FATF勧告対応法案の可決・成立
マネーロンダリング対策を目的として、犯罪収益移転防止法などに関連する6つの法律の改正案が2日の参院本会議で可決、成立した。NHK WEBなどが報じた。
このほど参院本会議で可決されたのは、犯罪収益移転防止法や国際テロリスト財産凍結法など、マネロンに関連する6本の法律を束ねた「FATF勧告対応法案」。
暗号資産を活用した資金移動の監督方法、及び違反者への罰則の引き上げ、北朝鮮やイランなどの核開発に携わる制裁対象者への資金供与対策を強化する内容となる。
FATF勧告対応法案は、21年8月に公開されたFATFによる第4次対日相互審査報告書に対処するために作成された。22年10月に内閣官房により国会に提出され、11月11日に衆院内閣委員会で可決していた。
第4次対日相互審査報告書では、暗号資産交換業者に関して、マネロン・テロ資金供与リスクに基づく監督上の措置について改善する必要があると指摘。今後取り組むべき具体的な優先課題として、取引モニタリングの実施、資産凍結措置、継続的な顧客管理などを挙げられた。
FATFとは
「Financial Action Task Force」の略で、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与対策(CFT)を監督する国際的な組織のこと。提示するルールや勧告自体に法的拘束力はないが、加盟国に対して審査を実施し、AMLやCFTにおける非協力国リストを公開するため、大きな影響力を持っている。FATFには主要7カ国(G7)を含む約40の国や地域、機関が加盟している。
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トラベルルールへの対応
犯罪収益移転防止法の改正により、暗号資産の交換を行う事業者に対して、利用者の氏名などの情報を確認し、事業者間で通知する義務を課すことで資金の流れを追跡しやすくする。
この措置は、国際的な協調を図るためにFATF(金融活動作業部会)が提唱している「トラベルルール」に基づいている。利用者の依頼を受けて仮想通貨の送付を行う交換業者は、送付依頼人と受取人に関する一定の事項を、送付先となる受取人側の交換業者に通知しなければならない。
外為法の改正では、22年6月の資金決済法改正において新設されたステーブルコインへの資産凍結措置も強化する。ステーブルコインは仮想通貨の一種で米ドルなど法定通貨に連動させて価格の安定を図るもの。
これまでステーブルコインの取引業者は、銀行等や暗号資産交換業者のように制裁対象者に関する移転でないことを事前に確認する義務がなかったが、これに追加される。
一方、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は自主規制規則でトラベルルールを導入。国内で事業を展開する複数の暗号資産取引所は、自主的にトラベルルールへの対応を進めてきた。コインチェックやGMOコインなど、主な国内取引所は22年4月前後から対応を開始している。
10月からは新たに「送金目的」を取得・保存するなどの処置も追加されており、交換業者も対応を継続している。
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