ETH供給量が純増に転じる
イーサリアム(ETH)ネットワークのトランザクション手数料(ガス代)が2023年に入ってから最低水準を記録している。この背景には、レイヤー2(L2)の導入が進み、イーサリアムの主要な役割がセキュリティ維持にシフトしたことが推測される。
しかし、この影響により、ETHトークンの性質は供給量がなだらかに増加する「インフレ資産」へと戻りつつあるようだ。
ブロックチェーンの分析を行うCoin Metricsによると、執筆時点でのイーサリアムの平均ガス代は2.5ドル(360円)程度。ガス代はネットワークの需要に応じて変動する特性があるため、イーサリアム上のユーザー活動の減少を示している。
イーサリアムでは、ガス代の一部をバーンする仕組みが組み込まれている。2022年の大規模アップデート「マージ」以降、ネットワーク利用量に応じたETHのバーン(焼却)数が増えて、ステーキング報酬による新規発行量を上回る状況が進行。供給量が減少する「デフレ資産」であることはETH投資家の強気要因として強調されてきた。
しかし、DUNEの情報によれば9月4日週のイーサリアムのバーン総量は11,451 ETHと、昨年11月以来の低水準となっている。
最近では、L2のエコシステムが発展しており、多くのユーザーがPolygon、Arbitrum、Optimism、BaseといったL2ソリューションを利用して、NFTやミームコインの取引を行っている。結果として、イーサリアムの主要な役割が、よりデータの保存に集中している。
今年初め、NFTアグリゲーションサービスのBlurがエアドロップを実施し、その影響でNFTの取引量とETHの価格は急上昇した。その後、ミームコインブームが続き、トークンのバーン率が高まったが、L1での大きな動きは今のところ見られない。
最近注目を集めるソーシャルファイの分散型アプリケーションFriend.Techも、L2ネットワーク「Base」上で稼働しており、8月中旬のユーザー数5,000人から、9月には14万人に急増。ロックアップされている資産も2,000万ドル(約30億円)に達している。
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ETHエコシステムは拡大
全体として、L2の活気ある動きは、イーサリアムエコシステムを強化している。Bloombergの集計データによれば、イーサリアムのL1とL2の合計でのアクティブアドレス数は197万件を記録し、新たな高水準となっている。
DUNEのデータを参照すると、イーサリアム・ネットワークの過去1年間のアクティブアドレスと取引量は安定。アクティブアドレス数は日々約400,000件、取引数は約100万件前後だ。
イーサリアム投資家の多くはステーキングやL2への資産移動のために複数のウォレットを持つことが一因として考えられる。さらに、Intotheblockのデータによれば、長期間イーサリアムを保有している投資家の数が増え、供給量の約74%がこれらの長期保有者によって保持されている。
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