「リアルな製品」に投資
大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスのChangpeng Zhao最高経営責任者(通称CZ氏)はブルームバーグとのインタビューで、今年は合計約1,450億円(10億ドル)を企業買収と投資に費やす可能性を示唆した。
ブルームバーグによると、バイナンスは今年、67の仮想通貨関連プロジェクトに、昨年の倍以上となる約470億円(3億2500万ドル)を投資。仮想通貨以外の分野では、イーロン・マスク氏のツイッター買収のための融資(727億円≒5億ドル)と米フォーブス社への投資(290億円≒2億ドル)の可能性が明らかになっている。
CZ氏は、相場の低迷が続く仮想通貨業界を救うため、50社以上と救済策を協議していると7月に明かしていた。今回のインタビューで同氏は、投資の条件として企業が提供する「本質的な価値」の重要性を強調し、次のように述べた。
ここ数カ月、我々は多くの貸し手を見てきた。なぜならそこにすべての問題があるからだ。その多くは、ユーザーの資金を奪って他の誰かに渡すだけで、本質的な価値はほとんどない。その場合、何を買収するというのだ。我々は人々が使うリアルな製品を見たいのだ。
同氏は、この弱気相場で市場の統合が進むと見ており、「多くのリスクと痛みを伴う一方で、チャンスも多く存在する」とコメントした。
バイナンスの投資対象は
CZ氏は7月、弱気相場は人材強化に最適な時期であるとして、投資対象に「人材の採用」をあげ、今年中に2,000人を採用する予定だと述べている。
今回のインタビューで同氏は、分散型金融(DeFi)が提供する機能に信頼を寄せていることを強調。NFTやファントークンのエコシステムに投資していることを明らかにした。NFTに関しては「サルの写真を売るよりもっと多くのことが可能だ」と指摘し、次のように述べた。
ユースケースとしては、チケットや大学の学位のためのNFTなどがあるが、ほとんどうまく構築されていない。私はこの技術が根付いていくと考えている。
さらにCZ氏は、既存の決済サービスプロバイダーへ投資していると明かし、今後は従来のEコマース企業やゲーム会社に投資する可能性も示唆した。
ファントークンとは
ファントークンは、スポーツチームなどがチーム運営やファンとの関わりを強化することなどを目的に独自に発行するトークンのこと。ブロックチェーン上で発行され、チーム運営などに関わる投票や、各種企画に参加する「権利」として販売され、チームの新たな資金調達手段として機能するほか、トークン購入を通じて応援するサポーターとの持続的な関係性の構築に繋げることができるとして、世界中で普及しつつある。
▶️仮想通貨用語集
関連:バイナンス、ファントークン指数のパーペチュアルを提供予定
「イノベーションは止まらない」
バイナンスは6日、公式ブログで同社の9月の活動を総括する中、ベンチャーキャピタル部門であるバイナンスラボが、Web3のインフラをサポートするため、以下の6つのプロジェクトに投資したことに言及した。
- ブロックチェーンデータ企業「Bigquery」
- Web3インフラプロバイダー「Mysten Labs」
- ブロックチェーンセキュリティ企業「Salus Security」
- レイヤー1ブロックチェーン「Aptos」
- ソーシャルネットワークプロジェクト「Hooked Protocol」
- ネーミングサービスネットワーク「Space ID」
バイナンスラボは9月15日、新たなレイヤー1ブロックチェーンプロジェクトであるAptosに2回目の出資を行ったと発表していた。同社はイーサリアムやソラナなどと競合する新たなスマートコントラクトプラットフォームとして、Aptosに注目しているようだ。
関連:バイナンスラボ、新ブロックチェーン「Aptos」に2回目の出資
CZ氏は7月に「バイナンスは純粋なWeb3企業」であるとの認識を示し、Web3サービス提供に専念すると述べている。また、当面株取引を提供する予定はないと付け加えた。この発言は、5月に米国の一部のユーザーを対象に株式取引プラットフォームを立ち上げた大手取引所FTX USの動きを意識したものと受け止められている。