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仮想通貨企業に対する裁判の延期要請続く
米証券取引委員会(SEC)対トロン財団の裁判で、当事者らは26日、訴訟を一時停止するよう求める書類を米国の地方裁判所に提出した。対コインベース裁判などに続き、SECの姿勢転換を示す動きとなる。
原告であるSEC、および被告であるトロン財団と暗号資産(仮想通貨)トロン(TRX)の創設者であるジャスティン・サン氏が、共同で申し立てた格好だ。
原告と被告は、「潜在的な解決策を検討するために」この訴訟を差し止めることが双方の利益になると主張している。また、解決策があれば裁判所がトロン財団側によって提出されている棄却申立てを処理する必要がなくなり、司法リソースも節約されると続けた。
一時停止命令が出された場合は、その後60日以内に共同で状況報告書を提出することを提案している。
この裁判は、SECが2023年3月、ジャスティン・サン氏やトロン財団などを訴えたものだ。TRXとBTTの両トークンを証券とみなしており、これを未登録で提供したと主張していた。サン氏が市場操作を行っていたとも述べている。
トロン財団側はこれに対して裁判の全面的な却下を要請しており、トークンは海外でのみ販売されていたものだと反論。さらに、トークンはSECが証券性判断で用いる「ハウィーテスト」による投資契約の定義を満たさず、証券とはみなされないとも論じている。
関連:米SEC対トロン裁判で地裁がSECの反論要求を却下 トロンの証券性争点に
SECとは
株や債券などの証券の取引を監督する米国の政府機関のこと。1934年設立。公正な取引の確保と投資家保護を目的としており、インサイダー取引や企業の不正会計、相場操縦などを防止する。仮想通貨が有価証券に該当するかという判断も行う。
コインベースに対する裁判を取り下げか
SECは、トランプ政権下で仮想通貨に前向きな姿勢へと転換を始めたところだ。1月に仮想通貨に特化したタスクフォースを立ち上げており、トークン分類の明確化や、法執行リソースの適切な配分に取り組んでいく。
このタスクフォースの責任者は仮想通貨擁護派の「クリプト・ママ」としてこれまでも知られてきたヘスター・パース委員である。また、パース氏と共に、これまでゲンスラー前委員長下のSECの姿勢を内部から批判してきたマーク・ウエダ氏が現在SECの委員長代行を務めている。
ウエダ氏は、タスクフォース立ち上げの際、SECがこれまで主に恣意的な法執行措置に依存し、しばしば未検証の法的解釈を採用してきたと述べた。
その後2月14日、SECはコインベースの訴訟で手続きを延期することを求めていたところだ。理由としては、SECの仮想通貨タスクフォースがこれから行う作業が裁判に影響する可能性があるとしていた。
さらに、2月21日にはコインベースが、SECが同社に対する訴訟を取り下げることで原則合意したと発表している。この訴訟は、SECが前政権で開始したもので、コインベースを未登録証券提供などで訴えていた。
トークンの証券性が焦点となる裁判であり、タスクフォースによるトークン分類作業の結果にも左右されると考えたとみられる。トークン分類では特に、どんな仮想通貨が証券にあたるのかを判断する見込みだ。
SEC対バイナンスの訴訟でも、SECとバイナンス双方が同様の理由で、裁判の一時停止を要請し認められている。