デジタル人民元で「米ドル依存を減らす」
中国人民銀行(PBOC)の雑誌「チャイナファイナンス」に、米ドル依存を減らすため、中国がデジタル人民元(CBDC)を速やかに打ち出すことが必要との記事が掲載されたことが判明。ロイターなどが報道した。
記事は、デジタル通貨を発行・管理する権利は、主権国間の競争の「新たな戦場」になると述べている。人民元を国際化し、世界のドル決済システムへの依存を減らすためには、中国がデジタル通貨を発行する最初の国になる必要があるとした。
また、記事にはPBOCのデジタル通貨研究所が4月時点で、デジタル人民元に関連する130件の特許申請を行っていることにも言及。発行、流通、関連アプリ、及びデジタル人民元をサポートするサプライチェーンに関するものなど広範な発明が対象になっているという。
PBOCは6年前にデジタル人民元の研究開発を開始した。「米ドル依存を減らす」目的と関連しては、先月、中国の鉄鋼セクターがブロックチェーンを活用して、人民元を国際間取引に使用する構想が判明している。
デジタル人民元は主に、小口決済向けに設計されているが、米中関係の悪化に伴う政治リスクを回避したい中国企業がこうした取り組みを行っていることが窺われる。
今年に入り、世界の3つの大手鉱山会社と中国鉄鋼企業との取引で、米ドルを使わない取引が試行され、約15億円規模の人民元による国際決済がブロックチェーンを活用して行われている。
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「米ドルへの脅威とはならない」という論も
中国の人民元は、世界最大の輸出国としてグローバルなサプライチェーンの中で重要な役割を果たしており、デジタル化された場合には、米ドルに匹敵する力を持つようになるのではないかという議論がある。
一方で、コーネル大学教授Eswar Prasadは、中国と貿易面でつながりが強い発展途上国は、デジタル人民元での決済を開始する可能性もあると認めつつ、ドルへの脅威とはならないとした。
国際決済における人民元の割合は依然として低く、また中国が、資本の出入りを制限し、人民銀行が人民元の為替レートを管理していることから、安全な通貨としての信頼を得ることが難しいと指摘。
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また、欧州のシンクタンク「dGen」はCBDCに関するレポートに中で、中国のCBDCがドルを圧倒することはないと予測。そのほか、世界各国における現在の「ドル備蓄量」を考えると、ドルから人民元への移行には、準備金や事務手続きなど手間がかかり、すぐに交替することは難しいと指摘。
各国CBDCがローンチされた暁には、主要国間のCBDCや、民間のステーブルコインなど他のデジタル通貨が優位性を競い合う局面もしばらく続く可能性があると予測した。
しかし、中国のデジタル人民元が脅威と捉えられていることは確かであり、2025年までに欧州連合が独自のCBDCを持たなければ中国のデジタル人民元にユーロが圧倒される可能性もあると懸念を示している。
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