はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

秘匿計算ソリューション Conclaveとは SBI R3 Japan寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

~秘匿計算技術の比較~

目次
  1. Confidential Computingとは
  2. R3 Conclaveとは
  3. Conclaveの他のConfidential Computing SDKに対する優位性
  4. プライバシー保護を確立する現在のアプローチとの違い
  5. TEE(Trusted Execution Environment)の比較
  6. Confidential Computingに共通する2つのアプローチ
  7. 最後に

Confidential Computingとは

―現在のストレージにストアされているデータ、ネットワーク上のデータは暗号化されています。しかし、メモリ上あるいは実行されているデータは暗号化されないので、アプリケーションを実行している管理者にはデータが見えてしまいます。

このことはクラウドアプリケーションにおいて、クラウド管理者がデータにアクセスできることを意味しています。

クラウド管理者やサービスプロバイダーから自分たちのデータを守る、秘匿するにはどうすればいいでしょうか。ハードウェアのソリューションとして、Intel SGXのようなオペレータから見えない「セキュア・エンクレーブ」内でプログラムを実行することで、データを秘匿する技術があります。

しかし問題はそのままでは大変使いづらいということです。そこで、実際に扱うためのソフトウェアが必要になります。

R3 Conclaveとは

―Conclaveは、まさにそのためのソフトウェアです。Javaベースであり、ビジネスロジックにフォーカスしており、開発者に使いやすいソフトウェアとなっており、ブロックチェーンのCorda Enterpriseとの親和性も高く、複数の企業でのソリューションに発展できます。

Enclaveを利用したアプリケーションのための開発環境はIntelをはじめ各社から提供されていますが、使いやすさ、生産性は他を抜いています。

TEEのためのSDK

Conclaveの他のConfidential Computingソフトウェア開発キットに対する優位性

―ConclaveはR3が既存のSDKで経験した技術課題を解決するために構築し製品化しました。

① あらゆるライブラリを使用:GraalVMとの統合により、Java、Kotlin、Scalaなどの標準的なJVM言語はもちろん、最終的にはJavaScriptやPythonなどのスクリプト言語、WebAssemblyやLLVMをターゲットにし、あらゆる言語でアプリを簡単に書くことができます。

② どこでもビルド、すぐ実行:Conclaveのハイレベルで直感的なAPIはあらゆるOS(macOS, Linux, Windows)上でアプリケーションを書くことができ、一般のビジネス開発者に、TEEの信頼できる実行環境を提供します。

③ クライアントとエンクレーブの通信を簡素化:Conclave Mailにより複雑さが軽減されます。認証と暗号に関する問題がエンクレーブから除外され、より強力なセキュリティ基盤が提供されます。

④ Corda Enterpriseとの統合:Corda独自のFlowフレームワークとアイデンティティ機能によりエンタープライズクラスのpeer-to-peerソリューションを構築することができます。

⑤ Intel SGXの予備知識不要

⑥ エンタープライズレベルのサポート:R3はプロフェショナルサービスや商用サポートを提供しています。ビジネスユーザー様に安心してご利用いただけます。

プライバシー保護を確立する現在のアプローチとの違い

―Confidential Computing以外に現在、プライバシーを保護する秘密計算ソリューションとして以下の3つがあります。

① ゼロ知識証明(ZKP):一方の当事者が秘密の入力を明らかにすることなく、知識の簡潔な論証を証明することができる暗号技術

② 暗号化マルチ・パーティ・コンピュテーション(MPC):複数の当事者に計算を分散させ、個々の当事者が他の当事者のデータを見ることができないようにする暗号技術

③ 準同型暗号(Homomorphic Encryption):暗号化されたデータに対して、一方の当事者が暗号化されたまま分析機能を実行できる暗号技術

R3では、Confidential Computingを含めた4つのプライバシーソリューションを以下のように評価しています。

① Confidential Computing:

(ア) 誰もすべてのデータセットを見れない

(イ) データがどのように処理され、保護されているかを証明することが可能

(ウ) どのようなアルゴリズムでもデータを処理することが可能

② ゼロ知識証明

(ア) 一方の当事者はすべてのデータセットを見ることができる

(イ) データがどのように処理され、保護されているかを証明することが可能

(ウ) マルチ・パーティのデータ統合には不向き

③ マルチ・パーティ・コンピュテーション

(ア) 誰もすべてのデータセットを見れない

(イ) データがどのように処理され、保護されているかを証明することが可能

(ウ) 使用可能なアルゴリズムの種類に制限がある

④ 準同型暗号

(ア) データセットはプロセッサから保護されている

(イ) データが保護されていることを証明することができる

(ウ) データがどのように処理されているかを証明することはできません

(エ) 暗号化された検索の機能のみ焦点が当たっています

TEE(Trusted Execution Environment)の比較

―ConclaveはTEEとしてIntel SGXの機能を利用していますが、他のCPUメーカーもTEEを提供していますので、ハードウェアの観点から主要な3つのTEEについて見ていきます。

① Intel SGX

(ア) Intel SGXはビジネスロジックのセンシティブな部分だけ、つまり最小限の信頼を置くことに重点を置いています。

(イ) マルチ・パーティのコンピューティング機能に対する強力な監査プロセス

(ウ) SGX TCBリカバリー・プロセスが、ソフトウェア・バグや、サイド・チャネル・アタックの対処に成功

② AMD SEV

(ア) AMD SEVはクラウド上のVM保護を強く意識している

(イ) マルチ・パーティのコンピューティング用途には不向き

(ウ) ソフトウェアに致命的なバグや、セキュリティ上の欠陥が発見された場合に、ソフトウェアのリカバリーができない

③ ARM Trustzone

(ア) ARM Trustzoneはリモート認証をサポートしていません。

(イ) 主に携帯電話メーカーにおいて、ユーザーから携帯電話をロックするために使われます。

(ウ) モバイルOSに重点を置いています

Confidential Computingに共通する2つのアプローチ

―Confidential Computingを構築するにあたり、ConclaveのようにアプリケーションSDKで行くのか、あるいはConfidential VMを使うのかといったアプローチがあります。それぞれの特徴を見ていきます。

① アプリケーションSDK

(ア) セキュアなアプリケーションを構築したり、既存のアプリケーションを機密性の高いものに書き換えたりすることができます。

(イ) アプリケーションはTEEの機能を最大限活用するように設計されており、セキュリティとパフォーマンスを最適化することができます。

(ウ) アタックサーフェースの最小化

(エ) コストパフォーマンス

② Confidential VM

(ア) 既存のアプリケーションを変更することなく、信頼できる実行環境に移植できます。

(イ) アプリケーションはリモート認証などのTEEの機能を最大限に活用するようには設計されていません。

(ウ) 広いアタックサーフェース

(エ) エンクレーブでスタック全体を動かすのは非常にコストがかかる

最後に

―R3は、長年の各業界との協業や分散台帳技術により、多くのお客様の課題を解決してまいりました。Confidential Computingに関してもここ数年積極的に投資を行い、お客様のより一層の課題解決のため尽力しています。

またLinuxファンデーションのConfidential Computing Consortiumにも参加し、企業を超えた業界全体におけるConfidential Computingの普及に努めています。

・ ・ ・

最後までお読み頂き誠にありがとうございます。記事へのご質問やブロックチェーンに関してお困りごとがございましたらお気軽にご連絡下さい。ブレインストーミングやアイデアソンも大歓迎です。

Facebook: https://www.facebook.com/R3DLTJapan

Twitter: https://twitter.com/R3Sbi

HP: https://sbir3japan.co.jp/product.html

お問い合わせ:info-srj@sbir3japan.co.jp

おすすめ記事

記事一覧

(記事作成:SBI R3 Japan/Toami)

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
11:00
米トランプ政権の仮想通貨特命官サックス氏、利益相反報道を否定
米トランプ政権のAI・仮想通貨特命官デビッド・サックス氏がNYタイムズの利益相反報道を否定した。名誉毀損専門の法律事務所に対応を依頼し、倫理規定遵守を主張している。
10:40
ゴールドマンがイノベーター買収、ビットコイン連動ETFも取得で仮想通貨事業拡大
ゴールドマン・サックスがETF大手イノベーターを20億ドルで買収すると発表した。買収にはビットコイン連動ファンドQBFも含まれ、ゴールドマンの仮想通貨関連商品ラインアップが拡大。
10:14
リップル、シンガポールでライセンス範囲拡大 XRPとRLUSDによる決済事業を強化
リップルがシンガポール金融管理局から主要決済機関ライセンスの拡大承認を取得。XRPとRLUSDを活用した決済サービスを強化。アジア太平洋地域のオンチェーン活動は前年比70%増で、同地域での事業拡大を加速。
10:02
ビットコイン100万円幅急落、yETH流出事故で大規模清算|仮想NISHI
ビットコインは軟調な推移が続いている。1日には一時8万5,000ドルを割り込み、日本円ベースでも24時間比で100万円超の下落となった。背景には、イーサリアムが「フサカ・アップデート」を目前に控えロングポジションが積み上がる一方、Yearn FinanceでyETHの流出事故が発生し、ロングポジションの清算が連鎖したことがある。
09:20
リミックスポイント、12億円規模のWeb3関連事業投資を中止へ
リミックスポイントは、事前に予定していた12億円規模のWeb3関連事業投資の中止を決定。仮想通貨ビットコイン購入以外の調達資金使途を変更した。
08:40
ハッキング被害から3.7億円相当回収、ヤーン・ファイナンス
ヤーン・ファイナンスがyETH関連のハッキングで盗まれた資産のうち約240万ドル相当を回収した。回収作業は継続中で被害者への返還を予定している。
07:35
mNAV1倍割れでも「最後の手段」に、ストラテジーがビットコイン清算条件を明示
ストラテジー社のフォンレCEOがビットコイン売却の具体的条件を初めて明言した。株価が保有資産を下回り資金調達が不可能になれば売却も選択肢の1つとなる。
07:05
ストラテジー、約2240億円の米ドル準備金を確保
ストラテジー社は、優先株の配当と負債の利子の支払いのために約2,240億円の米ドル準備金を確保したことを発表。目的を説明し、仮想通貨ビットコインの買い増しも報告した。
07:00
チェーンリンク初のETF、NY証券取引所に上場予定
仮想通貨チェーンリンク(LINK)に投資する上場投資信託(ETF)が12月3日にニューヨーク証券取引所で取引を開始予定。NYSEアーカがグレースケール・チェーンリンク・トラストETFの上場を認証した。
06:45
米バンガードが仮想通貨ETF取引を解禁、5000万人超の顧客にアクセス提供へ
ブルームバーグが報じたところによると、世界第2位の資産運用会社バンガードは12月3日から仮想通貨を主に保有するETFとミューチュアルファンドの取引を許可。遂に長年の保守的姿勢から転換。
06:25
米下院共和党が仮想通貨の「ディバンキング問題」を追及、チョークポイント2.0報告書を公開
下院金融サービス委員会の共和党議員が12月2日、バイデン前政権による仮想通貨業界への組織的な銀行サービス拒否を批判する53ページの報告書を公表した。ストライクCEOの口座閉鎖事例なども議論を呼んでいる。
05:55
ビットコイン8.5万ドル割れ、個人買い増しとクジラ失速が鮮明に=アナリスト指摘
ビットコインは12月1日深夜8.4万台まで続落した。大口保有者の購入鈍化と日銀の植田総裁によるタカ派発言が圧力となり、4億ドル以上の清算が発生。
12/01 月曜日
18:34
日経グループQUICK、ビットコイン指数の算出開始
QUICKは12月1日、円建てビットコイン指数の本格公表を開始した。試験運用から更新頻度を毎日に引き上げ、12月22日からはリアルタイム指数も提供する。暗号資産ETFなどでの利用を想定。
17:07
イーロン・マスク氏「エネルギーこそ真の通貨」、ビットコインは基づくと主張
テスラCEOのイーロン・マスク氏が「エネルギーこそ真の通貨」と主張し、ビットコインはエネルギーに基づいていると説明。一方、著名経済学者やピーター・シフ氏は「本質的価値がない」と批判を続けている。
17:01
政府・与党、暗号資産の分離課税導入を検討へ 調整開始─NHKなど報道
政府・与党が暗号資産投資の分離課税化を巡り調整に入ったとNHKが報道。現行は最大55%の総合課税で、制度見直し議論が年末の税制大綱へ進む見通し。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧