分散型技術の制裁
暗号資産(仮想通貨)支持派のTom Emmer米議員は23日、米国財務省外国資産管理局(OFAC)がミキシングサービス「Tornado Cash(トルネードキャッシュ)」を制裁対象にしたことを受け、Janet Yellen財務長官に対し書簡を送付したことを公表した。
分散型技術の普及が広がることはOFACに新たな課題をもたらす可能性は高いが、技術は中立であると主張。米国民がプライバシーを望むことは正常なことであるとも指摘した。
I sent a letter to Treasury Secretary Yellen regarding the unprecedented sanctioning of Tornado Cash. The growing adoption of decentralized technology will certainly raise new challenges for OFAC. Nonetheless, technology is neutral and the expectation of privacy is normal.⬇️ pic.twitter.com/0aN4a4A6tb
— Tom Emmer (@RepTomEmmer) August 23, 2022
トルネードキャッシュとは
イーサリアム(ETH)のブロックチェーン上で動作し、取引を匿名化するミキシングサービス。ミキシングサービスとは、仮想通貨の取引データを複数混ぜ合わせることによって、仮想通貨の出所や保有者のアイデンティティを隠すサービスを指す。
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OFACがトルネードキャッシュを制裁対象に指定したことを発表したのは今月8日。その後は業界からも批判の声が上がり、関与した開発者がオランダの捜査機関に逮捕されたり、トルネードキャッシュを使用したウォレットを持つユーザーがDeFi(分散型金融)プラットフォームでブロックされたりして、影響が広がっている。米仮想通貨シンクタンク「Coin Center」は、OFACを訴訟することを検討するとも公表した。
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Emmer氏は書簡の中で、今回の制裁は人や組織ではなく、プライバシー保護を可能にするコードを対象にしている点で、珍しい事例であると指摘。トルネードキャッシュはオープンソースのコードであり、組織や人によって管理されていないと説明した。そして、中立でオープンソースの分散型技術を制裁対象にすることは、国家の安全保障だけでなく、米国民のプライバシーの権利にも影響を与えると述べている。
またEmmer氏は、米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)が過去に、匿名化サービスの提供者は銀行秘密法に従う義務があるが、匿名化用のソフトウェアの提供者は従う必要はないと区別するガイダンスを出したことを説明し、両者は区別されるべきではないのかと主張。OFACはFinCENの規制に影響を受けるわけではないと認識しているが、FinCENはミキサーなどの定義を行う財務省の機関であると指摘した。
そして、「制裁リストに加えたイーサリアムアドレスは、顧客のために価値を送受信できる人によって所有・管理されていると考えているのか?考えているのであれば、それは誰によって所有・管理されているのか?」、「トルネードキャッシュは法を遵守している無実の米国民もプライバシー保護のために使っているが、彼らは現在凍結されている資産を引き出せるのか?」など、7つの質問に回答するよう財務省に求めている。