- カナダ中央銀行のシニア副総裁が「仮想通貨」に言及
- カナダ中央銀行のシニア副総裁が、「仮想通貨」について言及した。カナダ中央銀行はProject Jasperも進めており、今後のさらなる先見的な取り組みも期待されている。
カナダ中央銀行のシニア副総裁Wilkins氏が仮想通貨について言及
10月初頭にカナダ中央銀行のシニア副総裁(Senior Deputy Governor)を務めるCarolyn Wilkins氏(以下、Wilkins氏)がプリンストン大学の講義に登壇し、仮想通貨やブロックチェーン技術における自身の見解を述べた。
仮想通貨の種類
まずWilkins氏は、仮想通貨の種類について、「仮想通貨、証券トークン、ユーティリティトークン」という3つに分類されると言及。
通貨としての仮想通貨は、商品やサービスの購入を行う際の決済手段として使用されるもので、ビットコイン(BTC)やモネロ(XMR)、Impak Coin(MPK)のようなものを指すと記述されている。
証券トークンは、その名の通り、特定の企業のポジションを持つ証券としての役割を果たし、アメリカ証券取引所(SEC)は、現在どの通貨を証券トークンとして定義するかを検討している段階であるとした。
最後に、ユーティリティトークンは、特定のプラットフォームにおける商品やサービスの消費に使用され、イーサリアム上の取引で使用されるEtherのようなものを指すと説明した。
彼女は、この3つの種類を定義した上で、ある特定の仮想通貨、またはトークンを分類することは容易ではないと主張している。
さらに、分類時点で正しく分離できたとしても、綿紡績事業としてスタートしたBerkshire Hathaway社が最終的に投資会社に変貌したように、最初にユーティリティトークンとしてスタートしたプロジェクトが最終的に証券トークンに変わっていくなど、その分類は一筋縄ではいかない上に、定期的な見直しも必要であることを主張している。
金融システムに与える影響
また、仮想通貨やブロックチェーン技術が既存の法定通貨と共存していくことができると示唆した一方で、仮想通貨には未だ欠陥があることも否定できないと述べた。
まずマネーサプライやインフレーションの関係は非常に複雑で繊細なものであることから、ビットコインなどの仮想通貨において新規通貨を発行できないという特性が仇となってしまう可能性があると言及した。
さらに、ブロックチェーン技術に関しても、マイニングにおいて、一部のマイニングプールによる寡占化の傾向があることから完全な非中央集権が実現できていないことや、その手数料の高騰や承認遅延などによる効率性の低下や台帳への適切なエントリーを常時実現することができていない現状についても指摘している。
そして、カナダ中央銀行は、「Project Jasper」と呼ばれる中央銀行発行のデジタル通貨(Central Bank Decentralized Currency、CBDC)の実証実験も進めており、第1〜2フェーズでは、Payments Canada、R3、および、カナダ最大級の6銀行で銀行間決済の実験を終了させている。
第3フェーズでも同様にPayments Canada、トロント証券取引所と共同で現金のポストトレード処理、証券の取引実験を完了させた。現在は、シンガポール金融管理局(MAS)、イングランド銀行、そして、複数の商業銀行間における国際決済の実験を進めている。
Wilkins氏は、CBDCについて、現時点で金融システムにアクセスできていない人々がそのアクセスを可能にすること(Financial Inclusion)や、プライバシー、安全な資産の供給、商業の促進など、複数のメリットがある一方で、金融的安定や、金融政策、財政政策の対応など複数の問題の解決策を提示できていないことも示唆した。
このように、カナダ中央銀行がProject Jasperというデジタル通貨の実験に取り組み、そのシニア副総裁を務めるWilkins氏も、ブロックチェーン技術や中央銀行発行のデジタル通貨が、ここ数年において社会的側面での最大の関心であると言及していることから、今後もカナダの先見的な姿勢が注目されていくと言えるだろう。