はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

音楽NFTの可能性と考慮すべき法的論点とは|Gamma Law寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

音楽業界で存在感を増すNFT

非代替性トークン (NFT)は、音楽シーンでの存在感を増し、所有権を証明できる印をオーディオデジタルデータに付与できる革新的な技術として注目されています。最新の展開は、バーチャルセレブリティとして作成されたNFTです。これらのNFTは、ミュージックビデオやビデオゲームなど、数種のメディアやプラットフォームに登場することも考えられます。

アバター基盤のNFTを取り巻く関心は急速に高まっており、パリス・ヒルトンからジミー・ファロン、ステフ・カリー、エミネムなどのメガセレブでさえNFTをミントし投資しています。NFTの売上は驚異的で、2020年の9500万ドルから2021年には250億ドルに増加しています

アメリカの次世代ロックスターはアバター?

NFTは、曲、アルバム、音楽、歌詞、サウンドバイトを基盤に作られ、さらに音楽や.gif・.jpgなどのデジタルアートと組み合わされて、ユニークなマルチメディア・パッケージとして作成されています。NFTの中には、歌詞やアーティストからのメッセージなどの追加コンテンツをPDFに付加しているものもあります。

音楽バンド「キングス・オブ・レオン」が2021年に初めてNFT基盤の音楽アルバムをリリースしました。

有名なNFTクリエイターのジェイス・ケイ氏は、「The NFTs」というバーチャルバンドを作り、NFTの人気猫コレクション「Cool Cats」を祝った「I’ve Got a Cool Cat Too」という曲まで作りました。「The NFTs」は、近日中に楽曲とともに、独自のミュージックビデオを公開する予定です。「The NFTs」は、StereoheadZ NFTコレクションのスポーツキャラクター3人と、伝説のBored Ape Yacht ClubのCaptain Trippyをはじめとする実在の人物に支えられた4人の仮想バンドメンバーで構成されています。

彼らの音楽は、SpotifyとApple Musicで配信されています。NFTの価値は、トークンそのものの価値というより、「有名人」の人気に連動されることになります。音楽NFT(ミュージックNFT)の人気が高まる中、このトークンを通じて他のアーティストとコラボレーションする計画もあります。

この音楽NFTを購入するためには、StereoheadZ Music Clubの会員であることが条件となります。これらの音楽NFTの所有者は、メディア、ストーリー、その他のデジタルプラットフォームにおけるキャラクターの派生物の作成と使用、およびソーシャルメディアの管理に関する全権利を獲得します。

さらに、StereoheadZは、コミュニティ内で音楽グループを発掘し、促進するための「Battle of the Bandz」コンペティションを開催する予定です。彼ら自身の音楽レーベルであるSZMC Musicが、新バンドの発掘、レコーディング、マネージメント、プロモーションをサポートすることになっています。

音楽業界大手も参入

大手音楽レーベル、スタジオ、プロモーターもNFT分野に参入しています。

今年初め、象徴的レーベルであるアトランティックやワーナー・レコード、そしてエド・シーランやリゾ、デュア・リパといった有名ミュージシャンを多数抱えるワーナーミュージックグループは、Green Web3 Company のOneOf、そしてNFTの分散型取引所(DEX)であるブロックパーティと共に、さまざまなアーティストの独占NFTを作成すると発表しました。彼らは、収集及び生成できるプロフィール写真(PFP)から音楽使用料や体験まで、さまざまなNFTを提供しています。

このコラボレーションが、ミュージックビデオやアニメーション、音楽番組、さらにはコーチェラ・フェスティバルなどのイベントチケットとして収入を得ることで、実質的に本物のセレブのような生活をするNFTを生産しているのです。さらに、これらのコラボレーションは中間業者を排除するため、アーティストはファンと直接つながり、かつてないほどに芸術媒体をコントロールすることができるのです。

NFTのオーナーは、ミュージックビデオなどの「オーディション」に参加させることもできます。ジェイス・ケイ氏は、Bored Apes、Cool Cats、StereoheadZといったNFTをミュージックビデオに出演させるためにAvaCastというプラットフォームを作りました。NFTは、曲を録音したり、ミュージックビデオを制作したりと、自分たちの音楽キャリアを持つことができます。もちろん、NFTはオーナーによって管理されます。ワーナーミュージックグループは、NFT独自の「キャスティングコール」を発表する予定です。

音楽NFTは、慈善活動のための資金集めにも利用できます。NFTは、営利目的であれ、チャリティであれ、既存の音楽作品を販売するために設計することが可能です。StereoheadZ Music Communityは、NFTの売上の一部をSZMC Community Fundに寄付し、クラブメンバーの創造性とコラボレーションを促進するために役立てています。

21年末には、ホイットニー・ヒューストンが17歳の時に録音した未発表の音源がNFTとしてミンティングされました。それはOneOfのNFTオークションプラットフォームに置かれ、Tezos(XTZ)ブロックチェーン上で最高値のNFTとなる100万ドルで落札されました。新規NFT所有者は、この曲のフルバージョンにアクセスできますが、NFTの契約には、録音そのものに対する権利や、楽曲が明らかになるように別の場所で公開する権利は含まれていませんでした。売上は、新進音楽アーティストを支援するホイットニー・E・ヒューストン・レガシー財団に寄付されました。

音楽NFTとスマートコントラクト – 法的課題

音楽NFTは、アーティストが自らの作品やキャリアをコントロールできる大きな可能性を秘めていますが、一方で考慮すべき法的問題もあります。

過去には、アーティストが作品に対する報酬を受け取る一方で、知的財産権を失うことも珍しくありませんでした。さらに、NFTを音楽分野に活用するメリットには、アーティストが作品に対してロイヤリティを継続的かつ正確に受け取ることができること、また音楽の内容についてもより大きな発言権を持つことができることがあります。

ブロックチェーンとNFTは、一次および二次再販権を容易に実現できるため、アーティストは、作品の将来的使用と再販に対してロイヤリティを受け取る権利を記録し、契約を作成することができます。以前は、音楽スタジオがアーティストの活動内容を管理し、多くの場合契約を結び収入額を決めていましたが、NFTによってアーティストは知的財産とロイヤリティの構造をはるかに大きくコントロールすることができるようになります。

NFTはそれぞれがユニークであることから、他の当事者と交渉することなく、アーティストが望む条件でスマートコントラクトがブロックチェーンに記録されます。さらに、これらのスマートコントラクトは、エクイティ・クラウドファンディングの活動も取り入れることができるため、全ての寄付者は、収益の割合や生涯チケットなど、適切な報酬スキームに組み込まれることが可能です。スマートコントラクトを作成することで、NFTはアーティストに直接報酬を与え、音楽NFTの売買時には、クラウドファンディングの貢献者が公正な分け前を得られるように構成できます。

アップグレード可能なNFTが秘めるポテンシャル

さらに、音楽NFTは、そのスマートコントラクトが「アップグレード可能」であるように設定することができますが、これは非静的なデジタル資産であることを意味します。アップグレード可能なNFTは、コンサートのチケット販売開始など、ブロックチェーン上又はブロックチェーン外で発生する何らかのイベントやトリガーに反応します。

また、アップグレード可能なNFTにより、オリジナルのクリエイターと将来のコラボレーターが、すべてクレジットやコンテンツを変更する許可を得ることができます。一般的に、既に発表済み楽曲のリミックスを行う場合、著作権違反を避けるため、まずオリジナルのアーティストやその他の著作権者から許可を得たり、演奏権に関するライセンスを取得したりする必要があります。アップグレード可能なNFTでは、原作者がこれらの知的財産権を維持したまま、将来のNFT所有者がコンテンツをリミックスして独自の派生作品を作ることができるようにすることも可能です。

音楽NFTは、アーティストの作品管理から、正確又はより高い報酬の受け取り、慈善活動のための資金調達、中間業者の排除、アーティストとファンとの1対1の密接なコンタクトによる消費者体験の向上まで、音楽業界を変革する可能性を持っています。そしてその可能性は無限大です。ブロックチェーンとスマートコントラクトにより、NFTはアーティストやクリエイターが自らの運命をこれまで以上にコントロールできる未来を実現します。

寄稿者:David Hoppe(デイビット・ホッピ)David Hoppe(デイビット・ホッピ)
Gamma Law(ガンマ法律事務所)代表。デジタル・メディア、ビデオゲームとバーチャル・リアリティーを専門分野とし、最先端のメディア、テクノロジー関係の企業を、25年近くクライアントとしてきました。彼は、洗練さと国際的な視点を兼ね備え、スタートアップ業界、新興企業、またグローバル化使用とする企業の現実を、実践経験から理解する国際的な取引交渉弁護士です。
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
03/31 月曜日
14:10
メタプラネットがビットコイン購入へ 総額20億円の第10回普通社債を発行
株式会社メタプラネットは総額20億円の第10回普通社債を発行し、調達資金をビットコイン追加購入に充当。24日時点の保有量は3,350BTCとなり、積極的な買い増しを継続する方針だ。
13:03
米バンカメ「貿易戦争の資産逃避先ではゴールドが圧倒的優位」
バンク・オブ・アメリカのファンドマネージャー調査で、トランプ関税を背景とした貿易戦争時の避難資産として、金(ゴールド)が仮想通貨ビットコインより圧倒的に好まれていた。投資家の避難先として注目されているのが、パクソス社が発行するPAXG(Pax Gold)やテザー社が発行するXAUT(Tether Gold)、国内では三井物産デジタルコモディティーズ株式会社が発行するジパングコイン(ZPG)がある。
11:16
仮想通貨市場など全面安 命運を左右するトランプ関税発表が4月2日に迫る
4月2日に迫るトランプ米大統領の関税発表が株やビットコイン(BTC)市場に大きな不確実性をもたらしている。著名投資家は今年最大の市場イベントと位置づけ3つのシナリオを提示した。一方、ピーター・ブラントはビットコイン(BTC)の65,600ドルへの下落リスクを警告している。
09:51
金融庁、仮想通貨のインサイダー取引規制導入か 「金融商品」に分類する法改正案提出へ=報道
日本経済新聞の報道によれば、金融庁が2026年を目途にビットコインなど仮想通貨を金融商品とする金商法改正案を提出予定。暗号資産(仮想通貨)のインサイダー取引規制も新設する見込み。
03/30 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、米州政府や企業のBTC投資動向やリップル社のSECへの追加上訴撤回など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナなど主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
ビットコイン週次市況:1300万円台で揉み合う展開と今後の見通し|bitbankアナリスト寄稿
bitbankアナリスト長谷川氏による週次分析。トランプ政権の相互関税懸念と米経済指標の動向を背景に、1300万円台で揉み合うビットコイン相場。現物ETFへの資金流入が続く中、今後の展望を詳細に解説
11:00
週刊仮想通貨ニュース|トランプ関税の影響分析に高い関心
今週はSBI VCトレードによるステーブルコインUSDCの取引開始、トランプ関税の影響分析、世界最大級のオンライン証券会社によるトランプ氏言及の仮想通貨4銘柄追加に関するニュースが最も関心を集めた。
03/29 土曜日
13:45
イーサリアム創設者ヴィタリック、L2セキュリティの進化と「2-of-3」証明システムを提案
ヴィタリック・ブテリン氏が新たなブログで、L2セキュリティの現状と将来展望を公開。ブロブスペース拡張、ZK・OP・TEEを組み合わせた「2-of-3」証明システム、証明集約レイヤーの必要性について詳細に解説。
12:55
南カロライナ州で新たにビットコイン準備金法案提出 対コインベース訴訟取り下げも
米国サウスカロライナ州が、コインベースへのステーキング関連訴訟を取り下げた。また同日には州がビットコインなど仮想通貨の準備金を持てるようにする法案が提出されている。
10:45
ブラックロックのビットコインETFを保有、トランプ大統領の息子が顧問の米上場企業
米ドミナリ・ホールディングス社がビットコイン保有戦略を開始し、ブラックロックのETFを購入。機関投資家の仮想通貨投資最新動向は。
10:00
欧州保険・年金機構(EIOPA)、保険会社が仮想通貨を100%裏付ける義務提案
EIOPAが保険会社の仮想通貨保有に100%の資本要件を提案。高リスクに対応するためとしている。欧州では特にルクセンブルクで保険会社の仮想通貨エクスポージャーが確認されている。 。
09:30
SEC、イーロン率いる政府効率化省(DOGE)と連携開始
米証券取引委員会(SEC)がイーロン・マスク氏の政府効率化省(DOGE)との連携を開始。トランプ政権下での規制機関改革と仮想通貨政策転換の最新動向を解説。
08:30
ビットコイン80万円下落、BTCメジャーSQ通過で需給悪化|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは前日比で一時80万円の下落となった。アルトコイン市場も、ビットコインの急落に連動するかたちでほぼ全面安の展開となった。
07:45
トランプ大統領、仮想通貨取引所BitMEXの共同創設者3名に恩赦
トランプ大統領は、アーサー・ヘイズ氏ら仮想通貨取引所BitMEXの3名の共同創設者に恩赦を与えたことがわかった。同氏らは、意図的にマネーロンダリング対策を導入せず銀行秘密法に違反したと告発されていた。
07:15
アバランチ現物ETF、米グレースケールも申請
VanEckの後に申請 米ナスダックは3月27日、グレースケールのアバランチ(AVAX)現物ETFに関する19b-4申請書を米証券取引委員会(SEC)に提出した。この申請は、既…

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧