はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習 WebX
CoinPostで今最も読まれています

仮想通貨取引所の「倒産リスクと資産保全」の問題点|2019年の市場を把握する上で重要な金融庁研究会内容

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

仮想通貨取引所の「倒産リスクと資産保全」
既存金融市場では提携先銀行が返済する信託保全制度があるが、現行の資金決済法では、「(仮想通貨交換業者に対し)信託保全まで求められているものではない」とされており、優先弁済の対象とするなど整備が求められる。

仮想通貨取引所の「倒産リスクと資産保全」

金融庁が事務局を務める「仮想通貨交換業等に関する研究会」において、昨年4月から計11回にわたり、国内で発生した巨額のハッキング事件の対策など諸問題に係る討議が行われた。

これに伴い、行政機関が主催する「研究会」の委員や仮想通貨業界団体の法律顧問など、仮想通貨及びブロックチェーン領域を専門にする弁護士3名が、『仮想通貨交換業等に関する研究会報告書の概要』というレポートを公表した。

特筆すべきは、「顧客財産の管理・保全の強化」と、「仮想通貨交換業者の倒産リスク」という部分だろう。

仮想通貨業者の倒産リスク

国内大手取引所であるコインチェックやZaifの不正流出事件で特に問題視されたのは、不正アクセスを受けた複数の仮想通貨交換業者において、ネットから隔離された「コールドウォレット」ではなく、利便性を重視するためにネットに接続された「ホットウォレット」で大半の秘密鍵を管理していたことで、顧客の受託仮想通貨が流出が拡大し、リスクが顕在化するなど経営・管理体制の不備を露呈した点だ。

これに対し金融庁は、抜本的対策の一つとして、「法令上求められているセキュリティ対策の実行、及び行政当局によるモニタリングのほか、専門的知見を有する団体による技術面からの指針の整備」を提案している。

また、これらに加えて、『受託仮想通貨の流出リスクへの対応』については、以下の2点を挙げた。

  • 受託仮想通貨を流出させた場合の対応方針の策定・公表
  • ホットウォレットで秘密鍵を管理する受託仮想通貨に相当する額以上の純資産額及び弁済原資(同種・同量以上の仮想通貨)の保持

現行の資金決済法では補えない部分

弁護士3名によるレポート『仮想通貨交換業等に関する研究会報告書の概要』では、現在施行されている「資金決済法」について、

「仮想通貨交換業者には、受託仮想通貨について、顧客毎の財産を直ちに判別できる状態で管理することが求められており、また、公認会計士又は監査法人による分別管理監査及び財務諸表監査義務が課されているところ、受託仮想通貨について信託保全まで求められているものではない。」と指摘。

金融庁主催の仮想通貨研究会の報告書で、「仮に仮想通貨交換業者が適切に受託仮想通貨の分別管理を行っていたとしても、倒産隔離が有効に機能するかは不明であるとして、仮想通貨交換業者に対して顧客を受益者とする”信託義務”を課すことが提案されている。」ことを紹介した。

保全制度の問題点

ただし、弁済原資(同種・同量以上の仮想通貨)の項目をクリアするのは容易ではない。「改正資金決済法」の施行時点(2017年4月)とくらべて、仮想通貨市場の高騰の伴い、受託金銭の額も膨れ上がることが予想されるためだ。

現に、昨年1月に発生した「コインチェックへのハッキング被害」では、当時の時価で「580億円相当のXEM」が流出したほか、金融庁の立ち入り検査等を通じて仮想通貨交換業者による受託金銭の流用事案も確認されたことで、社会問題になった。

利用者保護の仕組みについては、国内FX市場では、万が一会社が破綻した際に、メガバンクなど提携先の銀行が顧客の預かり資産を返済する仕組みである「信託保全制度」がある。

もっとも、信託銀行・信託会社におけるセキュリティリスク管理等に係る態勢整備の必要性等を踏まえ、現時点においては、全種・全量の受託仮想通貨の信託を義務付けることは困難であるとされている。

仮想通貨業界に同様の保全制度の仕組みが導入できれば、個人投資家の不安払拭につながるため歓迎すべきだが、銀行側のリスクも大きく、整備は簡単ではないと思われる。

なお、金融庁の報告書によれば、仮想通貨交換業者の破綻時においても、受託仮想通貨の顧客への返還が円滑に行われるようにする観点から、顧客の仮想通貨交換業者に対する受託仮想通貨の返還請求権を「優先弁済の対象」とすることが提言されている。

優先弁済とは、その名の通り、「売却代金から他の一般債権者に優先して被担保債権の弁済を受けることができる効力」のことだ。

金融庁主導での補償制度整備へ

2018年10月、ロイターが入手したという仮想通貨交換業協会の「自主規制原案」では、オンライン環境で利用者から預かった仮想通貨の秘密鍵を管理する場合、サイバー攻撃による秘密鍵の喪失リスクを評価したうえで、当該リスクに見合った額を銀行預金や国債、地方債などの安全資産で保有するよう義務付けた。としている。

2018年9月に発生した国内大手取引所「Zaif」のハッキング被害で、顧客への補償を行うにあたり、仮想通貨取引所を運営するテックビューロ社の自己資金では約50億円不足していたことが金融庁からも問題視されていたという。

原案では、保全対象額について、銀行などとの間で「保全契約」を結ぶように求めているとされており、利用者から預かった仮想通貨が不正流出した場合に備え、損害賠償方針の明記を義務付けることも盛り込まれているため、もし実現すれば仮想通貨のネガティブなイメージの払拭に向けて大きく前進することになりそうだ。

米国でも資産保全の動きが加速しており、ウィンクルボス兄弟が運営する仮想通貨取引所「Gemini」でも2018年10月、米国の大手保険会社から顧客資産保護を可能にする保険を取得したことが明らかになった。

「Gemini」のリスク部門責任者は、以下のように述べている。

顧客は、仮想通貨に対しても、一般的な金融機関と同等の保険適用を求めている。保険会社に情報共有を続けていくことは、顧客保護につながるだけではなく、仮想通貨業界全体の消費者保護に対する期待を高めることにも繋がるはずだ。

ハッキング事件やICO詐欺に伴う各国の規制強化により、複数の大手取引所が事実上の半営業状態に陥るなど、ネガティブなイメージばかりが先行した2018年の仮想通貨業界。市場環境が整備されつつある2019年は、信託保全制度の導入などで、顧客の信頼をどこまで取り戻すことができるのか注目される。

仮想通貨交換業等に関する研究会報告書の概要:

https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins2_pdf/190108.pdf

CoinPostのLINE@

スマートフォンへの「プッシュ通知」で、相場に影響を及ぼす重要ニュースをいち早く知らせてくれる「LINE@」の登録はこちら。大好評につき、登録者10,000名突破。

CoinPostの関連記事

金融庁、「仮想通貨を利用した出資」も金商法の規制対象に|産経新聞が報道
金融庁が、金融商品を手がける事業者が、仮想通貨で出資金を募った場合も、金融商品取引法(金商法)の規制対象とする方針を固めた。産経新聞が8日報じた事で明らかになった。
金融庁主導で仮想通貨取引所ハッキングなど補償体制整備へ:実現すれば業界に追い風
ロイターの報道によると、仮想通貨不正流出に備えた交換業協会の自主規制案で、リスク相応額を銀行預金や国債等の安全資産で保有するよう義務付けた。各国仮想通貨保険の現状をまとめた。
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
12/31 水曜日
10:00
激動の2025年 仮想通貨の時価総額トップ20、過去8年間における順位変動は
2025年はビットコインが12万ドルを突破した。仮想通貨に肯定的な米トランプ政権が始動した1年を終えるにあたり過去8年間において仮想通貨の時価総額の順位がどのように変動してきたかを振り返る。
12/30 火曜日
14:00
米カリフォルニア州の超富裕層への「5%資産税」に業界猛反発 仮想通貨起業家流出の懸念も
米カリフォルニア州で純資産10億ドル超の富裕層に5%課税する提案が行われ、Kraken創業者やBitwise CEOをはじめとする仮想通貨・テック業界リーダーが強く反発し、警告を発した。株式、不動産、仮想通貨などを対象とし、未実現の含み益にも課税される点が問題視されている。
14:00
コインベース・ベンチャーズが注目する2026年の仮想通貨4大トレンドとは
米最大手コインベースの投資部門コインベース・ベンチャーズが2026年に積極投資する4分野を発表した。RWA永久先物、専門取引所、次世代DeFi、AIとロボット技術など、次のブレイクアウトが期待される仮想通貨領域について紹介。
12:32
ビットマイン、イーサリアム買い増し 独自のステーキング・インフラも準備中 
ビットマインの仮想通貨イーサリアム保有量が411万枚に到達した。年末の価格下落を好機と捉え買い増しを行っている。2026年には独自ステーキング基盤も公開予定だ。
10:00
2025年の仮想通貨市場を重要ニュースから振り返る
2025年は仮想通貨を支持するドナルド・トランプ氏が米大統領に就任し、相場は米国の動向から大きな影響を受けた。本記事では、ビットコインの最高値更新など1年間の重要ニュースを振り返る。
09:50
仮想通貨投資商品、先週700億円超の純流出 XRP・ソラナは好調維持=CoinShares
仮想通貨投資商品から先週700億円超が流出した。CoinSharesは投資家心理がまだ完全に回復していないと分析した。一方で資産別ではXRPとソラナへの流入は好調だった。
12/29 月曜日
14:23
ビットコインは持続的上昇局面に?4年サイクル論争と機関投資家の影響力
Bitwise CIOマット・ホーガン氏が「ビットコインの4年サイクルは終焉し、持続的上昇局面に入った」と主張した。ハーバード大学など大手機関がBTCを保有し、個人投資家から機関への資産移転が進行。ボラティリティ低下の理由と、「階段を上りエレベーターで降りる」値動きパターンを専門家2人が詳しく解説。
13:35
AIや仮想通貨のショッピング活用進む Z世代が牽引か=Visaレポート
決済大手ビザの調査で、ショッピングにAIツールや仮想通貨を利用する消費者が増加していることが判明。特にZ世代が牽引していた。ステーブルコイン送金への関心も高まっている。
09:44
スベルバンク銀、ロシア初の仮想通貨担保ローン発行
ロシア最大の銀行スベルバンクが同国初の仮想通貨担保ローンを発行した。ビットコインマイニング企業に融資し、デジタル資産担保の仕組みを検証している。
12/28 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、MTGOXハッキング容疑者関連のBTC送金やearnXRPローンチなど
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナといった主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
ビットコイン年末相場、値頃感から買い戻し期待も|bitbankアナリスト寄稿
今週のビットコインは方向感に欠け1400万円周辺で推移。26日のオプションカット通過後の動向が注目される。底入れには12月高値9.4万ドルの回復が条件だが、割安感から買い戻されやすいとbitbankアナリストが分析。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|Bybitの日本居住者向けサービス終了発表に高い関心
今週は、大手仮想通貨取引所Bybitの日本居住者向けサービス終了の発表、仮想通貨市場の調整局面、日銀の植田和男総裁の講演に関する記事が関心を集めた。
12/27 土曜日
14:00
ジーキャッシュのシールドプール供給シェアが23%で安定、プライバシー採用が定着
仮想通貨ジーキャッシュのシールドプール供給の市場シェアが2025年初頭の約8%から23%前後で安定している。プライバシー採用指標は依然として安定しておりプライバシー保護取引への持続的な関心を示している。
13:25
金融庁、仮想通貨ETFの導入に向けた税制改正──暗号資産取引の課税見直しと新たな可能性
金融庁が2026年度税制改正の資料を公開した。暗号資産取引を総合課税55%から申告分離課税20%へ変更することに加えて、ETF解禁や繰越控除などについても挙げられた。
11:10
KLab、ビットコインとゴールドを購入開始 「岐路に立つBTC」と分析
東証プライム上場のKLabが25日にビットコインとゴールドの購入を開始。AIを活用した市場分析レポートの不定期発刊も開始した。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧