はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

なぜブロックチェーン分析では一度サービスに入った資金をそれ以上追跡できないのか|Chainalysis寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

なぜブロックチェーン分析では一度サービスに入った資金をそれ以上追跡できないのか

Chainalysis Reactorなどのツールがあれば、暗号資産(仮想通貨)のアドレス間の資金の流れを追うことが容易になります。ある2者間のトランザクションを分析するだけでなく、盗難資金や違法な活動に関連する資金がどこに流れているのかを追跡するのにも大きな効果を発揮します。

犯罪者は捜査官を惑わすために、複数のアドレスを使って高速に資金を移動することが多いものの、ツールがあれば対抗できます。

取引所のハッキングにより盗まれた資金が2つの中間ウォレットを介し別の取引所に流れたという例を、以下のReactorグラフで示します。

1つ目の中間ウォレットから2つ目の中間ウォレット、あるいは2つ目の中間ウォレット(Intermediary wallet 2)から取引所(Exchange 2)の入金アドレスへの資金の流れを追うのは難しくありません。Reactorで、ウォレットのSending Exposure(送金方向のつながり)を見て、気になるサービスカテゴリをクリックすれば、具体的にどの送金相手に資金が流れたのかを確認できます。

以下の画像は、Intermediary wallet 2からExchange 2への資金の流れを追うときの例です。

右側のSending Exposureのチャートのうち、”exchange”とラベルが付けられている部分をクリックすれば、特定の取引所が表示され、どの入金アドレスに送金されたのかがわかります。

しかし、その資金がExchange 2に入った後どうなったのかは同じ手順では知ることができません。以下の画像は、犯人のExchange 2の入金アドレスにおけるSending Exposureのチャートを示します。

このSending Exposureには何も表示されていませんがどういうことなのでしょうか?

これは、あえてサービスの入金アドレスの先は追跡できないことを示しています。サービスが内部的にブロックチェーンとは別の帳簿でユーザの残高を管理しており、一度サービスに入った後の資金の流れはユーザから切り離されたものとなります。そのため、入金アドレスの先をブロックチェーン分析で追うことは意味がないのです。

以下にて、このことと、サービスに入った後の資金の行方を調査するにはどうすればよいのかを詳説します。なお、ここでの「サービス」とは、ユーザに代って資金を保持する多数のアドレスを持つエンティティを指し、取引所や決済サービスプロバイダ、ダークネットマーケットなどがその例です。

サービスへの入金はサービスからの出金に紐づかない

まずは基本的なことに触れておきましょう。ブロックチェーン分析が可能なのは、ほとんどの暗号資産のトランザクションは、誰でも参照できる永続的な帳簿であるブロックチェーンに公開情報として、記録されているからです。

ブロックチェーンを見れば、擬似的な匿名性はあるものの、アドレス間でいくらの資金が移転されたかが分かります。上図のように、Reactorなどのブロックチェーン分析ツールでは、アドレスがどのサービスやエンティティのものかが識別されており、トランザクションも視覚的に分かりやすく図示されます。

ただし、ここで重要なポイントは、ブロックチェーン分析ツールで捉えられるのは、ブロックチェーン自体に記録されたアドレス間の動きだけということです。

あるユーザに紐づく入金アドレスが分かったとしても、取引所などのサービスが所有するアドレスへ送金された資金を追うのは困難です。ユーザがサービスの入金アドレスに送金したら、その資金はそのアドレスにずっと残るわけではありません。

サービスは必要に応じて内部的にこの資金をプールし、他のユーザの資金と混ぜることがあります。セキュリティ上の理由で、ユーザから預かった資金をインターネットから切り離されたコールドウォレットに移すことなどがその例です。

実際、法定通貨の世界でも同じようなことが言えます。つまり、20ドル札をATMに預けた後、後日20ドル札を引き出したとしても、全く同じお札が帰ってくるわけではない(あくまでプールされているお札が融通されて返ってくる)ということです。

ブロックチェーン自体は、そのようなサービス都合の内部的な資金の動きが、我々が認知する通常のトランザクションとは違うという点は関知しません。ブロックチェーンでは、サービス内部のトランザクションも、あくまで通常のトランザクションと同じように記録されます。

したがって、一度サービスに入金された資金をブロックチェーン上で追うことは無意味と言えます。入金アドレスのユーザは、もはや入金後の資金の動きには関与しないのです。

つまり、入金や出金がどのユーザに紐づくのかを把握しているのは、ユーザではなくそのようなアドレスを管理する取引所のみであり、その管理は公開されたブロックチェーンとは全く別の帳簿で行われているということです。このような情報は、ブロックチェーンや分析ツールでは見えません。

このようなことを知らずにサービス入金後の資金を追ってしまうことを防ぐために、Reactorでは入金アドレスの先のトランザクションはあえて表示させないようにしているのです。

捜査には取引所サービスの協力が不可欠

サービスに入った資金の追跡ができないことは捜査官にとってやっかいですが、そのような場合でも打ち手が無いわけではありません。その特定のサービスに捜査の協力を求め、入金後に特定ユーザがどこに出金したのかを聞いたり、必要に応じて召喚状と共に詳細情報を照会すれば良いのです。

このようなプロセスの円滑化に関連し、取引所への照会に関するウェビナーもありますので、是非ご視聴ください。


CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
11/15 土曜日
13:55
続落するイーサリアム、長期保有者が1日4.5万ETH超を売却=グラスノード
グラスノードによると、イーサリアムの3年から10年保有者が1日あたり平均4万5000ETH超を売却している。イーサリアム現物ETFも13日に2億6000万ドルの純流出を記録し売圧を高めている。
13:20
リミックスポイント決算発表、仮想通貨評価益で売上高が大幅増加
リミックスポイントが2025年4~9月期決算を発表した。仮想通貨評価益で売上高が大幅増加している。同社はビットコイン、イーサリアムなどの仮想通貨を財務資産として蓄積している。
13:00
Visaアジア太平洋地域デジタル通貨責任者、ステーブルコインの展望を語る|CoinPostインタビュー
Visaアジア太平洋地域デジタル通貨責任者ニシント・サンガヴィ氏がCoinPostの独占インタビューに応じ、ステーブルコイン決済戦略の拡大、CBDCとの共存、米国ジーニアス法の影響について詳しく語った。4つのステーブルコインと4つのブロックチェーンをサポートし、2億2,500万ドル超の決済を実現。今後5年間のアジア太平洋地域におけるデジタル通貨の展望と、Visaが果たす役割について解説。
11:15
テクノロジー大手アリババが預金トークン決済を開発 中国当局のステーブルコイン懸念に対処か
中国アリババが預金トークン決済システムを開発している。当局によるステーブルコイン規制を回避することも背景とみられる。AI活用サービスも発表した。
10:30
ビットコイン急落、45日ルール通過とFOMC利下げ見送り観測で売り圧力が最大化|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは足元で強い売り圧力に晒されているが、ヘッジファンドの45日ルール通過により解約売りの終了が期待される。ビットコイン長期保有者が直近1カ月で12兆円相当のBTCを売却したことは心理を悪化させていた。
09:50
トランプ一族関連のアメリカン・ビットコイン、売上高99億円に増加 決算発表 
トランプ一族の仮想通貨マイニング企業「アメリカン・ビットコイン」が2025年7~9月期決算を発表した。前年同期比で黒字転換し、ビットコイン保有量は4,090BTCに到達している。
09:35
ジャック・ドーシーのCash App、ステーブルコイン決済機能を導入
決済アプリのキャッシュアップがステーブルコインの送受信機能を含む11の新機能を発表した。ライトニングネットワークを使用したビットコイン決済機能も拡充している。
08:50
ソニー銀行の米銀免許申請、通貨監督庁にICBAが否認を要求
ソニー銀行が米国で信託銀行の国家免許を申請したことについて、米組織ICBAが強く反対すると表明。通貨監督庁に書簡を送付して反対理由を説明し、ソニー銀行の申請を認可しないように要求した。
07:45
バイナンス、ブラックロックのトークン化ファンド「BUIDL」を取引担保として受け入れ
仮想通貨取引所バイナンスがブラックロックの「BUIDL」を取引所外担保として統合した。BUIDLはBNBチェーンで新シェアクラスも立ち上げる。
06:50
ビットマイン、45億円相当のイーサリアムを追加購入 新CEOにHSBC元幹部を任命
ビットマインが3000万ドル相当の仮想通貨イーサリアムを追加購入した。同社は新CEOにHSBCアジアTMT投資銀行部門の元責任者を任命した。
06:25
ビットコイン長期保有者が1カ月で12兆円相当BTCを売却、初期投資家も2400BTCを取引所へ送金
ビットコインの長期保有者が過去1カ月で約81万5,000BTCを売却し、2024年1月以来の高水準となった。初期保有者のオーウェン・ガンデン氏も2400BTC以上を売却している。
05:50
ストラテジーのセイラー会長、6900億円相当のビットコイン売却の噂を否定
ストラテジーのマイケル・セイラー会長が47000BTCの売却憶測を否定した。オンチェーン上の動きは保管業者の入れ替えによるもので、実際に購入ペースを加速させていると説明。
11/14 金曜日
21:20
CourtYard(コートヤード)でトレカをNFT化|使い方を初心者向けに徹底解説
トレーディングカードをNFT化して取引できるCourtYard(コートヤード)の使い方を解説。アカウント開設からPolygon上での取引方法、ガス代準備、リスクまで初心者向けに図解で詳しく紹介します。
21:00
ビットコインウォレットのおすすめは?種類・選び方・アドレス作成手順まで解説
ビットコインウォレットの種類や違い、安全な選び方を徹底解説。ハードウェア・ソフトウェアの比較からアドレス作成、セキュリティ対策まで初心者にもわかりやすく紹介します。
17:19
米ビットコイン現物ETF、過去2番目の規模の純流出 リスクオフが加速
11月13日、ビットコイン現物ETFは8.7億ドル(約1,340億円)の純流出を記録し、過去2番目の規模に。イーサリアムETFも3日連続で流出。FRB当局者の慎重発言を受け、仮想通貨と米国株が同時に下落。専門家は健全な調整との見方も。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧