仮想通貨業界を調査する
Maxine Waters米下院議員(民主党:カリフォルニア州選出)は6月15日、下院金融サービス委員会のフィンテック・タスクフォースの公聴会で、暗号資産(仮想通貨)に焦点を当てた、下院民主党議員から成る作業部会を結成したと発表した。
同委員会の委員長を務めるWaters議員は、仮想通貨が急速に成長を続けていることから、「民主党議員で作業部会を組織し、規制当局および専門家の協力の下、不明な部分が多く、最小限に規制された業界を深く掘り下げる」と述べた。
なお、作業部会に参加する議員の詳細は明らかになっていない。
Waters委員長は仮想通貨懐疑派として知られており、2019年に同委員会で行われたフェイスブックの仮想通貨リブラ(現在はDiemに改名)に対する公聴会でも、厳しく批判した経緯がある。
また、米通貨監督庁(OCC)の仮想通貨推進派、Brian Brooks前通貨監督官代理の一連の仮想通貨規制ガイドラインには、反対する立場を表明していた。Brooks氏の任期中には米国初の仮想通貨銀行が誕生した経緯がある。
デジタルドルの公聴会
Waters委員長の発表後、フィンテック・タスクフォース主催の公聴会では、議題である「ドルのデジタル化」についての議論が行われた。「中央銀行デジタル通貨(CBDC)の技術的インフラ、プライバシー、金融包摂への影響の調査」に焦点をあてた公聴会では、5人の技術および法律関連の専門家が証言を行った。
現金を補完し、金融包摂や金融システムの安全性の向上などの問題を解決するために、米国が官民共同でCBDCの研究開発を行うべきだという意見が述べられた。
また、CBDCの発行は、社会的、法的にも大きな影響をもつため、幅広い層からの支持が必要であると同時に、市場へ対応が可能な、安全性と効率性を保証する強固な技術に支えられていることが必須だと指摘された。このような複雑な前提条件を満たしているのが中央銀行が発行する現金であり、CBDCのモデルとして最適であるとの意見も発表された。
現金の特性として、匿名性があるが、CBDCの導入で問題視される重要な点の一つが、プライバシーに関することだろう。
法律の専門家であるRohan Grey氏は、次のように証言している。
取引上のプライバシーと匿名性の権利は、政治的自由と民主主義の根幹を成すものであり、デジタル社会に移行しても放棄すべきではない。むしろ、政策立案者は『害を及ぼさない』という原則を採用し、『通貨の中立性』を維持することに尽力すべきである。
また、MIT(マサチューセッツ工科大学)デジタル通貨イニシアチブ主任のNeha Narula博士は、「目標に対する合意形成」の重要性を説き、以下のような提案を行った。
さまざまな利害関係者の間で合意を形成し、かつ最良のアイデアが花開くような中立的な環境を作るためには、オープンソースソフトウェアの開発原理を活用すべきである。
CBDCとは
中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)とは、その名の通り、日銀のような既存の国家の金融機関が作成・管理する通貨。今までの通貨との違いを挙げると、紙幣や硬貨というアナログな貨幣の代わりに、すべてデジタルなものに置き換えられている。
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上院公聴会との対比
下院の公聴会に先立ち、先週、上院の銀行委員会の公聴会でもCBDCの可能性について議論が行われた。
その中で、民主党のElizabeth Warren議員は、仮想通貨を酷評し、政府としても消費者保護、環境問題、ボラティリティや違法行為などの課題に、正面から向き合うべきだと述べた。そして、中央銀行が発行するCBDCが、金融包摂や金融システムの効率化、また安全性の面からも、将来性が高いと評した。
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一方、下院の公聴会で前出のNarula博士は、「仮想通貨とCBDCは、互いに排他的なものではなく、共存していくもの」との考えを表明。ソフトウェアプログラムと分散型ネットワークにより発行される仮想通貨の仕組みや、迅速な金融イノベーションを促進するプラットフォームとしての機能は、多くの人々の支持を集めているとした。
さらに、同氏はCBDCの必要条件としてプライバシー保護を挙げる中で、仮想通貨、特にビットコインで発展したイノベーションこそが、CBDCのプライバシー保護の設計に直接、恩恵を授けることになるだろうと主張した。