- 国家によるデジタル通貨の必要性
- ロイターの元コラムニストAndy Mukherjee氏は、日本銀行の経済悪化に対し、国家がデジタル通貨を発行することが打開策になり得ると言及した。大規模金融緩和を実施するも、インフレ率のバロメーター「CPI」の推移は、黒田総裁の目指す2%に届いていない。
- デジタル通貨とは
- 伝統的な貨幣など、物理的通貨と類似の性質を持ちながら、国境を越えた所有権の移転が瞬時に可能になるもの。仮想通貨もデジタル通貨の一種。
日本経済の現状
2013年に日本銀行総裁に着任した黒田東彦氏は、デフレ脱却、2%のインフレ実現に向けて様々な策を講じてきました。
就任以前の2012年末に、138兆円であったマネタリーベース(日銀が供給する通貨)を2015年末までには300兆円近くまで引き上げ、その後も増加の一途を辿っています。
2016年には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定し、金利部分では、日本銀行当座預金を3段階に分類、それぞれにマイナス金利、ゼロ金利、プラス金利を適用し、量的緩和では、マネタリーベースが年80兆円相当の増加が行われるように調整しました。
質的緩和では、長期国債、ETF、J-REITなどの買い入れを行い「金利」「量」「質」の3つの側面から金融緩和を試みています。
しかし現状、インフレ率を計る一つのバロメーターである日本のCPI(消費者物価指数)の推移は、2018年時点で黒田総裁が目指していた2%に届いていません。
国家によるデジタル通貨の必要性
そんな中、ロイターの元コラムニストAndy Mukherjee氏は、国家デジタル通貨を発行することがその打開策になるのではないかと言及しました。
Mukherjee氏は、これらの金融政策が薬の役割を果たし、日本の経済を生き延びさせていることを認める一方で、その副作用も否定できないと指摘。日銀は、マネタリーベースを過去5年間で3倍に増加させたにも関わらず、インフレ増加率2%を実現できていないことに懸念を示しています。
さらに彼は、目標が実現できていないだけでなく、「マイナス金利政策」によって、日本の銀行の収益が悪化していると語りました。
消費者が銀行に預金する際に、マイナス金利を実施されれば、現金という資産保存の代替手段が残っているため、銀行は消費者にマイナス金利を実施することができず、銀行自体にその負担がのし掛かっていると言及しました。
そして、現時点で日本のキャッシュレス化は他国ほど進んでおらず、総取引の80%ほどが未だ現金で行われているとされています。
マイナス金利を続けるためには、現金主義から移行させる必要があり、そのために、内閣総理大臣である安倍首相が民間にも介入し、現金から政府発行のデジタル通貨に代替させるべきだと持論を述べました。
この政府によって裏付けられたデジタル通貨が実現することで、日銀や財務省が対価を取らずに市場に供給することができる”ヘリコプター・マネー”と呼ばれる政策を実現することができ、マイナス金利下における通貨供給を行うことができるようになると予想しています。
最終的には、その効率的な通貨供給により、消費意欲も高まり、インフレを後押しし、日銀がそのヘリコプター・マネーを主要政策として取り入れることで、ETFや社債などのポジション整理を始めとするアンワインドを行い、資産市場を適切に戻す役割も果たすと言及されています。
ここ数年間で、スウェーデンもキャッシュレス化に向けて急速に取り組み始めており、2023年までには現金をゼロにすることを目標にしています。
HBSCの経済アナリストを務めるJames Pomeroy氏は、スウェーデンが国家デジタル通貨を発行する最初の国になるのではないかとも予想しており、完全なるデジタル通貨社会では、通貨供給を効率的に行えるだけではなく、消費者、銀行、販売者などに対して、より高い効率性を提供することに繋がると考えられているのです。