はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

米民主党議員ら、仮想通貨利用の制裁強化法案を提出

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨の制裁強化法案

米議会の上院銀行委員会は17日、「違法金融における暗号資産(仮想通貨)の役割」と題した公聴会を実施した。制裁回避手段としてロシアが仮想通貨を利用するリスクについて議論が行われた。

公聴会には、仮想通貨懐疑派の代表格であるエリザベス・ウォーレン議員や推進派のパトリック・トゥーメイ議員のほか、専門家の証人としてブロックチェーン企業の取締役らが登壇。このうち、ウォーレン議員は先週に引き続き、制裁回避手段としての仮想通貨利用を警戒し、これを取り締まる「デジタル資産制裁コンプライアンス強化法」の案を提出する方針を明らかにした。

法案は米大統領が90日毎に米議会にロシアの制裁措置対象者に協力した仮想通貨取引業者の開示を求めるもの。また、「米国内の仮想通貨取引プラットフォームやトランザクション・ファシリテーターに対して、ロシアの制裁措置対象者の取引承認を禁止すること課す内容となっている。

また、「トランザクション・ファシリテーター」の定義にはビットコイン(BTC)など、ブロックチェーン上の取引承認を行うマイナーや開発者、ノード運営者も含まれる可能性が浮上しており、違法な取引の存在に対する認識の有無に関わらず規制対象となる可能性が含まれている。

法案はウォーレン議員のほか、10名の議員らが共同署名。民主党の議員がロシアの仮想通貨利用を警戒する傾向が続く格好となった。

関連:米ウォーレン議員、対ロシア制裁の仮想通貨法案を提出へ

「合理的なアプローチを」

公聴会の冒頭演説では、共和党のトゥーメイ議員が現政権を含め、複数の政府機関が現段階ではロシアが仮想通貨を利用している証拠はないと説明。「どんな制裁も完璧ではない」ため、ロシアのオリガルヒ(富裕層)が仮想通貨を含む、様々な手段を用いて資産を隠し持っている可能性はあるとしつつ、歴史を振り返っても、犯罪者は常に新たな技術を用いて不正に利益を得てきたと述べた。

また、FBI(連邦捜査局)のクリストファー・レイ長官やFinCEN(金融犯罪捜査網)のヒママウリ・ダス長官代理らがロシアにとって仮想通貨は現実的な制裁回避ツールではないと述べている点を挙げつつ、犯罪者にとって仮想通貨の追跡性はリスクが高いと指摘。

関連:米FBI長官「ロシアの仮想通貨を利用した制裁回避の可能性は低い」

21年5月に発生した大規模なランサムウェア事件となったコロニアルパイプライン事件でも、司法省は略奪された資金の85%を奪還することに成功したことから、「仮想通貨のリスクと将来性の双方を理解した上で合理的なアプローチをとる」よう呼びかけた。

関連: 2021年の仮想通貨の犯罪利用率は過去最低水準「0.15%」まで縮小

専門家の証言

また、ウクライナ・ブロックチェーン協会会長で仮想通貨取引所KUNAのCEOであるMichael Chobanian氏も業界専門家として登壇

自身の手がける取引所ではルーブル建の取引ペアを全て停止する措置を取った反面、ルーブル急落を受け仮想通貨へ資産の移動を図るロシア市民もいると考察。このような動きは、結果的にロシア経済から資金が撤退することにつながるため、「ロシア国内で反戦派のロシア市民にとって仮想通貨はプーチン政権に対抗するための有効な手段だ」と論じた。

関連:ウクライナ政府、仮想通貨取引所に全ロシア人ユーザーの口座凍結を要求

さらに、同じく専門家として登壇した大手ブロックチェーン分析企業チェイナリシスの共同設立者であるジョナサン・レビンCTOは2021年における仮想通貨の犯罪利用率は0.15%まで低下したと指摘。「ブロックチェーンの提供する透明性は規制当局の違法行為の探知と阻止能力を引き上げる技術」だと発言した。

チェイナリシスはこれまで、米政府を含む多数の政府機関などの調査に協力。マウントゴックス事件の発生した2014年から犯罪捜査に貢献してきたと述べた。

出典:証言文

関連: 2021年の仮想通貨の犯罪利用率は過去最低水準「0.15%」まで縮小

他にも、財務省・金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)のマイケル・モジエ元局長代理が登壇。モジエ氏は現在、FinCENの副局長兼デジタル・イノベーション部門を率いており、新しいテクノロジーに対してはバランスの取れたアプローチが欠かせないと主張した。

また、ベネズエラの医療従事者への人道的支援や、一般市民からの数千万ドル相当のウクライナへの寄付が、仮想通貨の利用によって可能になった例を取り上げ、「新興技術を全て疑念の目で見ると、守るべき市民を傷つけてしまう危険性がある」と警鐘を鳴らした。

関連:ウクライナ政府、17億円分の仮想通貨寄付金で軍需品を調達

さらに、モジエ氏は仮想通貨の利用について以下のようにコメントしている。

仮想通貨が民主主義のためにできることを慢性的に過小評価するならば、犯罪における利用もまた、著しく過大評価されているといえる。サイバー犯罪を仮想通貨に過度に帰することは、重要なオペレーションモデルや予防策を見落とすことになる。

ロシアへの制裁の有効性に関して同氏は、「アクセスやレール、基本的な流動性の問題があるため、一夜にしてスイッチを入れ、仮想通貨でG20の経済を動かすことはできない」と述べ、ロシアが制裁回避手段としての仮想通貨を利用する可能性は低いと考察した。

関連:G7がロシアに対する制裁強化で共同声明、仮想通貨も対象

業界有識者の反応は

ブロックチェーン業界のロビー団体である米Coin Centerのディレクターであるジェリー・ブリト氏は「ウォーレン議員がロシアの制裁回避目的で仮想通貨を利用している可能性が低いことを示すデータや政府関係者の発言を無視して法案を提出した」と発言。

ブリト氏は今回の法案が超党派の支持を得ていない点から、「可決する可能性は低い」と分析。しかし、財務長官にロシア関係者と「ビジネス」関係がある可能性を持つソフトウェア開発者やマイナー、そしてノード運営者を濫りに摘発できる権限を付与する点を問題視し、制裁を強化するどころか、ロシア政府やオリガルヒに何も影響を与えないと批判した。

反戦派で仮想通貨を利用して貯蓄の保持を試みる一般市民を巻き込む恐れがあるとして、西側勢力にとって大きな支援者となり得るロシア市民を制裁対象に含むのは良い戦略ではないと考察した。

また、ブロックチェーン協会のジェイク・シャービンスキー氏はトランプ政権の末期(20年12月)にムニューシン財務長官が提案した仮想通貨法案と酷似していると分析。法案内容こそ異なるものの、個人のプライバシーを侵害し得る一律的な規制を急に提案した点では似ていると指摘した。

しかし、ブリト氏と同様、専門家の見解と一致しておらず、超党派の支持を得られていないため、法案の実現する可能性は低いと過度に不安となる必要はないと述べた。

関連:ルーブル建てのビットコイン取引量急増、制裁逃れに仮想通貨が利用されるリスク

厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
04/01 火曜日
14:15
エックスモバイルがWeb3参入 暗号資産モバイルサービスを今年度中に開始
マジモバ・ホリエモバに続く展開 格安携帯電話サービスを提供するMVNO「エックスモバイル」は1日、暗号資産(仮想通貨)を含むWeb3事業への本格参入を発表した。今年度中に、ブロ…
13:45
テザー、1Qに8888BTC追加購入
ステーブルコイン最大手テザーが2025年第1四半期に約1,100億円相当のビットコインを追加購入。総保有量は92,647BTCとなり世界第6位のホルダーに。
13:10
イーサリアムL1の手数料収益が大幅減少 目標達成も課題浮上
仮想通貨イーサリアムのDencunアップグレード後、L1の手数料収益が大幅に低下。ガス代削減という目標は達成したものの、ETHのインフレ課題が浮上していることを解説する。
12:11
トランプ関税発表控え緊迫するビットコイン市場、ETF資金流入とマイニング課題の狭間で
4月2日のトランプ関税発表を控え、ビットコイン市場は複雑な状況に直面している。一方ではETFへの資金流入が9営業日連続で続き回復の兆しを見せる一方、マイニングコストは87,000ドルまで上昇。さらにハッシュレートは史上最高の8億5,000万TH/sを記録するという矛盾した状況だ。市場のリスク回避姿勢が強まる中、投資家とマイナーの動向から見える業界の今後を分析する。
11:25
ヘデラ関連企業ハッシュグラフ、企業向けネットワーク「HashSphere」発表
仮想通貨ヘデラ関連企業ハッシュグラフは、プライベートな許可型ネットワークHashSphereを発表。開発目的や想定するユースケース、今後の開発計画が明らかになった。
11:00
米上院議員、退職金での仮想通貨投資を可能にする『金融自由法案』を提出
米国のトミー・タバービル上院議員が退職金プランでの仮想通貨投資を許可する金融自由法案を提出。旧バイデン政権の規制に対抗し、トランプ大統領の仮想通貨支持政策を後押しする内容に。
10:10
REDXがBingXへの上場発表 モバイルサービス「REDX MOBILE」でユーティリティ拡張へ
ブロックチェーン×エンターテインメントを融合させたWeb3プロジェクト「REDX(レッドエックス)」は、2025年4月1日より、トークン還元型の次世代モバイルサービス「REDX…
10:00
トランプ大統領の仮想通貨活動に共和党内から異例の苦言
米下院金融サービス委員会のヒル委員長が、トランプ大統領の仮想通貨事業がステーブルコイン規制議論を複雑化させていると発言した。民主党からの批判を招いていることが背景だ。
08:40
トランプ家、ビットコインマイニング事業参入 Hut 8社と合弁会社『American Bitcoin』設立
Hut 8社と合弁会社『American Bitcoin』設立 米国の上場企業Hut 8(ハット・エイト)は、ドナルド・トランプ大統領の息子エリック・トランプ氏とドナルド・トラ…
08:01
ブラジル金融当局、主要年金基金の仮想通貨投資を全面禁止
ブラジル国家通貨評議会が年金事業体による仮想通貨投資を禁止。高リスクを理由に規制強化する一方、英国のカートライト社や米国複数州の年金基金はビットコイン投資を進めており、国際的な規制姿勢の違いが鮮明に。
07:30
ブラックロックCEOが見解、ビットコインが米ドルの支配的地位を奪うリスク
ブラックロックのCEOは、米国の債務が増加している現状に警鐘を鳴らし、債務を制御できなくなれば、ドルの準備通貨の地位が仮想通貨ビットコインのようなデジタル資産に奪われるリスクがあると指摘した。
07:00
ビットコイン、S&P500との相関性低下か クジラ数は3ヶ月ぶりの高水準
仮想通貨ビットコインはS&P500が下落する中でプラス推移し相関性の低下を示唆。1,000BTC以上保有のクジラウォレットは3月から11増加し1,991に到達。Cryptoquantアナリストは2020年の強気相場と類似したパターンを指摘した。
06:30
2880億円規模のビットコイン買い増し、ストラテジー社
米ストラテジー社は3月31日、22,048の仮想通貨ビットコインをさらに追加購入したことを公表した。今回の購入規模は2880億円相当のもので、このニュースが好感されビットコイン市場は一時83,757ドルまで反発。
06:05
USDC発行のサークル社、4月下旬IPO申請へ JPモルガンとシティを起用
ステーブルコイン大手サークル社が4月下旬にIPO申請予定。USDCの時価総額が1年で倍増し600億ドルを突破、テザーとの競争激化。JPモルガンとシティが上場支援へ。
05:40
トランプ一族、DeFiプロジェクト「WLFI」の支配権を強化 ロイター報道
トランプ一族が開発中のDeFiプラットフォーム「World Liberty Financial」の経営権を強化。共同創設者が離脱し、トランプ家が収益の75%を獲得できる新体制に移行。これまでに5.5億ドルを調達し、約4億ドルがトランプ家に渡る見込みである。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧