スウェーデン、CBDCを具体的に検討する報告書発表
スウェーデンの中央銀行である「リクスバンク」が、中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)についての98頁にも及ぶ詳細なレポートを発表した。
同国は今年2月に、独自のCBDCである「e-krona」(e-クローナ)のテスト開始を発表。2021年2月まで、1年間の試運転を予定しているという。
技術開発は大手コンサルタント会社のアクセンチュアと提携して行われており、パイロットプログラムでは、効率的な方法でCBDCを実装する準備ができているか否かを分析するという。
実際の試験が行われる中で今回発表された「中央銀行デジタル通貨(CBDC)と電子クロナ」というレポートはCBDCの必要性や、その発行形態について様々な角度から具体的に検討している。
民間サービスと提携した供給方法が有力
レポートによると昨今の金融システムの変化に伴って、政府には健全な通貨システムを確保する責任があるという。
その中には、巨大テクノロジー企業による民間デジタル通貨との競争において、価値の保存手段としてのスウェーデンクローナの役割を保護することが含まれる。また商品購入データなどが商業的に利用されないことを保証する決済手段を提供することも挙げられる。
「民間デジタル通貨」について、リクスバンクはFacebook主導のステーブルコイン「リブラ」などの計画を念頭に置いていると思われる。
またCBDCの提供方法としては、一つの機関が集中管理するよりも、現在の金融システムのように複数のポリシーに依存しているほうが堅牢性が高い、とレポートは結論している。
このため、中央銀行がすべてを行うのではなく適切に設計された「e-krona」が、中央銀行と、モニタリングされた民間決済サービスのパートナーシップを通じて、人々に提供されるモデルが理想的だという。
健全な市場競争を維持
レポートは、CBDCをスウェーデンに導入することで市場競争を維持することが出来ることも詳細に分析している。現在の決済市場は、規制されずに放置されると、独占や寡占状態に発展するリスクがあると懸念。
CBDCにより、銀行の取引口座市場、Visa・Mastercardなどの決済サービスプロバイダー、Swishなどの既存の支払いサービスの分野で競争を促進する効果があると想定している。
さらに、決済取引経路の簡素化により、大幅なコスト削減が期待される。スウェーデン国外の決済システムに依存しない取引経路を用意し、スウェーデンの決済システムの柔軟性と主権性も向上する。
消費者が一般的にCBDCの使用を始めるのは「e-krona」と結び付いた便利な金融アカウントサービスが出来てからだと予測され、インフラ整備も課題となるという。
国際決済銀行(BIS)は先日、新型コロナ危機が決済活動に与えた影響を分析するレポートを発表、CBDCが現行制度の抱える課題を解決する潜在力があることを指摘、各国がCBDCに取り組むことを改めて推奨している。
これを受けて他の国も、キャッシュレス社会のスウェーデンに続いて実証実験や具体的な導入プランの検討を開始する可能性がありそうだ。
参考:リクスバンク