利点はデジタル決済が可能なことだが、この領域でもデジタル通貨が銀行とクレジットカードの優位性を侵食しつつあるとBuonomoは言う。デジタル通貨を保有し利用することで、スマートフォンから各種料金の支払いや送金が、より迅速に、かつ手数料無料で可能になることは、取引手数料を課す銀行やクレジットカード会社にとっては大きな脅威となるだろう。

この点に関しては、米スタンフォード大学ビジネススクールのDarrell Duffie教授も、デジタル通貨が今後10年以内に銀行業のビジネスモデルを根底から覆す可能性が高いと警鐘を鳴らしている。

CBDCが真の代替手段として有望

デジタル通貨は数多く存在するが、Buonomoが、銀行口座に代わるものとして最も有望だと考えるのが、中央銀行が発行するデジタル通貨、CBDCだ。ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は、国連を含む多くの組織で広く採用されており、将来、代替通貨となる可能性も考えられるものの、パブリックチェーンは技術的な制限やプライバシーの観点から、国が管理するデジタル通貨には不向きだと述べている。

CBDCの発行モデルには、大きく分けて、中央銀行が民間銀行向けに発行するホールセール型と、民間銀行とともに企業や個人向けにも発行するリテール型があるが、リテール型が現行の銀行システムにとっては、最も「破壊的」だとBuonomoが指摘。

しかし、実現不可能ではなく、国民一人一人と紐づけられた社会保障制度とCBDCを組み合わせることで、社会で最も援助を必要としている障害者や失業者等に、通貨を分配することが可能になるという。

 


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