BTCを法定通貨に採用するリスクを指摘
国際通貨基金(IMF)のエコノミストが、暗号資産(仮想通貨)を法定通貨として導入することに異議を唱える論文を発表した。直接的にはエルサルバドルの名前を出してはいないものの、同国がビットコイン(BTC)を法定通貨化する政策について間接的に牽制する内容にもなっている。
IMFのエコノミストTobias Adrian氏と、Rhoda Weeks-Brown氏は26日に連名でIMFのサイトに記事を投稿。仮想通貨を法定通貨にすることのリスクを列挙した。
まず、仮想通貨は「安価で迅速な決済」「金融包摂の強化」「国境を越えた送金の促進」など様々な可能性を秘めていると認識。その上で、「仮想通貨を国の通貨として採用することは、ほとんどの場合、リスクとコストが導入の利益を上回る」との考えを示した。
ビットコイン採用がもたらすリスク
記事で両氏は、ビットコインの価格があまりにも不安定であるため、家計や企業は、ビットコインで商品価格を掲載したり、貯蓄したりするインセンティブはほとんどないだろうと述べている。
経済が安定していない国が外国の通貨を導入する場合は、仮想通貨よりもドルやユーロなどの世界的な基軸通貨を使用した方が良いという。両氏は次のように続けた。
商品やサービスの価格が現地通貨と仮想通貨の両方で設定された場合、家計や企業は、どちらのお金を保有するか決めるために、多大な時間とリソースを費やすことになる。
また、政府の支出がほとんど現地通貨で行われる一方で、税金が事前に仮想通貨で見積もられるなどの場合には、政府の収入は為替リスクにさらされることになる。
さらに、次のような項目もビットコインを法定通貨として採用することの欠点として挙げた。
- 公平性や金融包摂の問題
- 銀行などの金融機関が、仮想通貨価格の大幅な変動に影響されるリスク
- 価格変動、詐欺、サイバー攻撃などの個人リスク
- マイニングが環境に与える影響
IMFのエコノミストらは法定通貨の前提条件として、人々が決済手段に広くアクセスできることが必要だと指摘。ただ仮想通貨を法定通貨として採用した場合、インターネットへのアクセスや、仮想通貨の送金に必要な技術が多くの国で不足しているため、公平性や金融包摂の問題が生じかねないとした。
また、仮想通貨の価格面でのボラティリティを懸念視し、取引する際に混乱が生じると予測。銀行などの金融機関だけではなく、家計や企業が価格の乱高下やサイバー攻撃などの被害に遭う可能性があると懸念視した。
実際にこのような事態で損害が発生しても、ビットコインなどの場合は法的な発行者が存在しないため、こうした損害について補償することも困難であると批判した。
さらに仮想通貨のマイニングにおいて膨大な消費電力が必要となることから、そのような通貨が国家の法定通貨となった場合、環境への影響は甚大になると環境面での悪影響を危惧した。
金融包摂
経済状態や居住地などに関わらず、誰もが必要な金融サービスを利用できるようにすること。仮想通貨を含むフィンテックが、預金口座を持たない人や、従来資金調達が難しかった事業体に恩恵をもたらすとみなされることも多い。
▶️仮想通貨用語集
6月には、IMFコミュニケーションズ局のGerry Riceディレクターも、エルサルバドルのビットコイン法が、マクロ経済など複数の側面から問題を引き起こす可能性があると述べていた。
その後、米国のVictoria Nuland政治担当国務次官が、ビットコイン法に関わらず、IMFはエルサルバドルへの経済支援を続けるべきと発言したことが報じられている。
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