「なぜビットコインの未来に賭けるのか?」数百億円規模の購入を続ける米上場企業の本音に迫る

 

マイクロストラテジーの企業戦略

新たに約550億円を資金調達した米ナスダック上場企業のマイクロストラテジーは、さらに最大1,100億円(10億ドル)相当の株式を発行し、仮想通貨(暗号資産)の買い増しを検討する。ビットコインの大口保有者(クジラ)でありながら、上場企業として「ヘビーベット(過剰リスク)」を取っていると懸念する声も大きい。

「なぜ手持ち保有資金によるビットコインの大量購入に留まらず、3度に渡る債券発行や株の新規発行といったリスクを含まれる資金調達をしてまで、ビットコインの保有量増加(現在計92,079 BTC)にこだわっているのか?」セイラーCEO自ら、CNBCの金融番組でその理由について明かした。

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セイラーCEOの思考プロセス

セイラー氏はまず、会社の状況を以下のように紹介した。

ビットコインは誰でもモニタリングできる「デジタル財産/デジタルゴールド」だ。この性質による影響は非常に大きい。プロの投資家や資産家だけでなく、その気になれば誰でも簡単に、億単位の金額でアクセスできる。

そこで、マイクロストラテジー社としては(2つの)戦略を持っている。

1つはビットコインを調達して、長期で保有すること。弊社は、米国で初めてビットコインの購入を公表した上場企業であり、初めて転換社債および優先債を販売してビットコインを購入した企業でもあるが、「シェルフ・オファーリング」で10億ドルの資金を確保し、今後ビットコインの購入、あるいは他の一般出費、債務清算に回す可能性がある。株式の買い戻しプログラム(200億円以上の予備資金)も設けているため、必要な時は市場から株式を買い戻せるし、会社の財務流動性は非常に高い。

シェルフ・オファーリング

シェルフ・オファリング(シェルフ登録とも)は、発行企業が一度にすべての株式を売却することなく、新しい株式を登録できるSECの規定。発売日より前に準備される新しい株式発行のSECへの登録であり、発行企業が市場の状況が最も良好になるまで株式を保有すること(棚上げ)ができる。

発行企業は株式を再登録したりペナルティが発生したりせずに、3年間にわたって棚上げられた一部を販売できる。この方法によって、適切な時期まで株式を保有することにより、会社は何らかの金融危機が発生した場合に使用できるリソースを常に確保しているメリットがある。

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この点について取り沙汰されるのは「ビットコインの大量保有で本業に支障はないのか、(株式保有者などの)ステークホルダーはそれを望んでいるのか?」という点だが、セイラー氏は以下のように回答している。

現在は、最も良いタイミングだ。20年8月にビットコインを購入するまで、MSTR(マイクロストラテジー)の株価は約120ドルで、割合としては1口=60ドルの現金資産が反映された。

しかし、バランスシートの運用方法を変え、企業向けのソフトウェアを販売しながら、ビットコインを入手するという戦略はこれまでも成功している。

21年の2Q(第2四半期)は、これまで10年間で最も売り上げの良い四半期となっており、コアビジネスは10%ほど成長し、ビットコイン戦略を合わせてシェアホルダーにも大きな利益をもたらした。株主も喜んでいるはずだ。(現時点でMSTRの株価は630ドル)

インフレヘッジとしての代替資産性

遡れば、マイクロストラテジー社が20年8月にビットコインを初めて購入したのは、新型コロナウイルスがパンデミックを起こす中、前代未聞の金融政策(量的緩和:QE4)の副作用による今後のインフレリスクをヘッジするためであり、同社は初回分で270億円相当のBTCを購入している。

今回、番組のキャスターは「有識者らは、現実世界のインフレが12%にまで膨らみ始めたと指摘している」としてセイラー氏に見解を尋ね、以下のように回答を得ている。

過去1年間で、米国内のインフレーションは実際に発生している。

ビットコインの価値は3倍以上に上昇したが、(これまで代表的な代替資産とされてきた)ゴールドはわずか+7%だったことからも、インフレヘッジとしてはビットコインの方が優れていると考えている。最近では、ポール・チューダー・ジョーンズ氏などのビットコイン初期機関投資家が、ビットコインへのアロケーションを倍増すると言及している。

ーセイラー氏

直近では、ヘッジファンド業界の大物として知られるジョーンズ氏が、ビットコインがポートフォリオの分散化に適していると言及。個人資産の5%をBTCに充てる可能性があることを示唆していた。

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さらに、資産運用の分散化の可能性について聞かれたセイラー氏は、「ビットコインは最も支配的なデジタル財産であり、テザーなどのステーブルコインはサイバー空間のマネーマーケットになろうとするだろう」「イーサリアムは、分散化のデジタルアプリケーションとしてJPモルガンなどの既存金融体系を電子化しようとしている。この過程で、より多くの人がそれらの役割を理解しつつある」と指摘。それぞれの存在価値について見解を述べた。

著者:菊谷ルイス

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