次世代のASICマシン
米ナスダック上場の暗号資産(仮想通貨)マイニング企業Hut 8は19日、マイニング機器製造最大手ビットメイン(Bitmain)社と提携して開発した次世代ASICマシンの発売を発表した。
Today, Hut 8 is launching a next-generation ASIC miner developed in partnership with @BITMAINtech. The U3S21EXPH will be the first ASIC miner mass-commercialized by BITMAIN to feature direct liquid-to-chip (DLC) cooling within a U form factor.
— Hut 8 (@Hut8Corp) September 19, 2024
Hut 8 plans to deploy the model in… pic.twitter.com/810M78NJ9o
新モデル「U3S21EXPH」は、ダイレクトチップ液体冷却(DLC)技術が採用された、Bitmainが量産する初めてのASICマシンだ。DLC技術は、高性能コンピューティング(HPC)データセンターで使用されている。
また、U3S21EXPHではフォームファクターの形状が、互換性のない「靴箱型」から、HPCのラック(専用棚)の設計様式と互換性のある「U」フォームファクターへ進化した。
Hut 8のAsher Genoot最高経営責任者は、「Bitmainとの提携によって、当社のASICコンピューティングに対する考え方が前進を遂げ、より拡張しやすいデータセンターの設計モデルを作成することが可能になった」と述べ、パートナーシップの成果について次のように語った。
このイノベーションは、フォームファクターと冷却技術において、 ビットコイン(BTC)マイニングとAI(人工知能)データセンター間の重要なエンジニアリングのギャップを埋めるものであり、この融合により、今後大きな相乗効果と柔軟性を引き出すことができると考えている。
独自の設計
Hut8は、U3S21EXPHの可能性を最大限に引き出すために、従来のデータセンターの設備で、IT機器を収容するラックを使用する設計にヒントを得て、ビットコインマイニングのためのデータセンターに適した特別な設計を自社で開発したという。
この設計により、ラックあたり最大約180 kWの密度で導入が可能になる。
同社はこの独自開発のインフラを活用し、2025年第2四半期(Q2)に、15エクサハッシュ/秒(EH/s)のホスティング契約で新モデル「U3S21EXPH」を展開する予定だ。
この初期契約により、Hut8が管理するハッシュレートは 18.5EH/s から 33.5EH/s 近くまで増加すると予想されている。
一方、Hut8が15EH/s のホスティング契約全てに対し購入オプションを行使した場合、同社のセルフマイニング・ハッシュレートは5.6 EH/sから約 20.6 EH/s に増加すると予想される。
経営の多角化
長期的な電力優先戦略の一環として、Hut8は、ビットコインマイニングとAIコンピューティングを含むエネルギー集約型技術で、継続してコンピューティングレイヤーを拡大し、電力資産とデジタルインフラという同社のポートフォリオに対するリターンを最大化することを目指していると述べた。
その意味で、U3S21EXPH の発売と商品化は、ビットコインマイニング分野における同社の存在感を維持しつつ、AIコンピューティング拡大の機会を推進するもので、同社の戦略を実行する上での重要な一歩となると、Hut8は見ている。
Hut 8は今年8月、米投資企業Coatue Managementから1億5,000万ドル(約213億円)の戦略的投資を確保した。この資金は、次世代のAIインフラ開発に使われる予定だ。
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競合他社の米コア・サイエンティフィック(Core Scientific)も、AIデータセンターサービスの大規模な拡大を計画している。
同社は6月にAI向けインフラ提供で、GPUクラウドプロバイダーのCoreWeaveと12年間に渡る契約を締結。累計総収益は5,000億円規模になると予想されている。
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