ロイターの報道をバイナンスが否定
ロイター通信は23日、大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスが、過去にロシア当局から顧客データを共有する要求を受け、これに合意していたと伝えた。翌日、バイナンスはこの内容を強く否定し、ロイターに正式に異議を申し立てると主張した。
ロイターによると、バイナンスの東欧・ロシア部門長のGleb Kostarev氏は、21年4月にモスクワで開かれた会議に出席。金融犯罪を監視・防止するロシア政府機関Rosfinmonitoring(以下「Rosfin」)から、名前や住所を含む顧客データを提供するコミュニケーションチャネルを設置するよう要求された。
Kostarev氏はこれに合意し、「Binanceはコンプライアンス義務を真剣に受け止めており、規制当局と協議する機会を歓迎する」と伝えたという。ロイターの主張は、元従業員、元取引先を含むバイナンスのロシアでの運営に詳しい10名以上の人物への取材と、収集したEメールに基づいているという。
当時RosfinはFSB(ロシア連邦安全保障局)の指示を受けて、ロシアの野党勢力指導者Alexei Navalny(アレクセイ・ナワリヌイ)氏の支持者を追跡していたされる。Navalny氏はロシア政府の汚職問題の追及やプーチン大統領への批判等から注目を集めた人物。同氏が率いる「反汚職基金」(FBK)には当時数億円相当のビットコイン(BTC)が寄付されていた。
一方バイナンスは、FBKへのビットコイン寄付金の出資者に対する当局による追跡を手助けした事実はないと主張する。
バイナンスがアレクセイ・ナワリヌイを含むいかなる顧客データを、FSBが管理する機関やロシアの規制当局と共有したという報道は事実誤認だ。
なお、バイナンスは、原則としてロシアを含む世界中の政府や法執行機関は適切な法的権限を伴う限り顧客データを要求できると説明する。ただし、同社の調査チームが法執行機関の要請に法的な正当性を見いだせないと判断した場合はこれを拒否する、と述べた。
本件の情報をロイターと共有した人物は、当社セキュリティ・チームのプロセスがどのようなものか、基礎的な理解が欠けている。たとえ法執行機関でも、個人または部門が顧客データにアクセスしたり、承認したり、外部と共有することはできない。
バイナンスのロシアでの制裁対応
ロイターはまた、22年2月のウクライナ侵攻以後もバイナンスがロシアで営業を続けていることを指摘している。バイナンスはロシア・ルーブル(RUB)建てでビットコイン(BTC)とテザー(USDT)を取引できる数少ない世界的な取引所の一つだ。21年中頃にバイナンスにとってロシアは中国に次ぐトップ市場だったこと、22年3月にバイナンスが全ルーブル建て仮想通貨の取引量の約80%を占めていたことを説明した。
バイナンスはロシアでの出来高について「いかなる市場データも公開していない」とだけ回答。戦争下でのロシアでの営業については以下のように述べている。
戦争が始まるとすぐに当社はロシアでの活動を停止した。代わりに、ロシアに対する制裁を積極的に実施した。今日、バイナンスこそがロシアの口座保有者に対する最新の措置を実施する仮想通貨取引所だ。
バイナンスは本記事に関するロイターの取材に応じていた22年4月4日〜同12日までの、Eメールの交換内容をすべて公開している。情報公開性、透明性、誠実性を強調し、コミュニティに判断を委ねている。
4月21日にバイナンスはロシア市民やロシア在住者への取引口座を一部制限する方針を発表していた。
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