
仮想通貨市場の構造が変化
暗号資産(仮想通貨)銀行Sygnum(シグナム)は25日、アルトコイン市場についての分析レポートを発表した。
今回のサイクルで、アルトコインシーズンは到来が遅れており、さらに過去のサイクルよりもはるかに穏やかなものになる可能性が高いとの見解を示している。
背景としては、過去と異なり現在はビットコイン(BTC)に強力な牽引力があり、市場構造が変化して伝統的な金融機関の役割が増加していることを挙げた。

出典:CoinMarketCap
CoinMarketCapによると、記事執筆時点で、仮想通貨セクター全体におけるビットコインの相対的な市場シェア(ビットコインドミナンス)は60.6%だ。イーサリアム(ETH)は11.8%、その他は27.7%となっている。
ビットコインドミナンスは2022年末から右肩上がりの傾向である。歴史的には60%台を明確に下回るとアルトコインシーズン到来との見方もなされるところだ。
シグナムは、最近ビットコインドミナンスが少し下がった理由は、ステーブルコインやトークン化の採用事例が進展し、法整備や規制、大手金融機関の参入も追い風となって、イーサリアムや主要なレイヤー1プロジェクトに対する楽観的な見方が高まったことが一因だと指摘した。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
一方で、各指標をみると、アルトシーズンの到来を示唆するにはまだ遠く、主要銘柄以外のアルトコインへの資金流入の動きはすでに一部反転していると述べる。
これは、市場が依然として判断を下せず、収益成長率の高いプロジェクト以外へのコミットメントを躊躇していることを示唆すると続けた。
なお、現時点で収益成長率の高いプロジェクトの例としてはハイパーリキッドを挙げている。
関連:ハイパーリキッドの将来性・HYPEの買い方|注意点まで徹底解説
シグナムは、過去1年半で仮想通貨市場に流入した新規資金の大部分は、ETF(上場投資信託)や仮想通貨関連株といった従来型製品への投資に限られていると指摘した。
さらに、現在の強気相場は個人投資家の行動が支配的だった過去の相場とは一線を画しているとも述べる。個人投資家の消極的な姿勢が続くことで、アルトシーズンの上昇余地が限定的なものになる可能性があるとした。
また、今後センチメントやファンダメンタルズを変化させる可能性があるのは、規制の明確化が進むことだと論じた。最も重要なのは、デジタル資産市場明確化法案(クラリティ法案)が議会を通過し、今後数か月以内に法制化される可能性が高いことだと述べる。
これが実現すれば、仮想通貨プロジェクトは訴訟や規制上の罰則を恐れることなく、強力なトークノミクスモデルを構築し、提供するための基盤が整うと述べた。
SEC(米証券取引委員会)による規制の後押しもあいまって、トークンの投機性が低下し、仮想通貨は従来の金融機関にとってより投資しやすいものになると予想している。
こうした、法制上の進展がない限り、アルトコインシーズンの触媒となるのは中央銀行などによる流動性供給となる可能性があるとしている。
関連:イーサリアムとアルトコインへ資金シフトの兆候=クリプトクアント分析
関連:仮想通貨取引所ランキング|実績・ユーザー評判・プロ分析で徹底比較