
Glassnode分析
オンチェーン分析企業Glassnodeは、4月9日に公開した最新レポートで、トランプ大統領の「解放の日」関税発表後に発生した仮想通貨市場急落や、これまでのBTCとETHのパフォーマンス格差について詳細に分析した。
ビットコインは6〜9日の間83,500ドルから74,500ドルまで下落し、時価総額は1,500億ドル減少。一方、イーサリアムはより大きな下落に見舞われ、1,800ドルから1,380ドルまで下がり、時価総額は400億ドルの減少となった。今年初めから両資産への資本流入は明らかに鈍化しており、30日間の実現時価総額変化を見ると、ビットコインは月間1,000億ドルの流入から60億ドルまで減少。イーサリアムに至っては、月間155億ドルの流入から一転して、現在は月間60億ドルの資本流出に転じている。

出典:Glassnode
FTXの崩壊後である2022年末から現在までの実現時価総額の推移では、ビットコインが4,020億ドルから8,700億ドルへと約117%増加したのに対し、イーサリアムは1,830億ドルから2,440億ドルへの約32%の増加にとどまっている。この資本流入の差が、2023年以降の両資産のパフォーマンス格差を裏付ける結果となっている。2024年の強気相場において、イーサリアムは需要も新規資本の流入も相対的に乏しく、ビットコインが2024年12月に10万ドル超えを記録したにもかかわらず、ETHは過去最高値を更新できていない。

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また、MVRV比率(時価と実現価格の比率)においても、2023年1月の強気相場入り以降、ビットコインとイーサリアムの間には明確な乖離が見られた。ビットコイン投資家はイーサリアム投資家よりも一貫して多くの未実現利益(含み益)を保持しているが、ETHのMVRV比率は2024年3月に再び1.0を割り込んだ。ビットコインとイーサリアムのMVRV比率の差は、現在812日連続でビットコインの方が高い平均利益率を維持しており、これは記録上最長の期間となっている。

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また、2022年9月のマージ以降、通貨ペアETH/BTC比率は0.08から現在の0.0196へと75%下落。これは2020年1月以来の最低水準であり、過去3,531取引日のうち500日未満しかこれより低い値を記録していない。今回の強気相場において、イーサリアムがビットコインを大きく上回るような期間が見られないことは極めて異例であり、過去の強気サイクルとは異なる展開となっているという。
投資家の行動は?
今週月曜日のような急落局面では、投資家の行動を分析することが重要である。Glassnodeによると、6時間ごとの実現損失を見ると、ビットコインでは最大2億4,000万ドル規模の損失確定が確認され、今サイクルで最も大きな投げ売りのひとつとなった。ただし、価格が下落するごとに実現損失の規模は縮小傾向にあり、この価格帯では短期的な売り圧力の消耗が始まっている可能性を示しているという。

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また、オンチェーンデータとテクニカル分析の両面から見ると、65,000〜71,000ドルの価格帯が長期的なサポートラインの再構築に向けた重要なゾーンとして浮上。ビットコインがこの水準を下回ると、アクティブ投資家の大多数が含み損を抱えることとなり、市場センチメントの悪化が一段と加速する恐れがある。
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一方で、93,000ドルは上昇トレンドを再構築する前に回復が求められる重要なレジスタンスとされている。さらに、アルトコイン市場も大幅に下落しており、2024年12月時点の評価額1兆ドルから現在は5,830億ドルへと大幅に縮小した。

出典:Glassnode
こうした市場の混乱は、トランプ米政権の政策スタンスの変化が背景にある。現在、米政権は弱いドル、低金利、原油価格の軟化、財政支出の縮小といった方向へと舵を切っており、これらの要因が重なった結果、米経済の明確な減速と市場全体の流動性低下が進行している。グローバル流動性に敏感な仮想通貨市場は、この圧力を特に強く受けていると、Glassnodeは指摘している。
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