本記事の要旨
- CREAMの下落によって直近のCreamのTVL(ロック額)は減少気味
- Binance Smart Chain版Creamは安くて速く、BTCやXRP、ADAなどの非ERC20通貨にも対応
- 既に一定数のCreamユーザーはEthereum版からBinance Smart Chain版に移り始めている。
Creamの概要
Creamは、DeFiのレンディングプロトコルの一つであり、大手DeFIレンディングCompoundのフォークプロジェクトです。Creamにトークンをデポジットすると金利を稼ぐことができ、逆に金利を支払ってトークンを借りることもできます。
CreamとCompoundの最も大きな違いは、レンディングできる銘柄の多様さです。Compoundは新規トークンのリストに保守的で、ローンチから2年で未だに10銘柄しか対応していません。一方で、Creamはローンチ2ヶ月で既に計20の銘柄に対応しています。
共通点としては、CreamはCompoundのCOMPを通した流動性マイニングに倣って、ガバナンストークンであるCREAMを発行し、流動性提供者にインセンティブを提供している点があげられます。
Compoundとのデータ比較
CreamとDeFi最大手のレンディングサービスであるCompoundをデータを基に比較してみましょう。以下2つのデータは、それぞれの直近90日間の両サービスのTVL(合計ロック資産価値)です。
CompoundのTVLは、7月末からの3ヶ月間で6億~9億ドル(約630~950億円)の範囲を上下しています。9月半ばに一度落ち込んでいますが、それ以降は再び上昇しています。
一方でCreamは8月頭のローンチから上昇を始め、9月半ばにおよそ3.5億ドル(約370億円)のピークを迎えていますが、そこからは下落し続けて現在のTVLは1.5億ドル(約160億円)程度となっています。9月半ば以降に関していえば、Compoundとは対照的なチャートです。
9月半ばにCreamのTVLが急上昇した要因は、CREAMの総供給量の60%がバーンされたためです。その影響でCREAMの価格が急上昇し、流動性提供者の報酬も急増したため、ロック額も増加しました。
以下のCREAM価格データを見ると、バーン後にCREAM価格が急上昇していることがわかります。しかしその後、CREAMの価格下落は止まらず、結果的にTVLも減少しています。
CREAMのバーンは、コミュニティやCREAM保有者へ利益を還元するために行われましたが、その後急激な売り圧が生まれたことで、流動性提供者の報酬を減少させました。結果的に貸し手による流動性は減少してしまっています。
BalancerのフォークDEX、「Cream Swap」
Creamは自動マーケットメイカー(AMM)の一つであるBalancerをフォークし、債権トークンを売買できる二次流通市場Cream Swapの提供も行っています。
Cream Swapは主要なステーブルコインの他に、Creamなどに流動性を提供する代わりに受け取れる債権トークン( CRトークン)などの交換に特化しています。
主に債権トークンを中心に数少ないペアだけを提供しているため、取引高はDEXの中で37位かつ直近24時間で1,000万円程度(*執筆時点:2020/10/16)とそこまで大きくありません。
Binance Smart Chainへの進出
9月11日、CreamはBinance Smart Chain(*以下BSC)上でのローンチを開始しました。BSCは、仮想通貨取引所BinanceがローンチしたEthereum互換の独自ブロックチェーンです。BinanceCEOのCZによれば、BSCの手数料はEthereumの35倍安いと報告されています。
BSC版Creamの長所は、銘柄の多様さと速さ・安さにあります。リストされているトークンは、BTCやXRP、DOT、ADAなどの非ERC20の仮想通貨(*BEP2規格)のレンディングにも対応しています。手数料も非常に安く、また遅延の心配もありません。
※BSCが高性能である理由は、Ethereumとは異なり分散性を犠牲にしているからだという指摘もあります。BSCの合意形成アルゴリズムはProof of Staked Authorityモデルで、わずか21のノードしかバリデータになることはできません。
Creamによれば、EthereumとBSCの利用度データは以下の通りです。現在はまだEthereum上のCreamの方が規模が大きいですが、BSC上のCreamとその他のエコシステムの発展次第では、BSC版のCreamがEthereum版を追い抜くときがくるかもしれません。