- Howeyテストとは
- 特定の取引が「投資契約」という証券取引の定義の一つに該当するかどうかを判定するテスト。1946年のHowey社訴訟事件の際に裁判所が「投資契約」の判断基準として定めた。いくつかのICOプロジェクトがこのテストスコアを計算して、トークンの「証券性」を検証している。
- SECとは
- 米証券取引委員会(SEC)は、インサイダー取引や相場操縦など不公正取引に対する「処分権限」を有しており、司法に準じる権限を持った強力な独立機関である。
はじめに
「証券」というと、まず株式や投資信託をイメージしますが、実際には様々な形態の金融資産が証券に該当します。
近年は、仮想通貨もこの「証券」に該当するかどうかについて多くの議論がなされています。
仮想通貨が「証券に該当する」と判断された場合、その通貨を発行するには政府の承認が必要になり、自由な発行が困難になります。
このことは、運営者や投資家が証券のルールに従わなければならないというデメリットがある一方で、規制によって投資家が保護されるというメリットもあります。
いずれにせよ、仮想通貨の市況に影響を与える重要事項であることに違いありません。
Howeyテストとは?
どのような金融資産が証券に該当するかを判断する規定の一つに「Howeyテスト」があります。
Howeyテストとは、特定の取引が「投資契約」という証券取引の定義の一つに該当するかどうかを判定するテストです。
このテストは、SECのW. J. Howey社に対する訴訟事件に由来しています。
米国で果汁園を経営していたHowey社の土地のリースバックを「投資契約」と見なしたSECは、Howey社に差し止め命令を出しました。
そして、この取引が「投資契約」に該当するかを最高裁判所が見極める基準として初めて導入されたものが後のHoweyテストとなりました。
ただし、このテストはあくまでも一つの判断基準として用いるものであり、このテスト結果が必ずしも適用されるわけではありません。
ブロックチェーントークンに関するHoweyテストの詳細解説
Howeyテストには、特定のブロックチェーントークンが「証券」であるかどうかを判定するテストもあり、いくつかのICOプロジェクトはこのテスト結果を公表しています。
このテストにおける「投資契約」は、次の3つの要素から成り立っています。
- 資金を集めているか
- 共同事業であるか
- 収益性があるか
このテストでは、ブロックチェーントークンがそれぞれの要素にどれだけ当てはまっているかを数値化し、トークンが証券であるかどうかを判定します。
以下では、Howeyテストの得点がどのように決定するのかを解説します。
「要素1. 資金を集めているか」の得点計算
Q1. 新規発行トークンが有料で販売されるか?
- Q1. 新規発行トークンが有料で販売されるか?
- →YES(トークンセールなど)…100pt
- →NO(マイニング、エアドロップなど)…0pt
法定通貨や(ビットコイン、イーサリアムなどの)仮想通貨を通じて新規トークンを販売している場合、このトークンには「出資がある」と判断されます。
一方、トークンが無料配布されたり、マイニングをする必要がある場合、そのトークンには「出資がない」と判定されます。
Q1の得点が、「要素1. 資金を集めているか」の得点になります。
「要素2. 共同事業であるか」の得点計算
Q2. トークンセールのタイミングはいつか?
- Q2. トークンセールのタイミングはいつか?
- →ネットワーク配備前…70pt
- →ネットワークテスト時…60pt
- →ネットワーク稼働時…50pt
- →トークンセールが行われない…0pt
トークンセールが行われる場合、トークンセール時にどのくらいネットワークの開発が進んでいるかが重要になります。
例えば、トークンセール時にまだネットワークが配備されていない場合、トークン購入者は即座にネットワークに参加できず、ネットワークの開発者に完全に依存することになります。
従って、このようなケースでは、トークンがより「証券」の性質を持つことになります。
一方、トークンセール時にネットワークが完成している場合、トークン保有者の依存度は弱くなります。
Q3. トークン保有者が利益を得るために何をする必要があるか?
- Q3. トークン保有者が利益を得るために何をする必要があるか?
- →いかなる行動をせずとも利益が均等に配分される…25pt
- →作業によって得られる利益が変わる…マイナス20pt
トークン保有者が何らかの行動をせずとも、ネットワークの利益が平等に(またはトークン保有量に応じて)配分される時、このトークンは「証券」の性質を持ちます。
一方、トークン保有者の努力によって利益の配分量が大きく変わる場合、このトークンの証券性は弱いです。
Q2とQ3のスコアの合計が、「要素2. 共同事業であるか」の得点になります。
「要素3. 収益性があるか」の得点計算
Q4. トークンがどのような機能を持つか?
- Q4. トークンがどのような機能を持つか?
- →従来の証券投資家としての権利が与えられている…100pt
- →トークン保有者が債権者となっている…100pt
- →ネットワーク上での機能を持たない…100pt
- →トークン保有者だけが利用可能な機能を持つ…0pt
トークン保有者に証券保有者と同様の機能が与えられている場合、そのトークンは「証券」と定義されます。
また、トークン自体に機能が一切ない場合、そのトークンは投機目的で利用される可能性が高いため、「証券」の性質が当てはまります。
一方、トークン保有者がトークンから機能的恩恵を受けられる場合、「証券」の性質は弱いです。
Q5. トークンの利益がブロックチェーン外での行動に依存しているか?
- Q5. トークンの利益がブロックチェーン外での行動に依存しているか?
- →YES(トークン価値がブロックチェーン外の第三者の信頼度に依存)…80pt
- →NO(トークンの価値が第三者の努力にあまり依存しない)…0pt
トークン内に全ての機能が含まれていて、ネットワークがプログラムに基づいて動く場合、このようなネットワークは第三者に依存しにくいものになります。
一方、ネットワークを運営するために、第三者の行動が必要不可欠であるような場合、そのトークンの価値は第三者の信頼度に依存することになります。
このようなトークンは、投機による買いが起こりやすく、「証券」の性質があります。
Q6. トークンセールのタイミングはいつか?
- Q6. トークンセールのタイミングはいつか?
- →ネットワーク配備前..20pt
- →ネットワークテスト時…10pt
- →ネットワーク稼働時…0pt
- →トークンセールが行われない…0pt
この質問はQ2の得点配分をスライドさせたものになります。
Q7. トークン保有者は決定権を持つか?
- Q7. トークン保有者は決定権を持つか?
- →YES(開発者チームの資金利用に対して決定権を持つ)…マイナス20pt
- →YES(ネットワークの重要な決定に対して決定権を持つ)…マイナス10pt
- →NO(第三者の意思決定によってネットワークが運営される)…0pt
ネットワーク上の重要な意思決定の権利がトークン保有者に十分に与えられている場合、第三者の意思決定への依存度は弱まります。
ただし、トークン保有者の意思決定は、プログラムされた投票によるものである必要があります。
Q8. トークンの収益性を強調しているか?
- Q8. トークンの収益性を強調しているか?
- →YES(「ICO」「投資」などの用語が含まれている)…50pt
- →NO(ネットワークのアクセス権としてトークンを販売する)…0pt
- →NO(トークン保有者が利益を得られる可能性はない)…マイナス100pt
トークンセール時などに、収益性を謳っているトークンは「証券」の性質が強くなります。
トークンセールの広告などに「ICO」や「リターン」という言葉がある場合、そのトークンは「収益性を謳っている」と考えられます。
一方、トークンの利用目的がネットワークへのアクセス権である場合、「証券」の性質は弱いと言えます。
Q4~Q8のスコアの合計が、「要素2. 共同事業であるか」の得点になります。
要素1,2,3の最小値を最終得点とする
最後に、要素1,2,3のスコアのうち、最小のスコアを総合得点として採用します。
下記の得点表に基づいて、トークンがどれくらい「証券」に類似しているかを判定できます。
- 0pt以下…全く類似していない
- 1~33pt…類似していない
- 34~66pt…どちらとも言えない
- 67~99pt…類似している
- 100pt以上…かなり類似している
まとめ
Howeyテストでは、数値化したスコアに基づいて、ブロックチェーントークンが「証券」であるかどうかを判定できるという利点があります。
ただし、このテストの結果はあくまでも目安であり、必ずしも裁判所の判断と一致するとは限らないことに注意する必要があります。
しかしながら、いくつかのICOは実際にHoweyテストのスコアを公表しており、トークンの証券性を判断する有効な基準になっていることには違いありません。