CoinPostで今最も読まれています

仮想通貨にまつわる争訟解決手段にはどのようなものがあるか|Gamma Law寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

争訟による問題解決

暗号通貨(仮想通貨)、スマートコントラクト、ブロックチェーンアプリケーションなどの技術は、ビデオゲームで絶大な人気を誇っています。Axie Infinityのようなブロックチェーンや暗号ベースのゲームの数は増大しており、MetaClanのように、多くのゲームやeスポーツ組織は、運営管理や経営にこれらの技術を利用しているほどです。

ビデオゲームでのブロックチェーン技術の適用については多くの記事が書かれていますが、このような技術使用により発生する可能性のある法的争訟を、どのように処理するかについてのガイダンスはほとんど見られません。

例えば、支払いとして合意したビットコインの量や、実際にウォレットに入金された額について、当事者間で意見が一致しない場合はどうなるでしょうか?亡くなった家族のウォレット内の資産を回復する際、もしパスワードにアクセスできなかったら、家族はどのような救済措置を取ることができるのでしょうか?

これらの疑問は争訟処理によって解決することができます。

当事者は、例えば、自分のウォレット内の金額に異議を唱えたり、またパスワードを紛失してアクセスできなくなったりすることはよくあります。デジタル空間で事業を展開する企業は、ブロックチェーンや暗号関連の法的契約を扱う際に、いくつかの注意点を念頭に置く必要があります。

スマートコントラクト:争訟処理への役割

スマートコントラクトの効力と特徴は、ブロックチェーン争訟の解決に適用できる利点があることです。

スマートコントラクトは、セキュリティの強化、自動実行による効率性の向上、契約の履行と争訟処理におけるコスト削減を特徴としています。さらに、従来の契約と比較して、スマートコントラクトを介して取引が行われた場合、契約違反やそれに伴う損害の可能性が低くなります。

多くの専門家は、スマートコントラクト・コードとオンライン法廷は、いずれ契約法と法廷での裁定に取って代わる運命にあると考えています。万が一、この予言が実現したとしても、一般的に言ってスマートコントラクトとブロックチェーン技術には、幾つかの克服しなければならない課題があります。実際、コードとテクノロジーが交差すること自体が、より多くの争訟の温床となっているのです。

ブロックチェーン争訟の予防と解決をスマートコントラクトに依存する最大のデメリットは、米国では法的手続きを規定する統一ルールが存在しないことです。

イギリスをはじめとする他の管轄区域では、ブロックチェーン争訟の規制が始まっています。最近、英国の司法権タスクフォースは、デジタル争訟解決規則を発表しました。これは、暗号資産、スマートコントラクト、ブロックチェーンアプリケーションなどの新技術に関連する争訟を、より迅速かつコスト効率よく解決することを可能にし、更にはこれらの技術を採用する企業の信頼性を高めることを目的としています。

重要な法的考察

デジタル技術をめぐる争訟の効果的な解決を妨げている緊急課題をめぐり、国内外の業界関係者が合意達成に努めています。しかし世界共通の一貫した規制が採用されるまでは、開発者、クリエイター、投資家は、争訟が発生した場合の保身として、いくつかの要素を検討する必要があります。

解決方法

ブロックチェーン関連の争訟において最も重要な法的問題は、どの解決方法を使用するか、ということになります。選択肢としては、仲裁、訴訟、調停などがあります。

ブロックチェーンや仮想通貨関連の争訟のほとんどは、デジタル資産の転送ではなく、発生した損害の補償金を支払うことで解決することができます。長期化する恐れのある高額な法的争訟を避けたい当事者にとっては、上記のうち裁判以外の方法のいずれかが最適な選択肢となるでしょう。

もし裁判所の決定が、当事者の実世界の資産にアクセスしたり、相手方に譲渡したりすることが含まれた場合には、裁判所に尊重され支持されるような争訟解決方法を選択することが重要です。現在、最も広く好まれている争訟解決方法は、仲裁であり、その主な理由は、仲裁裁判所の柔軟性と専門性にあります。仲裁は当事者の望む手順を提供し、その手順はスマートコントラクトの取消不能な性質に対処することが可能です。

このように当事者にカスタマイズされた手続きはブロックチェーン取引の匿名性に起因する複雑な問題の解決にも役立ちます。仲裁の第二の利点は、調停や訴訟では必ずしも該当しないような、専門性の高い仲裁人を任命する機会が提供されることです。

仲裁廷

ゲーム会社は、仲裁廷の選任と構成に細心の注意を払う必要があります。これはどのような契約にも当てはまることですが、スマートコントラクトやブロックチェーンの争訟では、この業界に精通した仲裁人のプールが極めて限られている可能性があるため、より一層重要となります。

デューデリジェンスを行い、専門的な技術知識を持つ仲裁人を任命するのが最善です。例えば、コーディングを理解している人であれば、著作権事件を裁く際に、コードのラインが他のソースから引用されているかどうかを理解できるかもしれません。 近い将来、仲裁機関は、関連経験を持つ仲裁人の専門家プールを構築したり、ブロックチェーンに合わせた仲裁規則を制定する可能性があります。

司法管轄と準拠法

司法管轄と準拠法は、ブロックチェーン分野で多くの議論の対象となっています。ブロックチェーントランザクションの場所またはシートを決定することは、ブロックチェーンとその分散型台帳の分散性のため、法的な複雑さを伴います。ブロックチェーン争訟の経験が豊富な弁護士を雇い、適切な司法管轄とその地域での準拠法の契約条項を作成するのが最善です。

興味深いのは、司法権と準拠法が2つの別々の場所から発せられる可能性があることです。

例えば、契約の当事者がカリフォルニア州とニューヨーク州にいる場合、カリフォルニア州の仲裁人がニューヨーク州の法律の解釈に基づいて判断し、争訟を解決することに合意することができます。なお、裁判所によっては、当事者の準拠法の選択が、契約に適用されるはずの法律を回避するためだけに行われた場合や、選択された法律が公序良俗に反する場合、あるいは人権を侵害する場合には、適用されないことがあります。

秘密保持と限定的開示

スマートコントラクトの紛争の中には、専有のソフトウェアやハードウェア情報が含まれることがあります。情報の性質および潜在的な商業的影響に応じて、契約は秘密保持の仲裁によって解決されること、また企業秘密または秘密財務データの開示を制限することを、スマートコントラクト条項に含めることを推奨します。

本人確認

ブロックチェーン技術は、テロ対策、マネーロンダリング、外国制裁のルールに関して、特別な課題をもたらします。

例えば、米国財務省外国資産管理局(OFAC)は、米国市民がOFACの制裁リストに掲載されている個人、団体、政府、国が関与する取引に直接または間接的に関与することを禁止しています。

スマートコントラクトは、匿名性、自己実行性、自律性を持つように設計されているため、ゲームプラットフォームは、身元を確認し、違法な送金や取引をブロックすることで、これらの法律を遵守できるような管理体制を構築する必要があるかもしれません。

結論

本稿執筆時点では、ブロックチェーンによる争訟解決はまだ初期段階にあります。しかし、分散的な世界での発展ペースを考えると、ブロックチェーンに基づく分散型争訟解決も急速に発展していくと思われます。

実際、近い将来、ブロックチェーンによる争訟解決が従来の争訟解決を補完するようになると言っても、あながち的外れではないでしょう。ブロックチェーンの取引と争訟は、通常の商業取引とは大きく異なります。この新しく進化する空間で従来の争訟解決のルールに従おうとすると、非常に高い費用と時間がかかりますので、ゲーム業界を専門とするブロックチェーン弁護士にご相談することをお勧めします。

寄稿者:David Hoppe(デイビット・ホッピ)David Hoppe(デイビット・ホッピ)
Gamma Law(ガンマ法律事務所)代表。デジタル・メディア、ビデオゲームとバーチャル・リアリティーを専門分野とし、最先端のメディア、テクノロジー関係の企業を、25年近くクライアントとしてきました。彼は、洗練さと国際的な視点を兼ね備え、スタートアップ業界、新興企業、またグローバル化使用とする企業の現実を、実践経験から理解する国際的な取引交渉弁護士です。
CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
04/24 水曜日
17:00
「BTCは上昇トレンドに入る可能性」SCB銀
仮想通貨ビットコインは再び上昇トレンドに入る可能性があるとスタンダードチャータード銀行が分析。今回もビットコインとイーサリアムの価格予想をしている。
16:23
Block社(Square)、ビットコイン採掘産業の分散化に向けて高性能チップを開発完了
デジタル決済企業ブロック(旧Square)が、3ナノメートル技術を採用した最新のビットコインマイニングチップ開発を完了。このプロジェクトはオープンソース化され、ビットコインマイニング業界の分散化を推進することを目指している。
15:09
WebX2024、最大73%割引の「開幕セール」終了まで残り1週間
株式会社CoinPostが主催する日本最大のWeb3カンファレンス「WebX2024」にて、チケット販売を開始しております。2024年4月30日まで、最大73%割引のお得な開幕セールを実施中です。
14:35
米ブロックチェーン協会ら、仮想通貨業界の声をまとめSECを提訴
米ブロックチェーン協会とテキサス州暗号資産自由同盟は、米証券取引委員会が新たに制定したディーラー規則の阻止を求めて、SECを提訴した。
13:00
香港の現物ビットコインETF 4月30日にも発売かー報道
香港でボセラとハッシュキーキャピタルが提供するビットコインETFが取引を開始すると報じられた。2社の現物ビットコインETFは、価格安定性が高く、投資家に直接的な市場価格連動のメリットを提供する。
12:09
半値戻しのビットコイン、投資家心理改善で買い先行
暗号資産(仮想通貨)市場ではビットコインが66000ドル台まで反発し、50MA手前で一服した。イランとイスラエルを巡る中東リスク後退で米国株式市場でも買い戻しが先行しており、投資家心理が改善した。
12:00
ブラックロックのビットコイン現物ETF「IBIT」、70日連続流入を記録
ブラックロックのビットコイン現物ETF「IBIT」が70日連続で資金流入を記録した。運用資産は約2.8兆円に達している。
11:00
リップル社、SECによる20億ドルの罰金提案を過大と反論
リップル社は、XRPをめぐるSECとの裁判で新たな書類を提出。リップル社に対して約3,100億円の罰金支払いを求めるSECの主張に反論した。
09:40
「BTC価格上昇は半減期から50〜100日後」QCP Capital
仮想通貨ビットコインの今後の価格が急上昇するのは半減期から50〜100日後であるとQCP Capitalが分析。また、Bitfinexも半減期後の相場レポートを公開した。
08:45
ソラナJupiter、DEXモバイルアプリ5月公開予定
既存のUltimateウォレットは5月22日から利用できなくなるため、その前に仮想通貨の一時的移転(PhantomやMagic Edenウォレット)を推奨した。
08:10
米国のイーサリアムETF上場申請、5月承認は見込み薄か
申請中の仮想通貨イーサリアム現物ETFの多くは5月に最終判断を迎える予定だが、多くのアナリストは承認の確率が低いと予測。背景には、イーサリアム財団への任意捜査で米SECがETHを有価証券に分類しようとしている点や、ビットコイン現物ETFが承認されてからまだそれほど時間が経っていない状況などがある。
07:10
ビットコインの機能を拡充する新提案が公開
仮想通貨ビットコインのブロックチェーン上でスマートコントラクトなどを実現する開発提案がBIP-420として公開。以前から関心を集めている提案の内容が改めて説明された。
06:35
バイナンスアプリの削除、フィリピン当局がアップルとグーグルに命令
フィリピンはバイナンスの顧客基盤における重要な構成国だが、同SECは2023年11月以降、バイナンスを投資に利用しないよう国民に積極的に警告していた。
05:50
エルサルバドルの国営ビットコインウォレット、ハッカーがコードを流出
今回の漏洩は、4月上旬に報告された510万人のサルバドル人の個人情報リークを含む、一連のChivoウォレット関連のハッキングに続くものだ。
04/23 火曜日
19:00
メゾンマルジェラ MetaTABI NFT発売
メゾンマルジェラがMetaTABI NFTを一般販売開始。デジタル専用設計のタビシューズはThe Fabricantとのコラボで、限定版タビブーツとレザーウォレットが付属。今後のWeb3ブランドイベントにも参加可能。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
2024/04/24 11:30 ~ 13:30
その他 オンライン
2024/04/25 ~ 2024/04/26
東京 国立新美術館
2024/04/27 10:30 ~ 20:00
東京 東京都渋谷区
重要指標
一覧
新着指標
一覧