イーサリアム・エコシステムの統一に向けて
イーサリアム(ETH)の創設者ヴィタリック・ブテリン氏は17日の上海ブロックチェーンウィークで、同プラットフォームが直面する最大の課題として「エコシステム(経済圏)に統一感がないこと」を挙げた。
ブテリン氏は同日公開のブログ記事で、この問題に対処するための具体的な技術的アプローチを提案している。
ブテリン氏の分析によると、現在のイーサリアムは事実上、34の異なるブロックチェーンが独立して稼働する状態にある。OP(旧オプティミズム)、アービトラム(ARB)、ポリゴン(POL)、BASEなど、複数のレイヤー2(L2)ソリューションが連携なしに運用されている状況だ。
同氏は、自身が予測市場「Polymarket」用にUSDCをポリゴンに預け入れる際に、100ドルを失った経験を共有。誤って「Polygon zkEVM」を選択し、(スマートコントラクトのないアドレスに送金し)、資金を取り出せなくなったという。
こうした不便さを解消するため、ブテリン氏はL2の相互運用性を高める5つの技術的アプローチを提案する。
- チェーン固有のアドレス:アドレスにチェーン情報を含めることで、L2間の送金を簡素化。
- クロスチェーンスワップとガス支払い:ERC-7683やRIP-7755などの提案を活用し、L2間の資産移動とガス支払いを効率化。
- ライトクライアント:ユーザーがRPCプロバイダーに依存せず、直接L2の状態を検証できるようにする。
- キーストア・ウォレット:L1上で一元管理されたキーを使用し、複数のL2にわたるウォレット更新を簡素化。
- 共有トークンブリッジ:L2間の資産移動を効率化し、L1のガスコストを削減。
ブテリン氏はこれらの技術の導入を通して、「L2間をシームレスに操作できるユーザー体験」、「任意のチェーンから他のチェーンへの2秒以内の転送完了」、「セキュリティの標準化」などを獲得することを目標に掲げた。
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イーサリアムメインネットの改善
同時に、イーサリアムメインネット(L1)自体の改善も計画されている。2024年3月のDencunアップグレードにより、L1は現在12秒ごとに約375kBのデータ可用性帯域幅を持ち、理論上最大で607 TPSの処理が可能となった。しかし、ブテリン氏はこれを「不十分」とし、さらなる改善を目指している。
具体的には、データ可用性サンプリング(DAS)の導入によるデータ容量増加や、ガスリミットの慎重な引き上げが検討されている。計画中のPeerDASの導入により、処理能力は926 TPSまで向上する可能性がある。さらに中期的には、1スロットあたり16MBのデータ処理を目標とし、ロールアップのデータ圧縮技術の改善と組み合わせることで、約58,000 TPSの実現を目指す。
最終的に、イーサリアムのロードマップにおける「The Surge」段階の完了を目指し、L1とL2を合わせて10万TPS以上の処理能力実現を目標としている。
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L1とL2の役割分担
ブテリン氏は、L1とL2の役割分担についても言及している。現状ではL1が多様なユースケースを扱っているが、理想的にはL1は主権的所有権など最も高度な分散化が必要な重要アプリケーションのみを扱い、DeFi、NFT、ゲーム資産などの多くのアプリケーションはL2で処理されるべきだとしている。各トランザクションのオンチェーンデータサイズを削減する技術の開発も、この目標達成に向けた重要な要素だ。
ブテリン氏は、これらの改善によってイーサリアムが単なる複数チェーンの集合体から、真に統合されたエコシステムへと進化すると強調した。
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