
アトキンス氏の指名に関する公聴会
米国の上院銀行委員会は27日、ポール・アトキンス氏の米証券取引委員会(SEC)委員長指名に関する公聴会を開催した。エリザベス・ウォーレン議員(民主党)が、利益相反などについて質問を投げかけた。また、アトキンス氏はSEC委員長としての方針を示している。
暗号資産(仮想通貨)に批判的なことで知られるウォーレン氏は、事前に提出した質問状で、アトキンス氏と破綻したFTXなどとの繋がりを指摘し、同氏が規制を担当する上での懸念を表明していた。
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アトキンス氏は2008年までSEC委員を務めた後、2009年にコンサルティング会社パトマック・グローバル・パートナーズを設立。金融業界の大手銀行、投資会社、FTXなど仮想通貨企業をクライアントとして抱え、アドバイスを提供していた。
公聴会でウォーレン氏は、アトキンス氏の経歴に触れ、SECのリーダーとして「すべてのクライアントに利益をもたらす絶好の立場にいる」と述べている。
アトキンス氏は、SEC委員長指名に際して、利益相反を避けるためにパトマック・グローバル・パートナーズの株式を売却する意向を示しているところだ。持ち株は2,500万ドル(約38億円)相当以上あるとみられている。
ウォーレン氏は、この株式について、買い手が将来のSEC委員長からの便宜を期待して、高額で買収する可能性を懸念。買い手が誰で、いくら支払うかを明らかにするよう、アトキンス氏に求めた。
これに対してアトキンス氏は「私は政府倫理局の手続きに従っている」と回答している。
方針表明
アトキンス氏は、事前の書面による証言で、SEC委員長としての最優先事項は、他の委員や議会と協力して、「合理的で一貫性のある原則的なアプローチを通じて、仮想通貨の確固たる規制基盤を提供すること」だと述べた。
これは、バイデン政権下でゲンスラー前委員長率いるSECが、仮想通貨規制について明確なガイドラインを提供してこなかったとの批判を踏まえたものだ。また、現状と今後について、次のように発言している。
金融システムの現在の規制環境は、投資を阻害し成功を罰することが多すぎる。不明瞭で過度に政治化され、複雑で煩わしい規制が資本形成を妨げている。
その一方で、米国の投資家は投資の真のリスクを理解するのに役立つどころか、その逆の効果をもたらす開示情報で溢れている。優先順位をリセットし、SECに常識を取り戻す時が来た。
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仮想通貨関連の質問
その他、仮想通貨関連ではジョン・ケネディ議員(共和党)が、FTX前CEOサム・バンクマン・フリード氏の両親についても責任を追及するよう求めた。
サム氏の両親については、FTXの事業に事実上深く関与しており、FTXの資金を私的流用していたのではないかとの疑惑が浮上していたところだ。SECは2022年にサム氏を訴えたものの、その両親については裁判を起こしていない。
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また、銀行委員会のティム・スコット委員長(共和党)は、SECが2023年に仮想通貨スタートアップ企業DEBT Boxに対して起こした訴訟で不正確な主張などの問題があったことを指摘。こうした信頼へのダメージから回復できるのかと質問した。
アトキンス氏は、「私が承認されればSECの士気を高め、機能不全や意欲低下を改め、業務に集中し基本に立ち返るよう努力することを約束する」と答えている。
SECとは
株や債券などの証券の取引を監督する米国の政府機関のこと。1934年設立。公正な取引の確保と投資家保護を目的としており、インサイダー取引や企業の不正会計、相場操縦などを防止する。仮想通貨が有価証券に該当するかという判断も行う。
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