シベリアの仮想通貨マイニング事業撤退へ
SBIホールディングスは15日、ロシアのシベリア地域で行っていた暗号資産(仮想通貨)マイニング事業を停止しており、今後撤退することを明かした。背景にはロシアへの経済制裁がある。
決算説明会で、勝地英之常務執行役員が、現在シベリアでのマイニングは運営停止しており、機器の売却、撤退の方針を進めていると説明した格好だ。
SBIの広報担当者は、ロシアのウクライナ侵攻により、シベリアのマイニング事業の見通しが不透明になり、さらに、世界的に仮想通貨の市場下落が起きたことにより、仮想通貨マイニングの利益が低下したと述べている。
また、SBIは戦争開始後すぐに、シベリアでのマイニングを停止していたとも話した。撤退が完了する時期についてはまだ決定しておらず、ロシア以外の国で行っているマイニング事業については継続すると説明している。
マイニング事業の停止や市場下落などの影響も受けて、同社の暗号資産事業は第1四半期(4~6月)に約97億円の税引き前損失を計上することになった。SBI全体では、前年同期が約290億円の黒字だったところ、今期は約24億円の純損失(赤字)が発生している。
なお、売上高は2,321億円と四半期で過去最高だったが、暗号資産事業の他に、投資先であるベトナムのTPバンクの株価下落なども損失の原因になった。
対露経済制裁
7月には、米国政府が外交ルートを通じて、日本の仮想通貨事業者にロシアとの関係を断つよう圧力をかけていたことが伝えられていた。この時点で、まだいくつかの日本の事業者がロシアで運営していたとされる。
特に米国は、シベリアのイルクーツク地方を拠点としている仮想通貨マイニング事業を停止させることを目的としていた。
米財務省は4月、ロシアに対する制裁強化策を発表。その際に、銀行などの金融機関以外にも、シベリアなどで運営している仮想通貨マイニング業者ビットリバーを制裁対象として追加していた経緯もある。「ロシアの天然資源のマネタイズに貢献している」としていた。
IMFの分析
国際通貨基金(IMF)は4月、グローバル金融安定性報告書を発行し、その中でロシアのウクライナ侵攻に関わる状況についても分析している。
IMFは、仮想通貨による制裁回避の文脈でマイニングが利用されることについて、次のように説明した。
制裁を受けた国は、今後時間が経つにつれ、仮想通貨マイニングにより制裁を回避するために多くのリソースを割り当てる可能性がある。ビットコイン(BTC)のようなエネルギー集約型のブロックチェーンのマイニングにより、制裁により輸出が制限されるエネルギー資源を各国がマネタイズすることができるようになる。
一方で、4月時点では、どの指標もこれに関連する持続的な取引量増加を示してはいないとした。
さらに、取引手数料を支払うユーザーからマイニング事業者へ収益が入ることも指摘。4月の報告書執筆時点では、こうした資金フローの規模は比較的抑えられていると分析している。
英ケンブリッジ大学のデータによれば、22年1月時点で、ロシアは世界のビットコイン(BTC)ハッシュレートにおいて4.7%の割合を占めていた。同時点で、ハッシュレートの割合は1位が米国(37.8%)、2位が中国(21.1%)、3位がカザフスタン(13.2%)、4位がカナダ(6.5%)で、ロシアはカナダに次ぐ5位であった。
ハッシュレートとは
マイニングの採掘速度のこと。日本語では「採掘速度」と表現される。単位は「hash/s」。「s」は「second=秒」で、「1秒間に何回計算ができるか」を表す。マイニング機器の処理能力を表す際や仮想通貨のマイニングがどれくらいのスピードで行われるかを示す指標として用いる。
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