- イーサリアムPlasmaの実装と新たな動き
- イーサリアムの拡張構想『Plasma』などスケーリング手法が発案され、実証実験が行われているが、取り組むべき新しい研究課題が浮き彫りになもなっている。本記事では、現在イーサリアム開発者の目が向いている新たな価値を生み出す動きに注目する。
- Plasma(プラズマ)とは
- Plasmaは2017年4月に、BitcoinのLightning Networkホワイトペーパーの共同執筆者であるButerin氏とJoseph Poon氏によって最初に考案されたもの。このホワイトペーパーでは、スケーリング(データの処理速度を上げることなどを通じ、ネットワークに対して高まる需要に対応できるようにすること)は、スマートコントラクトの実際の計算をメインのEthereumブロックチェーンではない、別のチャネルで実施することで可能になる、と説いている。
イーサリアム開発者の試行錯誤と新たなる希望
Plasma(プラズマ)の論文が世に出て以来、様々なスケーリング手法が発案され、実証実験されてきた。
その度に取り組むべき新しい研究課題が明らかになり、安全性と快適さ(スピード)における、トレードオフ関係のような”どちらかを犠牲にしないといけない状況”に開発者は頭を悩ませてきた。
例えば、OmiseGoのPlasma研究を手がけているDavid Knottは、Devcon4でのピッチにて、Plasmaの弱点について触れた。
- UIの悪さ
- ネットワークの輻輳(通信の需要が高まり、通信が成立しにくくなること)に対して脆弱
- Plasmaは、価値交換をNFT(代替不可能トークン)に依存しているため、NFTの所有権を移転するときにはそのトークンの取引履歴までも一緒に移転しなければならない(移転するためのデータ量が多くなる)
また、同様にOmiseGOでPlasma研究をしているKelvin Fichterは、Davidと異なる視点でPlasmaに問題提起をしている。
- ホワイトペーパーがPlasmaと呼ぶものと、研究者がPlasmaと呼ぶものが一貫していない
- Plasmaの概念は近日中に一般化されるどころか、この研究と開発により一層の時間とお金が必要になるだろう
zk-snarkを取り入れようとするイーサリアムプロジェクト:Gnosis
このような動きは、OmiseGoだけではない、Ethereumベースのプロジェクトでも、Plasmaではなく、zk-snark(ゼロ知識証明)を採用する動きが見られている。たとえば、予測市場をブロックチェーン技術で効率化、新たな価値を生み出そうとしているGnosis。
彼らは、snapp(スナップ)と呼ばれる分散型取引所の基盤技術として、zk-snarkの採用を前向きに検討している。
zk-snark(ゼロ知識証明)とは
Zero Knowledge –Succinct Non-interactive ARgument of Knowledge の略で、日本語ではゼロ知識証明と訳される。相手に情報を公開することなく、情報を知っていることを証明する技術で、応用例としては、トランザクション内容を秘匿化しつつも承認者が正当であることを承認できる。
その理由として、GnosisのCTOであるStefan George は、Plasmaを採用するよりも分散化が楽に実装できるだけではなく、開発から実装にかかる時間も圧縮できることを挙げている。
zk-snarkを導入することで、PlasmaによるEthereumのスケーリングを促すと同時に、匿名性を確保できるようになるのだ。
彼らが3〜4ヶ月後にProof of Conceptを終える予定のDEX(Fusion )は、ゼロ知識証明の特性を有するような設計にしているという。
つまり、取引相手のことを一切信頼する必要なく、安心して仮想通貨資産の交換や取引が可能になる、ということだ。
実は、Ethereumコミュニティが「zk-snark」へ関心を向けるようになったのは、ここ最近の話ではない。
Ethereumの開発者であるVitalikが、1年前よりzk-snarkがスケーラビリティ問題を解決するカギであると考え、研究を重ねてきた経緯がある。
まとめ
これらの動き踏まえると、これからPlasmaよりもzk-znarkに開発者の視線が自然と向く可能性は十分に考えられる。
しかし、だからといってPlasmaに関する研究開発が止まることはないと思われる。いかにPlasmaの長所を活かし、他のプロトコルで短所を埋め合わせるのか。この点に向かい、世界中の有識者や開発者が新たな挑戦をしていくであろう。
ますますEthereumの開発進捗から目が離せなくなりそうだ。