マスク氏、テスラ株の10%を売却か
米電気自動車メーカー、テスラ社のイーロン・マスクCEOは7日、ツイッターで自身が保有する同社の株式の10%を売却する可能性を示唆し、フォロワーがその提案を支持するかどうかのアンケートを行った。
Much is made lately of unrealized gains being a means of tax avoidance, so I propose selling 10% of my Tesla stock.
— Lorde Edge (@elonmusk) November 6, 2021
Do you support this?
最近、含み益が租税回避の手段であると言われている。そこで私が保有するテスラ株の10%を売却することを提案する。あなたはこれを支持するだろうか?
米フォーブズ誌によると、マスク氏は昨年12月時点で発行済み株式の約22.4%となる1億9,000万株を保有しており、その価値は2,500億ドル(約28.4兆円)と見積もられており、10%だとしても2.8兆円規模に及ぶ。
アンケートには350万人超が回答し、最終的に「株の売却」が57.9%で優勢な結果となった。マスク氏は、どちらの結果になろうとも、投票結果に従うと述べていた。
ビットコイン購入につながるか
マスク氏のこのツイートには様々な意見が寄せられたが、金融アナリストのKevin Paffrath氏は、マスク氏がテスラ株の売却益でビットコインを購入する可能性があると考えているようだ。同氏は、その理由として4つを挙げた。
- ビットコインへの投資歴:最大の投資先である可能性
- インフレ懸念:現金で保有せず、他の資産を購入
- 不動産は全て売却済み:次の投資先としての可能性は低い
- テスラの支払い手段としてビットコイン採用を復活させる可能性
ビットコイン(BTC)支持派として知られる米マイクロストラテジー社のマイケル・セイラーCEOは、次のような提案をした。
分散投資が目的であるなら、テスラのバランスシートをビットコイン基準に変換し、250億ドル(2.8兆円)相当のビットコインを購入することも、代替戦略とし検討すべきだろう。そうすれば税効率の良い方法で、全ての投資家に分散化やインフレ対策など多くの利点を提供することが可能だ。
また、経済ジャーナリストで自称「ビットコイン過激主義者」のマックス・カイザー氏は、実際にマスク氏が250億ドル(約2.8兆円)規模でビットコインを購入した場合、マスク氏は「金融界の新たなケヴォーキアン医師*」となる可能性があると主張(*安楽死を推奨して実際に末期患者の自殺を幇助)。ビットコインへの巨額資金の流入が「不正行為や泥棒政治、ハイパーインフレで我々を殺している、見せかけの株や債券市場の世界的な暴落を引き起こすことを祈ろう」と気炎を吐いた。
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富裕者税の議論
その一方、マスク氏が「所得税」に言及したことから、ビットコインとは関係がなく、納税関係で売却するだけと見る向きもあるようだ。
なお、調査報道サイト「ProPublica」の報告によると、2018年のマスク氏の所得税はゼロであったという。同氏は給与を受け取っておらず、現金による報酬がほとんどないことがその理由だと釈明していた。
マスク氏は、今年9月に開催されたカンファレンスで、来年初頭にテスラのストックオプションの期限が切れると、限界税率が50%を超えてしまうため、第4四半期には売却する可能性があるとコメントしている。今回の一連のツイートでは、個人として税金を支払うには株を売るしかないと述べていた。
Whether or not the world’s wealthiest man pays any taxes at all shouldn’t depend on the results of a Twitter poll. It’s time for the Billionaires Income Tax. https://t.co/KFHw3VZ45H
— Ron Wyden (@RonWyden) November 6, 2021
Ron Wyden上院議員は、「世界で最も裕福な人物」が税金を支払うか否かをツイッターの投票で決めるなど、あってはならないとマスク氏の行動を批判し、「富豪税」を導入する時が来たと主張した。Wyden議員は、富裕層による投資の含み益に対しキャピタルゲイン税を課す法案を提出しており、マスク氏は先月、その「富豪税」のアプローチを厳しく批判していた経緯がある。
一方、米国では直近の大きな動きとして、110兆円に及ぶインフラ法案が6日に米下院で可決された。その中には仮想通貨セクターに対する3兆円の税収予算も含まれている。
そのような政府の対応に対する批判もあるのだろうか。米暗号資産(仮想通貨)投資ファンド「モーガン・クリーク・デジタル」の創設者、アンソニー・ポンプリアーノ氏は、米政府はマスク氏の納税額で「数分間の資金調達」ができ予算調整に成功したと喜ぶだろうと皮肉った。
インフラ法案とは
米上院から提出され、今後8年間で1.2兆ドル(約130兆円)を道路・橋、鉄道、港湾・空港、水道、高速通信網、電力網などの国内インフラへの投資を提案する法案。バイデン政権の経済分野の主要政策の1つである。
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