英中銀はCBDC導入に慎重姿勢、民間含むステーブルコイン決済にも銀行水準ルール提案

デジタル通貨導入にはさらなる検討が必要

英イングランド銀行は、6月7日に発表した審議文書(ディスカッションペーパー:DP)「新しい形態のデジタルマネー」で、中央銀行デジタル通貨(CBDC)にはコストや機能性の面で多くのメリットをもたらす可能性がある反面、その需要や経済への影響には「大きな不安要素」があるため、さらなる検討が必要だと慎重な姿勢を見せた。

イングランド銀行は、公的に発行されるCBDCと、民間企業が提供するステーブルコインの両方を「新しい形態のデジタル・マネー」と定義し、このDPでは一貫してリテール(一般消費者対象)の利用に焦点を当てている。

このDPの目的は、CBDCとステーブルコインの役割や影響などについて、イングランド銀行の現在の考え方を詳細に示し、金融機関や決済業界関係者をはじめ、テクノロジー企業、有識者、そして広く一般からの意見を求め、議論を高めていくためとしている。

アンドリュー・ベイリー総裁は、「決済手段としてのステーブルコインの見通しと、新たに提案されているCBDCは、様々な問題を提起している。」と述べ、新しいデジタル通貨の将来に関して、中央銀行、政府、そして社会全体で、厳しくかつ適切な質問をすることが不可欠だと強調した。

ステーブルコイン決済の規制

英国財務省は、ステーブルコインを2009年の銀行法の規制対象とすることを検討しており、イングランド銀行(BoE)は、そのコンサルテーションの枠組みに基づいた提案をしているという。

同行は、ステーブルコインは決済と蓄財(価値の保存)の両方の機能を提供する可能性があるため、その安全な運用のためには、両機能をサポートする明確な規制作りが必要だと指摘した。その中には、銀行モデルや銀行に準じた要件をステーブルコインに適用するものが含まれている。

「通貨として使用されるステーブルコインは、商業銀行が提供する銀行預金として知られる通貨と同等の基準を満たすべきである。」とBoEは主張。ステーブルコインの発行者は、法的要件と資本要件、また流動性要件を満たし、さらに預金保険を提供する必要があるとした。

商業銀行預金の20%がデジタル通貨に

BoEは利便性や信頼性、安全性などの要素が、ステーブルコインの需要を決定するのに大きな役割を果たすと述べている。

デジタル通貨の需要を、より具体的に示したモデルで、英国における個人預金の20%が「新たな形態のデジタルマネー」になると設定。その場合、銀行の資金調達コストが押し上げられ、銀行金利は約0.2%上昇すると予測する一方、一部の消費者にとっては、より安価な資金源を提供する可能性があるとした。そして、全体で見ると、貸出金利及び信用供与への影響は、比較的小さいだろうと結論づけている。

しかし、このような例は不確実であり、実際の結果とは異なることも大いに考えられるため、新たなデジタル通貨導入後に、その金融システムへの影響を評価できるような仕組みを検討したいと、BoEは述べている。

商業銀行からの預金移動が始まって初めて、広範な影響が徐々に明らかになることから、システムの「移行期」には、BoEをはじめとする金融当局が「秩序ある適応」を促すため、預金移動の制限を設ける可能性を検討していることにも言及した。

著者:幸田直子
参考:イングランド銀行

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