はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

米国でのDAOを巡る法的論点とは|Gamma Law寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

新しい組織としてのDAO

近年、投資家や団体は、音楽の著作権使用料(印税など)の追跡からサプライチェーン・ロジスティックスのサポートまで、さまざまなビジネス利益にブロックチェーン技術を取り入れることが多くなっています。そして今その状況から一転し、ブロックチェーン技術の応用として、投資家の集合的な力を利用した組織形成が行われています。

分散型自律組織(DAO:Decentralized Autonomous Organization)は、組織やコラボレーションのための最新のブロックチェーンユースケースです。ブロックチェーンは中央管理者を不要にし、参加者に組織運営へのアクセス、情報、透明性を提供し、従来の取引や制度的規範から更にデジタルな一歩を踏み出すものです。

DAOの定義

基本的に、DAOは 「スマートコントラクトの相互接続されたウェブを使用して、その必須および非必須の全てのプロセスを自動化するビジネス」とされています。DAOは、デジタル台帳の使用により、オープンソース、自動化、合理化されたオペレーションを提供します。

DAOの構造は様々ですが、すべて透明で検証可能です。今日のDAOの大半は、世界で2番目に多いブロックチェーンであるイーサリアムネットワーク上で稼働しています。

誕生してから10年にも満たないDAOとブロックチェーンですが、誕生以来、中央集権的な管理を必要とせず、オンラインで資金調達と集団的な意思決定を行うために利用されてきました。DAOはコミュニティによって運営され、トップだけでなくすべての参加者が意思決定を行い、リソースを配分し、金銭的リターンを受け取ることができる、より公平で民主的な組織構造を作ろうとするものです。

ワイオミング州がパイオニアに

暗号資産(仮想通貨)やDAOに投機・投資資金が流入し続ける中、こうした新しい分散型機関の将来性を理解することは不可欠です。現在までに、ワイオミング州は米国の中でDAOを合法化した唯一の州であり、これにより別名カウボーイ州と呼ばれるワイオミング州はブロックチェーン投資家の注目を浴び、最も「暗号にフレンドリーな」管轄区域という評判を即座に獲得したのです。

他の49州はDAOを法人として認めていませんが、暗号資産業界が規模と勢いを増し続け、DAOが提供する多様で巨大な可能性から利益を得ようとする州が増えるにつれて、おそらく状況は変化していくことでしょう(2022年4月現在)。

ワイオミング州のDAO法は2021年7月1日に施行されていますが、州内に登録代理人を維持し、LLC(有限責任会社)としてのその他の要件を満たしていれば、LLCでのDAOの利用が認められます。

DAOの定款では、メンバー管理型かアルゴリズム管理型かを定義することができます。定款に明記されていない場合、ワイオミング州はDAOをメンバー管理型組織と見なします。アルゴリズム管理型のDAOの場合、基盤となるスマートコントラクトは、更新可能、変更可能、アップグレード可能でなければいけません。基盤となるスマートコントラクトが更新されるたびに、条文も新しい契約を反映するように更新されなければなりません。

ワイオミング州の法律では、メンバー管理型DAOの議決権は、組織メンバーの利益に基づいており、各メンバーのDAOへのデジタル資産の貢献を、投票時にDAOが保有するデジタル資産の合計額で割ったもので、従来の上場企業における株式の投票権と同様になっています。DAOへのデジタル資産の貢献がメンバーになるための前提条件でない場合、各メンバーは1票の投票権を持ちます。現行法では紛争解決はカバーされていないため、一部の議員は近々この点を改善することを望んでいます。

今後の改正で、DAOの定款やスマートコントラクトに、メンバー間の紛争を解決するためのプロセスを盛り込むことが義務付けられるかもしれません。この改正により、組織の創設者は、紛争発生後ではなく、組織設立時に、意見の相違に対処する最善の方法を検討することが奨励されるかもしれません。

ワイオミング州のDAO法が施行されたその日に、同州はAmerican CryptoFed DAOを同州初の合法的DAOとして認定しました。MShift Inc.によって設立されたAmerican CryptoFed DAOは、パブリックDAOであり、世界初のゼロインフレ、ゼロデフレ、取引コストのない通貨システムを構築・維持することを目的としています。MShiftのトークンが米国証券取引委員会(SEC)に提出され、認定された時点で、MShiftの権限と権利は、American CryptoFed DAOに委譲されました。

American CryptoFed DAOは、SECコミッショナーのヘスター・パース(Hester Pierce)氏がまとめたToken Safe Harbor Proposal 2.0に基づいた、ガバナンストークンを使用しています。Locke(ガバナンス)とDucat(ステーブル)と呼ばれるトークンを使用して、American CryptoFed DAOはガバナンストークンをSECに登録しました。

ガバナンストークンの保有者は組織のルールを設定しますが、変更する際には投票が必要です。取引記録はEOSブロックチェーン・プラットフォームに保存されます。ワイオミング州のDAO法は、DAO推進者にとって革新的でエキサイティングなものですが、DAOには利点と欠点があり、利害関係者は設立前にそれを知っておく必要があります。

DAOの利点と欠点

DAO設立の利点は、どの組織においてもクリエイターが最新メンバー以上の権力や票を行使することがないため、大概は民主的にプロセスが行われることです。組織やその戦略、事業目標を変更するためには、投票に基づく過半数のコンセンサスが必要です。組織のミッションは予め決まっており、ゴールはスマートコードに明確に書き込まれています。

つまり、DAOの購入に関心のある人は、購入前にその文書化された条件に同意する必要があります。また、スマートコードはメンバーを利益相反から守り、幹部や委員会が組織全体を犠牲にして自分たちの利益になるような決定を下すことを防ぎます。

しかし、DAOは新しい形態であるため、批判や誤情報、詐欺疑惑などに遭遇することがあります。多くの場合、コード内のDAO関連言語は、既存のビジネス構造に与えられている現実的な保護や法的メリットの多くを提供するものではありません。

DAOのコードには、セキュリティ上の欠陥や投票操作を可能にするような技術的な脆弱性が含まれている可能性があります。さらに、「営利団体」として指定されたDAOは全て、関連する連邦および州の規制を遵守する必要があります。

多くのオブザーバーは、DAOが生み出す大げさな盛り上がりに懐疑的であり、流行に過ぎないと考えています。また、DAOの基盤であるブロックチェーンに関する判例がほとんどなく、紛争を解決するための法的枠組みもないことから、DAOを効果的に規制することができるのか懸念している人もいます。

米国でDAOを設立する前に弁護士に相談すべき理由

DAOは革新的かつ斬新なものではありますが、複雑な問題を引き起こす可能性があります。したがって、そのメリットや可能性を利用しようとする個人や組織には、大きな危険と潜在的な落とし穴があります。

DAOを利用しようとする人は、ブロックチェーン初心者であれ暗号資産に詳しい人であれ、この急成長中の法分野を専門とする弁護士に相談し、DAOの設立、資金調達、分散型取引、クラウドソーシング、その他について適切なコンプライアンスや保護を確保し維持することが必要です。

寄稿者:David Hoppe(デイビット・ホッピ)David Hoppe(デイビット・ホッピ)
Gamma Law(ガンマ法律事務所)代表。デジタル・メディア、ビデオゲームとバーチャル・リアリティーを専門分野とし、最先端のメディア、テクノロジー関係の企業を、25年近くクライアントとしてきました。彼は、洗練さと国際的な視点を兼ね備え、スタートアップ業界、新興企業、またグローバル化使用とする企業の現実を、実践経験から理解する国際的な取引交渉弁護士です。
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
17:40
Web3インフラの進化はグローバル取引を変える|WebX2025
大型Web3カンファレンス「WebX」で「グローバル取引の絶対基盤: 世界を繋ぐインフラ戦略」をテーマとしたパネルセッションが開催され、Web3インフラの重要性と発展に向けた課題、そして10年後のグローバル取引の展望について活発な議論が交わされた。
15:00
人工知能と人間の創造性、消費者アプリの活用事例|WebX2025トークセッション
WebX2025で専門家が人工知能エージェントの可能性について徹底議論。創造性や、人間の仕事を消滅させる可能性、安全性や開発上の課題などを多角的に話し合った。
12:25
イーサリアム財団がプライバシー強化ロードマップ発表 3つの重点分野で取り組みへ
イーサリアム財団が包括的プライバシー構築のロードマップを発表。仮想通貨イーサリアムのネットワークが世界的な決済レイヤーになることを前提に3つの重点分野に取り組む。
10:00
アジア仮想通貨規制の現状と課題:香港・台湾の最新動向と地域連携の必要性|WebX2025
大型Web3カンファレンス「WebX」で、「アジアにおける規制フレームワークと今後の見通し」をテーマとしたパネルセッションが開催された。このセッションでは、香港と台湾の最新の規制動向から、仮想通貨規制におけるアジア諸国の国際協力まで、活発な議論が展開された。
09:55
「ビットコインは毎日最高値更新する必要はない」アーサー・ヘイズが語るBTC長期投資の真価
仮想通貨アナリストのアーサー・ヘイズ氏が、各国の金融緩和政策を背景にビットコインの長期的上昇を予想した。4年サイクルよりもマクロ見通しが要因になるとしている。
09/14 日曜日
16:00
DeFiが抱える最大の課題は? トークン化時代見据えソラナ財団らが議論|WebX2025
WebX2025でソラナ財団やBNBチェーンからDeFiの専門家が集いパネルセッションを行った。現在の課題やトークン化などの潮流、今後の各プロジェクトの展望を議論した。
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、トム・リーのBTC年内20万ドル到達予測やDOGEのETF上場計画など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナなど主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
来週FOMCの焦点は? テクニカル的な買いがビットコイン相場を押し上げる可能性|bitbankアナリスト寄稿
bitbankアナリスト長谷川氏による今週のビットコイン週次レポート。米雇用統計の大幅下振れとインフレ鈍化を受けFRB利下げ期待が高まり、BTC円は8月23日ぶりに1700万円を回復した。来週のFOMCでは年内3回の利下げ織り込みと政策金利見通し下方修正が焦点。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|新経連の仮想通貨税制改正提言に高い関心
今週は、トークン化されたポケモンカードのブーム、ナスダックのトークン化株式の取引承認申請、一般社団法人新経済連盟の仮想通貨税制改正提言に関する記事が最も関心を集めた。
09/13 土曜日
15:00
日本のRWAトークン化の最前線、市場の特徴や展望は?|WebX2025
日本のRWAトークン化市場についてWebXでディスカッションが行われた。最前線にいるプレイヤーを招き、市場の特徴や展望、制度上の課題などについて話してもらった。
10:35
ビットコイン上昇鈍化、株との相関崩れる:トレジャリー企業動向と利下げ観測が焦点|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは上値の重い推移を続けている。米株価指数や金(ゴールド)が最高値圏に位置している一方で、ビットコインは上昇に伸び悩んでいる。その背景は?
10:00
コインベース、SECの文書破棄を問題視 裁判所に制裁求める 
仮想通貨取引所コインベースが米証券取引委員会の公文書破棄を問題視し、連邦裁判所に制裁措置を求めた。ゲンスラー前委員長のメッセージが破棄されていたことが監査で判明した。
09:45
Blockstreamら3社、東京で非公開のイベント開催
仮想通貨ビットコインのインフラ開発企業Blockstreamらは東京で非公開のイベントを開催。テーマは「ビットコインとRWAでアジアの金融変革を推進する」である。
08:40
イーサリアム、機関投資家需要拡大でオンチェーン活動が過去最高水準到達
Cryptoquantの最新レポートによると、イーサリアムは機関投資家の需要拡大により強固な上昇サイクルを示している。
07:10
ポリマーケット、90億ドル評価で資金調達検討 チェーンリンク提携も
予測市場プラットフォームのポリマーケットが90億ドル評価での資金調達を検討している。競合のカルシも50億ドル評価での調達を進めており、両社の成長が加速している。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧