FTXサム前CEO、無罪を主張
破産申請した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXのサム・バンクマン=フリード前CEOは22日、ニューヨーク州南部地区裁判所に出廷し、詐欺やマネーロンダリングなどの容疑についてふたたび無罪を主張した。
フリード被告は昨年12月、約364億円(2億5千万ドル)の保釈金で釈放され、両親の家で監視下に置かれていたが、証人へ干渉しようとした疑いで8月11日よりふたたび収監されている。
今回は保釈が取り消され、再収監されてから初の出廷となった。なお、フリード被告は1月にもニューヨーク地裁において詐欺などの刑事告発について無罪を主張している。
弁護団の要請
フリード被告の弁護士を務めるマーク・コーエン氏は、刑務所の環境について申し立てた。
フリード被告は完全菜食主義者だが、刑務所にはビーガンの選択肢がないために、被告はパンと水しか摂取していないと主張している。また、注意欠陥・多動性障害の薬なども与えられていないと続けた。
また、別の弁護士クリスチャン・エヴァーデル氏は、フリード被告が証拠開示の際に作成された大量の文書を確認して分析するためには、インターネット対応のラップトップコンピューターを使用できる必要があると述べた。
現在の状況では、こうした能力が制限されているために、裁判に備える権利が剥奪されていると申し立てた形だ。
ダニエル・クドラ検事補は、インターネットへのアクセスについては、すでにカプラン判事の前で説明を受けており、カプラン判事は要請を拒否した経緯があると指摘した。
カプラン氏は、証人への干渉未遂という犯罪を結論付け、フリード被告の再投獄を命じた判事だ。フリード被告がFTXの法務顧問と連絡を取ろうとしたことや、元恋人でFTX姉妹会社前CEOのキャロライン・エリソン氏が被告にあてた個人的な文章をニューヨーク・タイムズ記者に共有したことが犯罪を構成するとしていた。
なお、エリソン氏は、裁判でフリード被告に不利な証言をすることに同意した元FTX関係者3人のうちの1人でもある。カプラン判事は、再収監を決定する際に、インターネットについて却下していた経緯がある。
今回、公聴会を主宰したサラ・ネットバーン判事は、コンピューターへのアクセスに関するカプラン氏の決定を覆すつもりはないと述べた。一方で、拘置所にフリード被告に対する薬や食事の提供を改善してもらえるか検討するとしている。
FTXとは
バンクマン=フリード被告が率いていた仮想通貨取引所。2019年の創設後、急速に頭角を表し、業界最大手バイナンスに次ぐ大手取引所へと成長していた。その後に経営破綻し、昨年11月に破産申請を行なっている。
▶️仮想通貨用語集
裁判は10月より開始予定
フリード被告に対する裁判は10月初旬に始まる予定だ。
被告は、米司法省からは詐欺やマネーロンダリング、選挙資金の不正提供の容疑で、FBIからは、電信詐欺や商品詐欺、証券詐欺、連邦選挙委員会に関連した違反を含む複数の容疑で起訴されている。
検察側と弁護人側は21日に、裁判所に対して陪審員への説明案を提出したところだ。
その中で弁護人側は、顧客資金流用に関して、被告が詐欺の意図を持っていたわけではない可能性があると指摘していた。
もし被告が「ビジネス上の問題としてFTXがすべての顧客の出金要求に対応できると信じて行動していたのであれば、詐欺をするという意図を持って行動したわけではない」 と述べる格好だ。