はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 取引所 WebX
CoinPostで今最も読まれています

NFTのロイヤリティーを取り巻く法的論点とは|Gamma Law寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ファースト・セール理論とは

追及権とは、アーティストが作品を最初に販売した後にその作品の価値が上昇し、その後転売される場合にその上昇した価値、すなわち転売取引額に対して一定のパーセンテージを受け取れる権利です。所有者や収集家がアーティストのオリジナル作品を転売する際にその収益の一部をそのアーティストが受け取ることができる権利ですので、芸術家にとって重要な収入源となっています。

追及権は1920年代にフランスで認められ、現在でもヨーロッパ全域では一般的な権利として確立していますが、アメリカ著作権法には追及権は含まれておりません。アメリカ著作権法ではファースト・セール理論に基づき、アート作品の合法な所有者は、著作者であるアーティストの許可なしに、購入し所有している作品、著作物を自由に転売、配布、譲渡できる、と規定しています。つまり、購入した絵画や彫刻などの美術品は、家や車などの所有物と同じように扱われるべきという理論です。

NFTアートに関しては、デジタル化して出品するミンターやアーティストにとって、価値上昇を伴う転売による収益がその価値の多くを占めると言えます。追及権、ファースト・セール理論、両者の組み合わせ、またはその他の法的概念のどれを適用すべきかを判断することは、NFT業界の今後の経済的活力に大きな影響を及ぼします。

本稿では、NFTアートワークとビデオゲーム開発におけるトークンの使用に関して、追及権およびファースト・セール理論の位置付けについて検討します。

追及権とNFTの徹底検証

追及権とは、アーティストが自分の作品を安価で売られることを防ぐためのものです。この仕組みは、作品が転売されるたびにクリエイターに売上の一部が支払われ、クリエイターはコレクターや投機家と共に作品の評価に参加することができるというものです。

1920年代にフランスを席巻した「狂乱の時代」に端を発して以来、追及権(droit de suite)は欧州全域で政策的に認められ適用されています。しかし、米国連邦法に盛り込む試みは何度もなされているものの、現在の米国著作権法は、追及権を認めていません。

アーティストが自分の作品のNFTを販売する場合、一般的な販売契約には、最初の販売時だけでなく、その後の転売時にもロイヤリティを受け取ることができる仕組みが含まれています。ブロックチェーンのスマートコントラクトは、支払い取引を追跡し、アーティストにロイヤリティを分配します。

NFTは、プレイヤーがゲームプレイ、トレード、第三者販売を通じて獲得できるゲーム内資産として使用されることが多くなっているため、ゲーム会社にとって追及権の重要性が増しています。 一般的な慣行として、ゲーム会社はNFT資産を法人著作(work-for-hire)またはワークプロダクトとして作成し、追及権を自社で保持することで、希少価値の高いアイテムから継続的に収益を得ることができます。

しかし、クリエイティブ資産の権利を購入したゲーム会社は、プレイヤーがゲームプレイ中にスキン、武器、仮想不動産、コレクターズカードを販売したり、二次市場で取引することで、アーティストが受動的所得を得られるようアレンジすることができます。ただし、米国の著作権法では追及権を認めていないため、スマートコントラクトに基づくロイヤリティに関する規定が、米国で事業を行うゲーム会社に適用されるかどうかは不明です。

ファースト・セールを再度見直す

米国の著作権法は追及権を認めておらず、著作権で保護されたオリジナルの著作物が販売されると、その購入者とそれ以降のすべての購入者は、オリジナルのアーティストや著者を補償することなくその著作物を自由に転売できると定めています。

このファースト・セール理論は、追及権とは正反対のものです。しかし、相次ぐ司法判断によると、デジタル著作物にはファースト・セール理論は適用されないとされています。

例えば、キャピトル・レコード社 v. ReDigi 社訴訟では、米国第2巡回控訴裁判所が、デジタル音楽ファイルの転売は著作権者の複製権を侵害する無許可の複製を必要とするため、ファースト・セール理論は適用されないと判示されました。

同様に、ディズニー・エンタープライズ社 v. Redbox Automated Retail社訴訟において、米国カリフォルニア中央地区連邦地方裁判所も、デジタル・ダウンロードコードにはファースト・セール理論が適用されないと判示しました。なぜなら、映画のダウンロード・コードの販売は、本質的に、著作物の特定の固定されたコピーではなく、将来のある時点で物理的なコピーを作成する能力を付与するものだからです。

ファースト・セール理論はNFTに適用されうるか?

既存の判例に基づけば、オーディオファイルやデジタル画像のようなデジタルオブジェクトと結びついたNFTには、ファースト・セール理論は適用されないと思われます。言い換えれば、絵画、デジタル音楽ファイル、写真など、著作物のデジタル版を転売・頒布する権利は、著作権者に独占的に帰属するのです。

しかし、限定的な形での契約は可能かもしれないので、通常は転売を認めることが著作権者の利益となります。米国著作権法では追及権を認めていませんが、NFTの販売契約書では、ゲーム内資産を第三者に転売する場合、転売者が著作権者にロイヤリティを支払う義務があるように記述することができます。

これらの規定はスマートコントラクトにより実行され、取引が発生するたびに正確かつ一貫して適用されるようにすることができます。こうすることで、NFT販売契約の条項に基づき転売ロイヤリティを受け取ることができるため、転売を許可することは著作権所有者の利益となるのです。

さらに、デジタルアート作品の合法的な所有者が、ゲーム内のデジタルアセットやNFTを不正にミンティングしようとするケースに、ファースト・セール理論が適用される可能性は低いと思われます。

デジタルアート作品の「所有権」は、特定のコピーの実際の所有権というよりも、作品にアクセスするためのライセンスの所有に近いため、アート作品をNFTに変換する権利は著作権者のみが有します。物理的なアート作品の合法的所有者が、著作権者の同意なしにNFTをミンティングしようとした場合も、同様な結果となる可能性が高いでしょう。

結論

NFTのようなデジタル資産の人気と利用が急増する中、ファースト・セール理論の適用が不透明なため、裁判所はこれらのユースケースに特化したファースト・セール理論を起草せざるを得なくなるかもしれません。

一方、NFTの販売にファースト・セール理論が適用される可能性は低いと思われます。なぜなら、買い手がゲーム内のNFTを購入する場合、NFTが示す資産のデジタル版へのリンクを取得することになるからです。

これは、デジタル著作物のコピーを作成するオプションとして機能しますが、米国の裁判所は現在、デジタル著作物に対するファースト・セール理論を認めていません。しかし、NFTの販売契約においてロイヤルティ規定を限定的に組み込むことは可能かもしれません。この複雑な問題に関しては、著作権、契約、NFT を専門とする弁護士に相談するのが最善です。

寄稿者:David Hoppe(デイビット・ホッピ)David Hoppe(デイビット・ホッピ)
Gamma Law(ガンマ法律事務所)代表。デジタル・メディア、ビデオゲームとバーチャル・リアリティーを専門分野とし、最先端のメディア、テクノロジー関係の企業を、25年近くクライアントとしてきました。彼は、洗練さと国際的な視点を兼ね備え、スタートアップ業界、新興企業、またグローバル化使用とする企業の現実を、実践経験から理解する国際的な取引交渉弁護士です。
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
05/06 水曜日
13:47
リップル、北朝鮮脅威インテリジェンスをCrypto ISACで共有開始 仮想通貨業界の集団防衛強化
リップル社が北朝鮮関連脅威インテリジェンスをCrypto ISACで業界で初めて共有開始する。Drift Protocolハック(被害額約440億円)を契機に、業界でインテリジェンス共有の動きが高まった。詐欺ドメイン・攻撃者プロフィール等を共有し、仮想通貨業界の集団防衛体制強化を目指す。
12:22
ストラテジー、2026年1~3月期決算 ビットコイン含み損で2兆円の損失計上
最大のビットコイン・トレジャリー企業ストラテジーが2026年1〜3月期決算を発表。BTC価格の急落により144億ドルの含み損が発生。一方、5月時点では含み益に転換している。
10:46
米上場セカンス、転換社債償還でビットコインを売却 昨年末の約半分に減少
米上場セカンスが転換社債償還のため2025年末から1,025BTCを売却、4月末保有残高は1,114BTCに。実現損1,170万ドルと評価損2,930万ドルが重なりQ1純損失は5,430万ドルに達した。
09:52
「量子コンピュータのリスクはビットコイン価格下落の主因ではない可能性」グレースケール見解
グレースケールのリサーチ責任者が、量子リスクは仮想通貨ビットコイン価格下落の主因ではない可能性が高いと分析した。量子関連株とBTCの相関を解説している。
09:37
HYPEのDAT保有比率が流通量の約9%に、BTCやETHなどを上回る=レポート
ビットコイン・スイスの分析によると、HYPEのDAT保有比率が流通量の約9%に達し、BTC・ETH・SOL・BNBを上回る。ETF申請の進展も加わり、需給構造が注目される。
08:56
米CME、ビットコイン・ボラティリティ先物を6月1日に上場へ
CMEグループが6月1日、世界初の規制対応ビットコイン・ボラティリティ先物を上場予定。BVXに連動し、価格方向性ではなく変動リスクを直接取引できる新商品で、規制当局の審査を経て提供される。
08:25
TDコーウェン「銀行と仮想通貨企業に妥協点なし」 クラリティ法案成立リスクが高まる
米投資銀行TDカウエンは、銀行5団体がステーブルコインのイールド妥協案に反発したことを受け、クラリティ法案の今年中の成立リスクがさらに高まったと警告した。
05/05 火曜日
13:17
米SEC、予測市場ETFに追加情報要求 上場一時延期
米SECが予測市場連動型ETFの上場を延期した。3社・24本超が対象で、商品設計と開示の追加情報を要求している。予測市場を巡っては、インサイダー取引への警戒感やCFTCと州政府との管轄権争いも背景にある。
11:31
ビットマイン、保有イーサリアムが518万枚に到達 強気姿勢を維持
ビットマインが保有する仮想通貨イーサリアムが時価1.9兆円相当に達した。ETH総供給量の4.29%超に相当する。リー会長は仮想通貨市場の回復に強気の見解を示している。
11:07
ビットコイン・オンチェーン活動が2年ぶり低水準、価格回復との乖離が鮮明=Santiment
オンチェーン分析のサンティメントが、BTCが8万ドルを回復するなかオンチェーン活動が2年ぶり低水準に落ち込んでいると指摘。価格上昇の持続性に注意が必要だと警告した。
10:38
テザーゴールド、2026年第1四半期準備金が36%増 時価総額約5200億円に
テザーが2026年Q1のテザーゴールド(XAUT)準備金報告書を発表。現物金準備は36%増の約70万7,747トロイオンスとなり、時価総額は33億ドル超に拡大した。
10:02
ビットコイン3カ月ぶり8万ドル回復、クラリティー法案進展期待で市場心理回復|仮想NISHI
ビットコインが約3か月ぶりに8万ドルを突破。クラリティー法案の進展を背景に機関投資家のリスク選好が強まり、恐怖・強欲指数も1月以来初めてニュートラル圏を回復した。
09:45
送金大手ウエスタン・ユニオンがステーブルコイン「USDPT」をソラナ基盤でローンチへ
送金大手ウエスタン・ユニオンが仮想通貨銀行アンカレッジと組み、ソラナ上で米ドル建てステーブルコイン「USDPT」をローンチする。消費者向けサービスを40か国以上で展開予定だ。
09:17
スコットランドの私立校、ビットコイン奨学金を創設 BTC準備金の構築も計画
スコットランドの私立校ロモンド・スクールが、ビットコインコミュニティの寄付による全額給付型奨学金「サトシ・スカラーシップ」を創設。2年間の授業料・寄宿費を全額負担し、世界中から応募を受け付ける。同校はBTC準備金の構築も開始した。
08:37
ストライブ、ビットコイン保有数が1万5000BTCを突破、444BTCを追加取得
米ストライブが444BTCを約49億円で追加取得し、ビットコイン保有総数が1万5,000BTCに到達。優先株SATAを通じた独自の財務戦略で機関投資家からの注目が高まっている。
今から始める仮想通貨特集
通貨データ
重要指標
一覧
新着指標
一覧