米国政府内で認識の違い
米国証券取引委員会(SEC)で暗号資産(仮想通貨)擁護派の「クリプト・ママ」として知られるHester Peirceコミッショナーが、SECの規制についてインタビューで異議を唱えた。
このForkast.Newsのインタビューは、SECがリップル社を提訴して以来、Peirce氏が公的な場で行う初めての発言となる。
Peirce氏は、現在進行中の訴訟を考慮してリップル社の件について具体的にコメントすることは避けたが、規制のあり方について意見を述べた。
また、今回のPeirce氏の発言はSECの公式の見解やその他コミッショナーの意見を代弁するものでもなく、あくまでPeirce氏自身の個人的な見解である点は留意しておきたい。
SECは、リップル社のXRPを未登録有価証券とみなし、この売却を通じて13億ドル(約1350億円)以上の資金を調達したとの疑惑で訴訟を起こしている。
「明確なガイドラインが必要」
Peirce氏は、それぞれの政府機関が別個のルールに従っている現状に触れ、明確な規制が必要であるとして次のように述べた。
デジタル資産だけでなく「投資契約」と呼ばれる非常に解釈が自由にできてしまうものに関わる広範な問題だと考えている。
「投資契約」は、おおまかにいえば企業に金銭を投資し、投資家がその企業の仕事によって利益が得られることを合理的に期待すること。SECはハウェイテスト(Howey Test)によって、有価証券に当てはまるかどうかを定義している。
Peirceによると、「投資契約」とは、証券のような側面を持ち、側面のように動作するものの、株式や債券の定義には当てはまらないようなものを捉えるために設計されている。そこで、ある別の政府機関が証券ではないと認識しても、SECが証券と判断するようなことが起きてしまうという。
現在の状況では、何かが証券であるか否かを判断することは困難であり、より明確なガイドラインが必要だとPeirce氏は述べた。基準が曖昧であるため有価証券であることの判断は恣意的になってしまうという以前からの指摘を繰り返した格好だ。
関連:仮想通貨が「証券」に該当するかを判定するHowey(ハウェイ)テストとは
「法的執行措置は正しい方法ではない」
リップル社CEOのGarlinghouse氏は、Twitter上で訴訟について解説、SECとの和解の可能性についても言及した。
Q: Why didn’t Ripple settle with the SEC?
— Brad Garlinghouse (@bgarlinghouse) January 7, 2021
Can’t get into specifics, but know we tried – and will continue to try w/ the new administration – to resolve this in a way so the XRP community can continue innovating, consumers are protected and orderly markets are preserved. 2/10
「SECと和解しないのか?」という質問について「現時点では具体的な明言はできないがXRPコミュニティが引き続き革新性を追い求められるような、また消費者が保護され、秩序のある市場が確保されるような方法で、この件を解決できるように、バイデン新政権にも働きかけるつもりだ」と説明している。
Peirce氏は和解については「SECの訴訟が和解で終わるケースも多いが、時には訴訟が実際に法廷で展開されることもある」とコメントした。
またPeirce氏は「法的施行措置は明確な態度を示す方法の一つだが、それは私の観点からは正しい方法ではない」 「事前に明確なガイドラインを提供したい。そうすれば、人々は合法であるように何かをする方法を理解することができる」とも話した。
SECが有価証券についての明確な基準を示すことなく、突然法的な措置に訴えたことへ間接的に批判を示していることも窺わせる。
また、2021年の仮想通貨規制の方向性については、バイデン大統領の下で誰が長官に選ばれるかに大きく依存するとした。
今後の訴訟スケジュール
リップル社訴訟のスケジュールは、まず2月22日に裁判の前段階となる審理前会議が行われることが決定している。SECとリップル社は2月15日までに、「原告および被告の事実および法的根拠を含む事件の簡単な説明」、「考えられる動議」、「和解への見通し」を含む書類を提出する見込みだ。
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