エンタメコンテンツを重視するトロン
仮想通貨トロン(TRX)は、エンターテイメント関連サービスを提供する分散型プラットフォームを構築しています。利用者は、分散型アプリケーション(DApps)の配布などを行うことができます。将来的には、動画や音楽サービスだけではなく、ゲーム配信プラットフォーム提供など、エンターテインメント系のサービスを強化する見通しを立てている仮想通貨およびプロジェクトです。
本記事では、トロンについて、基本的な仕組みからロードマップ、提携先などについて解説します。
トロンの特徴
2018年初より、1週間で500%もの価格上昇など、急激な成長を成し遂げたことで、トロン(TRX)は一躍脚光を浴びています。バイナンスコイン(BNB)などと同様、定期的にバーン(焼却)される仕組みが導入されていて、市場供給量が減少することでその希少性が担保されていることでも注目度の高い銘柄です。メインネットローンチ時には、総供給量1,000億TRXの1%にあたる55億円相当の10億TRXがバーンされました。
トロンのネットワークは、クリエイターがオーディエンスと直接繋がることができる環境であると位置付けられています。ストリーミングサービスやアプリストア、音楽サイトなどにおいて、中央集権化されたプラットフォームを排除し、仲介者がいることで発生する時間やコストをクリエイターが削減できるようになると期待を集めています。これはユーザーが、コンテンツをより安価で利用できることにもつながります。
トロンは、世界に点在する、Ripple Labs等の大手企業から集まった有能で経験豊富な開発者で構成されたチームが進めるプロジェクトです。ブロックチェーンと独自の分散ストレージ技術により構築されたプラットフォームで、利用者が作成した無料のエンターテイメントのコンテンツを使って、新しい時代における事業と融合した仮想通貨システムの確立に向けて活動しています。
ブロックチェーンを利用した分散型アプリケーション(DApps)をホストすることにより、分散ストレージソリューションから、エンターテイメントの事業などが展開できるものです。
例えば、動画配信サイトなどでは、様々な動画がエンターテイメントコンテンツとして視聴者に届けられています。
トロンはクリエイターを補助し、様々なエンターテイメントコンテンツを配信する場所を提供します。
利用者は、トロンプラットフォームにおいて、エンターテインメント事業などを展開するスタイル事業になります。
ブロックチェーンの特徴
トロンはブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムに、ブロック生成を委任できる「Delegated Proof-of-Stake(DPoS)」を基盤にした「Tron Proof of Stake(TPoS)」を導入。また、ネットワークにおけるエネルギー消費を抑え、処理スピードや安全性を向上させるためにサイドチェーンを構築するプロジェクト「DAppChain」の開発も進められています。
トロンが最初に基盤にしていたイーサリアム(ETH)のトランザクション処理能力が秒間15件とされる中、トロンは秒間2,000件に対応できるとされており、高い処理性能にも定評があります。
エンターテインメント向けの分散型プロトコルを構築
TRONは、ブロックチェーン技術の活用により、無料のエンターテイメントシステムを構築することに向けて、ブロックチェーンがベースとなるプラットフォームを構築しています。
このプロトコルにより、利用者が自由にデータを公開、保存、所有できるようにしています。
分散型で自立的なシステムとして、利用者によるコンテンツの配信、購読などを稼働させることで、デジタル資産におけるリリース、流通および普及が可能になります。
トロンの活用事例や提携先企業
仮想通貨トロン(TRON/TRX)の活用事例や提携先企業について詳細をまとめました。
韓国大手サムスンとのパートナーシップ
Tron財団は2019年10月、トロンが韓国大手サムスンのブロックチェーン開発ツール「Keystore(SDK)」に統合されたことを公式に発表。この発表を受け、トロンの価格が前日比5%高を記録するなど、市場も反応しました。
サムスンの「SDK」とは、ユーザーがプライベート情報とデジタル鍵を自ら管理できるプラットフォーム。SDKを介してユーザーはトロンブロックチェーンのDAppsを構築できるほか、消費者はサムスンのスマホで直接DAppsへアクセスすることが可能になります。
また2020年4月には、サムスンのアプリストア「Galaxy Store」が、トロンのブロックチェーンを利用したDAppsの取り扱いを開始したことも明らかになっています。
ジャスティン・サンが創業したPeiwo APPが中核的な存在に
トロンの創設者であるジャスティン・サンにより創設されたPeiwo APPは、オンライン・オーディオライブストリーミング事業を行っており、世界において登録利用者数が、1000万人を超えています。
月間アクティブ利用者数においては、100万人以上を記録しており、中国最大のオーディオコミュニティーです。
Peiwo APPの利用者は、中国の北京・上海・広州・深センから、北米、西ヨーロッパ、日本、韓国、オーストラリアなどあらゆる地域にいます。Peiwo内ではTRONの入金、ギフトの購入が可能となります。
実業分野においては、トロンの戦略的な中核的企業として存在し、トロンのオーディオライブストリーミング・サービスが利用できます。
2017年において、親会社であるPeiwo Huanle(Beijing)Technology Co.、Ltd.が、北京において3番目のハイテク企業に特定されています。
Peiwo APPの オンラインエンターテインメントフォームと技術が中国政府によって認知されていたことも、評価された一つの理由としてあると思われます。
バイクシェアリング事業のoBikeとの提携
東南アジアで最大の自転車・バイクシェアリング事業者であるoBikeでは、 トロンとのコラボレーションにより、トロンのシステムにおいて、作成された仮想通貨のオーコインス(oCoins)を使って、自転車・バイクシェアリングなどで仮想通貨による様々なサービスが、利用できます。
オーコインスがあれば、オーディオコンテンツコミュニティPeiwo APPや、その他のトロンのアプリケーション・サービスを利用できます。
ソーシャルネットワーク・サービスのGSC.socialとの提携も
トロンは、中国などから東南アジアにかけて展開しているGSC.socialと提携をしており、集中型ソーシャルネットワークの境界線をなくすことに向けた仕組みの開発に取り組んでおり、ブロックチェーン技術の導入による社会ネットワーキングシステムの開発を共同で促進していくことを発表しています。
これにより、GSC.social における約1億2,000万人のソーシャルネットワークの利用者が、トロンのプラットフォームの利用にも流入しています。
連携活動は技術開発の側面においても活発
このほかにもGame.comなどとも提携をしており、ゲーム関連のソーシャルチェーンの開発にも取り組んでいます。
ゲーム関連の企業との提携や新規の動向など内容によっては、材料として重要視されるかもしれません。
ジャスティン・サン氏は以前、アリババやリップルで仕事をしていたこともあります。仮想通貨に限らず様々な事業に力量を発揮しており、連携企業との技術開発も、ソーシャルネットワークサービスや、オーディオコミュニティーなどの分野において、活発に行われているようです。
また、アリババの子会社となるアリエクスプレスでは、トロンの利用ができるようになっています。
宇宙開発の事業者との提携も公表されており、どんな事業展開があるのか、今後のニュースリリースにも注目されます。
将来性を検討する際のポイント
トロンの注目すべき点、将来性を検討するポイントをまとめました。
複数の業界へ進出
新しい事業スタイルの提供により、エンターテイメントの領域などに展開している点において、ソーシャルネットワークシステムや、バイクシェアリングなどの多角的な業界にまで進出しながら、仮想通貨のシステムを拡大しています。
事業の立ち上げをサポート
仮想通貨による資金集めから、業態のあり方までも、新しいスタイルであり、個人利用者においても、インターテイメントなどの領域から、音楽配信などをはじめることが出来るため、幅広い利用者の立場から、事業の立ち上げまで可能となります。
資金や収益などもトロンのシステムに集まりやすくなっており、経済的にも繁栄していく可能性のある有望なシステムとなっています。
様々な企業との提携
トロンにおいては、新しい仮想通貨の創出ができることと同時に様々な大規模企業との連携が進展しており、トロンの仮想通貨の経済システムを中心として、市場が大きく進展しており、今後においても、発展が期待されています。
トロンのロードマップ
トロンは、エンターテイメントを含む複数の領域で利用されることを念頭に、10年間にわたる6つの計画をホワイトペーパーに記載しています。
また、トロンの仮想通貨としての透明性を高くすることについてもこの計画のなかで記述されています。ブロックチェーンや仮想通貨の領域では、開発計画をあまり公にしないプロジェクトがあるのに対し、トロンは今後数年の計画を示すロードマップを提供することで差別化を図っているといいます。
しかし一方で、10年という長さのロードマップに対して、実現性があるのかどうか、不安を抱える投資家も存在しています。
Exodus(2017年8月〜2018年12月)
P2Pおよび、分散ストレージテクノロジーでのアップロード、保存、および配布の仕組みにおいて、プラットフォームを自由な活動を促す場であり、かつ信頼されるものにするための技術開発を展開する、その基盤となるマイルストーンです。
トロン財団は2018年1月、トロンブロックチェーンのベータ版「Exodus」を同年3月にローンチすることを発表。メインの機能を全て搭載したとし、UTXOベースのモデルで透明性高くトランザクションを追跡できるようにしたり、秒間1,000超の取引を処理できるようにしたり、安い手数料で送金できる機能が付けられました。
Odyssey(2019年1月〜2020年6月)
当初の予定とは日付がずれていますが、2018年5月にメインネット「Odyssey 2.0」が稼働。トロンは最初、イーサリアムブロックチェーンの規格「ERC-20」基盤で開発されましたが、この段階で独自チェーンへ移行しています。なお、「Odyssey 1.0」はテストネットでした。
Odysseyはその後も開発が継続され、例えば「Odyssey 3.0」ではイーサリアムのスマートコントラクトと互換性を持ち、「Odyssey 3.6.5」では新しいインセンティブメカニズムが導入されています。「Odyssey 3.6.5」を最後に、バージョン4から「Great Voyage」に移りました。
経済的インセンティブ、エンパワーメント、ブロックチェーン技術などについては、コンテンツの制作、流通、普及にむけて正しく、競争力のあるものへと移行させることが、このマイルストーンの狙いでした。
これにより、様々なニーズや普及状況に応じ、システムの拡張が絶えずにできるようにすることを目指していました。
Great Voyage(2020年7月〜2021年7月)
所得の測定、トロン保有者への配当の支払い、サポーターにおける管理に関する主要な問題を解消する狙いがあるマイルストーン。
「トロン4.0」とも称される「Great Voyage」は、当初の予定通り、2020年7月に開始しました。大きな変更点としては、新たなコンセンサスアルゴリズム「TPoS」が導入されています。
これはDPoSに変更を加えたトロン独自のコンセンサスアルゴリズムで、ブロック確認時間を20分の1に短くできたり、安全性を高めたりするメリットがあると発表されました。また他には、クロスチェーンのプロトコルや企業向けのソリューションなどが導入されています。
Apollo(2021年8月〜2023年3月)
トロンシステムにおける各利用者であるプロデューサーにより、独自のトークンが発行できるようになるためには、分散型の取引のためのソリューションが必要となります。
このアップデートでは、分散型の取引システムの機能向上により、独自トークンを発行できるようにするそうです。
Star Trek(2023年4月〜2025年9月)
ゲーム開発者が、トロンシステムにより、自由にオンラインゲームなどのプラットフォームを構築できるようにします。 自律的なゲームの運営が可能となり、市場の動きを予測できるようにします。
Eternity(2025年9月〜2027年9月)
ゲーム開発者は、トロンのプラットフォーム上において自由に設計が可能になり、ゲームの開発のための資金集めや、投資家によるこのゲーム開発などへの投資ができるようにします。
トロンの不安要素
トロンに対しての最大の批判は、ロードマップの盗作疑惑が浮上したことでしょう。このニュースは複数のメディアで大々的に報じられましたが、TRON社長Justin Sun氏は否定しています。
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また、上記したようにロードマップが10年という長さであるため、実現性に対し疑問を呈される場合が多いようです。
トロンを取り扱う仮想通貨取引所
2021年3月17日、暗号資産(仮想通貨)取引所であるビットポイントで、国内で初めてトロンの取り扱いが開始されました。
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