マイニング産業の需給不均衡
暗号資産(仮想通貨)デリバティブ大手取引所のBybitは、ビットコインのマイニング産業について分析したレポートを公表した。
マイニング産業は、ビットコイン(BTC)の価格上昇に伴い、高い収益をもたらす産業として注目を集めている。その一方で、急激な需要増加はハードウェアの高騰を招いており、コストの削減は深刻な問題となっている。
注目すべき問題の一つは、マイニング産業に対する需要の変動が激しいことにある。レポートによると、台湾のTSMCや韓国のSamsungといった半導体製造企業は、需要が急激に減少するリスクに備えるため、マイニング産業に供給の多くを割くことに対して慎重な姿勢を取っているという。マイニング産業以外にも、eSports業界などから多くの需要が見込めるからだ。
損益分岐点は
レポートでは、ビットコインのマイニングに係るコストを試算している。マイニングに係るコストは、最低限必要な「Net Direct Cash Cost(C1)」に加え、金利などの間接コストを含めた「C3」数値を参照している。
C1はいわゆる静態コストであり、マイニングがゼロでもコストが発生する。そのため、固定費が上昇したとしても、初期費用などの回収のためにマイナーは稼働を続けざるを得ない状況にある。
試算によると、現在主流のマイニング機器は、1BTC当たりの採掘コストが4万ドルを超える可能性があると分析している(電気代を$0.06/kWhと設定した場合)。
電気代が$ 0.09 / kWhになった場合のコスト計算では、収益性はさらに低下する。
それでもビットコイン価格の高騰により、安価な時にマイニング機器を購入したマイナーは利益が出ている。例えば、ビットメインのS19は2020年後半のビットコイン上昇以前では、中古市場で4,500ドル以下で取引されていたという。
また、古い機器でも利益を挙げることが可能になっているため、AntminerS9などの旧世代の機器なども需要が高まり、中古市場の価格高騰も続くと考えられている。
レポートではこういった状況を踏まえ、現在の半導体不足は2022年まで継続する可能性があると指摘している。