「特定可能な被告が存在しない」と判断
ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所は29日、分散型取引所Uniswap(ユニスワップ)に対する集団訴訟を全面的に棄却した。
キャサリン・ポルカ・ファイラ判事は、「プロトコルの非中央集権的な性質により、詐欺トークンの発行者の身元は基本的に不明であり、特定可能な被告がいない」と結論した格好だ。
この訴訟は2022年4月、ネッサ・リズリー氏を代表とするトレーダーらが、ユニスワップが証券法に違反して、未登録有価証券である暗号資産(仮想通貨)トークンを提供していたとして告発していたものだ。
証券法で規制できなかったことで、詐欺的なトークンの上場を許し、こうしたトークンの発行会社が投資家を騙すことが可能になっていたと申し立てていた。
DEX(分散型取引所)とは
ブロックチェーン上に構築される非中央集権型取引所。「分散型取引所」の英訳である「Decentralized EXchange」から「DEX」とも呼ばれる。中央管理者を介さずに当事者間で直接取引を行うため、管理者に支払う手数料が不要で、その他に流動性が低い、秘密鍵をユーザーが管理するなどの特徴がある。
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判決の背景
ファイラ判事は、ユニスワップの取引所機能の基盤となるスマートコントラクトと、取引所に上場する各トークンの発行者が、そのトークンの取引を可能にするために作成する流動性プールのコントラクトを区別するべきだと指摘している。
その上で、原告らの被った損害に関連するコントラクトは、被告(ユニスワップ)が提供している取引所自体のものではなく、トークン発行者により提供されたコントラクトの方だと述べた。
このため、ユニスワップの中核となるスマートコントラクトそれ自体は「違法なものではない」と結論している。問題となった詐欺的なトークン以外はイーサリアム(ETH)やビットコイン(BTC)の取引などと同様、合法的に取引を実行することができていたとも続けた。
ファイラ判事は、DeFi(分散型金融)プロトコルのスマートコントラクトについて判例は欠如していると認めつつ、次のように説明している。
裁判所は、申し立てられた行為(DeFiにおける詐欺的トークンによる被害)を対象とするために証券法の範囲を広げることは拒否する。原告の懸念は、議会に訴えたほうがよい問題だと結論づけた。
今回の件は、証券法を強引に当てはめるよりも、議会に対してDeFiに関する規制を策定するよう求めていくべきだとする格好だ。
仮想通貨コミュニティからは、今回の判決で判事が、分散型金融に深い理解を示しているという称賛の声も聞かれている。
SECがDeFiに関する規制を提案
米国では、DeFiに対する規制が議論され始めているところだ。
米証券取引委員会(SEC)は4月、従来の証券取引所に対する規則を、DeFiにも適用できることを明確化する提案を可決している。
この際、ゲーリー・ゲンスラーSEC委員長は「証券の買い手と売り手が、ある構造化されたプラットフォームで集まり、取引を交渉する場所」について、規則遵守の対象になると説明していた。
この定義の下では、資産売買のために買い手と売り手を結びつけるDeFiプロジェクトも対象となり、証券事業者として登録しなかった場合、民事告発の対象となる可能性が浮上するとみられる。
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